6月30日、神楽坂の『香音里(こおり)』で、大先輩K氏とM氏の「卒寿(90歳)を祝う会」が行われた。90歳と言えば昔はあちらの世界の話であったが、この会は最近では珍しい活力に満ちた集まりであった。しかもその活力は、高い知性と豊かな文化性が生み出すものであった。
お二人は90歳であるから1929(昭和4)年のお生まれ。昭和は64年であったので、つまり、昭和の60年と平成の30年を生きてきたわけだ。昭和をその中身で分けてみると、前半の30年は「戦争と戦後処理—自由と戦後民主主義の確立」の時代で、後半の30年は「高度経済成長からバブルに向かう時代」に分けることができよう。そして迎えた平成の30年は「バブルの崩壊から停滞の持続」した時代と言えよう。
お二人は、この波乱に富んだ「三つの30年」を丸ごと生きてきたのだ。その中でじっくり各時代を見つめ、自分の人格形成に必要なものだけを身に着けてきたのではないか? そこで培われた高い知性と豊かな文化性こそ、いま私たちは引き継いでいかねばならないのではないか、と思った。
会の前半は、お二人に物心両面のご支援を受けているミャゴラトーリ(オペラ普及団体)の歌手二人(テノールとバスバリトン)によるお祝いの歌に始まり、90本づつのローソクは1本づつにまとめられたがケーキに立てられ、全員合唱の中で二人がそれを吹き消すというセレモニーも行われた。肺活量を心配して90本を1本にまとめたが、その必要はなかったようだった。
後半は参加者(全25人)が次々とお祝いの言葉を述べていったのであるが、それらを押しのけるようにお二人からの「出し物」が続いた。(その模様は次回に)
「オオ・ソレ・ミオ」を歌うテノールの所谷直生さん。ピアノは神保道子さん
大澤恒夫さん(バスバリトン)からは「お祝いの替え歌」まで飛び出した
90本を各1本にまとめて
参加者も大満足