読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

銀河鉄道の父

2018年01月01日 16時16分10秒 | ■読む
門井慶喜著、小説現代連載
小説現代2017年7月号で完結した宮沢賢治の父政次郎を主人公にした物語です。宮沢賢治は、金持ちのぼんぼんであったという文章を読んだ記憶があり、さぞかし裕福な家に生まれたのだろうと推測していました。また、独自の世界観を形成するには、持って生まれた資質と生育環境が大きな力を持っており、藝術に関しては特に経済的な事情が重要であろうと思います。著名な近代の文学者や芸術家が裕福な家庭に生まれた例を多く見聞きします。
本作品は、その賢治を育てた父親が主人公であることに意表を突かれました。この父親にとって、賢治は異星人のような存在として描かれています。我が子がどのように育つかは、多くの場合、結果論としか言いようがないのではないか。経済的に裕福であれば、勉学の面で有利であろうし、親が高等教育を受けていれば、その方面での進路の知識を十分に持ち、社会的に成功していれば、伝手を頼ることも出来るでしょう。だから同じ資質の子供がいたなら、環境の力が大きいといえますが、資質が異なれば、そうした環境が意味を持たないこともいえます。また、経済的な豊かさが人間的な豊かさを育てるとは言い難い。
賢治は、確かに「道楽息子」であったのだと思いますが、持って生まれた性質と感性が独自の世界観を形成したのだと思います。突然変異のようなその息子を慈しみ見守り耐えて育てた父親に焦点を当てた本作品の視点が実に良かった。下記URLの宮沢賢治の生涯と比較すると、重要であると思えるエピソードが省略されているものもあると感じますが、賢治が歩んだ道筋を照らすものだけに絞り込んだのでしょう。子育ては、男の子と女の子とでは難しさが異なりますが、本作での賢治と父親との関係の変化を辿り説得力を感じました。門井さんの作品を初めて読みましたが、他の作品も読みたいと思います。
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URL => https://ja.wikipedia.org/wiki/宮沢賢治
     https://ja.wikipedia.org/wiki/門井慶喜#.E9.80.A3.E8.BC.89.E4.B8.AD.E3.83.BB.E6.9C.AA.E5.88.8A.E8.A1.8C.E4.BD.9C.E5.93.81
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評価は4です。

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=> カメラまかせ 成り行きまかせ
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