「カプレーティとモンテッキ」と言えば、何か聞いたことがあるような気がするがもう一つなじみがない。これを、「キュプレットとモンタギュー」と言い換えるとグッと近くなり、キュプレット家の「ジュリエット」とモンタギュー家の「ロミオ」と言えば、誰もが知っているシェイクスピアの戯曲となる。
もともとはイタリアのヴェローナ地方に伝わる両家の抗争を題材にした説話を、シェイクスピアが甘いメロドラマに書きあげたのが『ロミオとジュリエット』で、演劇、映画、オペラなどの題材になっており、オペラではグノーの作品が有名である。
一方、シチリア出身の作曲家ベッリーニは、『カプレーティとモンテッキ』というオペラにした。主人公も、ロミオはロメオであり、ジュリエットもジュリエッタである。イタリア語の響きがあり、イタリア説話の真実味が伝わってくる。
舞台は13世紀のヴェローナ、そのあらすじは以下の通り。
教皇派のカプレーティ家と皇帝派のモンテッキ家は、代々の抗争に明け暮れていたが、闘いに疲れたロメオは、自らをロメオの使者に扮してカプレーティ家に和平を申し入れに行く。そして両家の和平の証に「ジュリエッタとロメオを結婚させる」案を提案する。実は、ロメオとジュリエッタはひそかに愛し合っていたのだ。カプレーティ家の家長カッペリオはそれをはねつけ、ジュリエッタは自派のテバルドと結婚させると告げる。悲嘆にくれたロメオはジュリエッタの部屋に忍び込み、「もう戦はイヤだ。闘いのない所に二人で逃げよう」と誘うが、ジュリエッタは「家からは出られない」と逡巡する。
両家の闘いと混乱が続く中で、二人の理解者ロレンツォがジュリエッタに、「強い睡眠薬を飲んで死を装い、墓場で目覚めるころにロメオが墓に行く」策を示す、不安を抱きながらジュリエッタはそれに従う。…一方、ことの成り行きからロメオとテバルドは決闘に及ぶが、その場をジュリエッタの葬列が行く。悲しみにくれたロメオは墓に入りジュリエッタの死を見て、自らも毒をあおる。直後、目を覚ましたジュリエッタは、ロメオの死を知って悲しみのあまりその場にたおれる。
駆けつけたジュリエッタの父カッペリオが、「二人とも死んでいる!? だれが殺したのか!」と問うのに対し、人々は、「殺したのはお前だ!」と、戦に明け暮れる罪を断罪する……
実は、娘が主宰するNPO法人「オペラ普及団体ミャゴラトーリ」がこのオペラに取り組んでいる。娘は当初、このオペラに共感を抱いていなかったらしいが、演出の岩田達宗氏の、「ロメオに『戦争は人が死ぬからイヤだ!』と言わせたいんだ」と言う言葉に惹かれやる気になったと言っている。
戦争法案にゆれる昨今の日本に、このオペラは何をもたらすのだろうか? (つづく)
指揮柴田真郁、演出岩田達宗と出演者の顔ぶれ