読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

遠い国からの殺人者

2011年07月27日 20時24分02秒 | ■読む
笹倉明著,文春文庫刊
本書は,重要な人物が,冒頭で断片的に描かれています。貧しさ故に,ストリッパーとして生きて来た中年の踊り子,芸人を志望しながらも,止む無くストリップ劇場で照明係として生きている男。更には,ある事件に巻き込まれた20代の女性など。それらの人達の紹介が済むと,物語は急速に展開します。ヒモを殺した外国人踊り子が,逃亡の途中で酒場のマスターに助けられますが,やがて足がついて警察に捕まってしまう。ここまでで物語のほぼ半分です。
ここから本作はユニークさを発揮します。法廷での弁護側と検察側の攻防と,その背後の人間模様などが,重層的に描かれており,冒頭で紹介された人々がかかわってくるのでした。本書では,一時期話題になったジャパゆきさんが陥る境遇が,日本社会の闇によるものだとしています。その構造が法廷での遣り取りに詳しく書かれており,本作品の説得力を増しています。
作者は様々な仕事や経験を積んでおり,それらの体験や知識により,本作品の骨格が形作られているようです。思索的ではありませんが,人の善意や悲しみを描いて秀逸でした。
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URL => http://ja.wikipedia.org/wiki/笹倉明
     http://homepage1.nifty.com/naokiaward/jugun/jugun101SA.htm
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評価は5です。

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