読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

形とデザインを考える60章

2009年11月27日 19時46分11秒 | ■読む
三井秀樹著、平凡社新書115刊
日用品や建築、絵画、陶器など、身の回りのすべての形とデザインについて、60回に分けて論じています。作者は、下記のURLの通り大学教授で、学問的な視点を織り込みながら論を進めています。
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URL => http://www.tamagawa.ac.jp/arts/teacher/ma_mitsui.html
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本書で初めて知ったのですが、西洋の印象派の人々は、日本の浮世絵などに影響を受けて、それまでの、西洋絵画の原理原則であった、シンメトリーと黄金比率(そして恐らく遠近法)を脱却して新たな表現様式を手に入れたとのことです。それが、アールヌーボーを生み出し、西洋の新たな芸術様式の創出につながったとのことです。
翻って日本では、明治の文明開化によって、日本独自の芸術文化が西洋の芸術文化に大きく立ち後れているとの認識が広まりました。昨今の日本では、やっと冷静に自国の文化の深さや味わいが自覚できるようになりましたが、この100年余の文化の変遷は凄まじい気がします。日本は元来、輸入文化を咀嚼し、独自の様式を生み出してきたので、日本人は、自らのあり方に対するこだわりが少ないのかもしれません。
著者は、日本の文化は風土に育まれた、希有の価値を持っており、今日の世界にあって、普遍性を持ち得るものであると主張しています。かなり共感できる主張ではありますが、一部に著述に贔屓の引き倒しの感がなきにしもあらずです。欧米の文化が全世界を席巻する一方で、日本以外のアジアの文化が、逆に新鮮に感じるようになっているように感じますから。インドや東南アジアに点在する、あくどい程の極彩色の世界。その一方で、絣などに見る静謐な色の世界。アジアも多様です。その中にあって、日本の四季が生み出す繊細な美意識は優れたものであると思いますが、性格が異なる、ということなのではないかと思います。
評価は4です。

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