9月も終わろうとしている。早くも第4コーナーを回ろうとしているが、今年はそんなに走ってきた充足感はない。年が明けるとコロナ騒ぎで、殆どの行事を中止してきた。せっかく立ち上げた「純米酒を楽しむ会」も1回をもって中止に追い込まれた。酒は毎日飲み続けたが、よい酒を飲んだ、という充実感は少ない。
しかし、季節は移ろう。前々回、「かぼす、酒、されど秋刀魚なし」と題して、「冷凍秋刀魚では季節感がない」などと書いたが、どうしてどうして、娘が「秋はやっぱり秋刀魚を食べたい」と買ってきた冷凍秋刀魚は思いのほか美味しかった。ちょうど着いた米鶴酒造(新潟)の「雄町米純米大吟醸」に、カボスをたっぷりかけた秋刀魚はピッたりマッチし美味しかった。冷凍技術、解凍技術が進歩し、冷蔵保存は本物に近い味を保持できるようになったのだろう。
大相撲秋場所も無事終わり、待望の正代が優勝して大関昇進を確実にした。熊本出身力士の優勝は初めてとのことで、最後まで優勝を争ったのは意気のよい翔猿という江戸っ子だった。東京出身力士の活躍も久しぶりだ。
今日は妻の80歳の誕生日、明日はこれまた久しぶりにオペラシティ(初台)の『東天紅』に出かけ、中華料理で誕生を祝う予定だ。これを区切りに第4コーナーを曲がり切り、何とか最後の直線を走り切ろう。
五歳になった孫の遥人の、ピアノ発表会の知らせがあった。いつからピアノを始めたのかと聞くと、この5月からだという。お母さんは作曲家でピアノはプロだが、親子の指導は難しい問題もあるらしく、近くのピアに教室に通っているらしい。
五歳の子が半年足らずのレッスンで曲が弾けるのだろうかと、不安も抱きながら仙川の会場に向かうと、ドッコイ! プログラムを見ると三曲も演じるという。ネクタイを締め盛装した姿が凛々しく見えた。
まず、お母さんと連弾で「海」を、続いてソロで「きらきら星」と「アルプス一万尺」を見事に弾いた。姿勢もよく、タッチも力強く、とても半年のレッスンとは思えなかった。オメデトウ 遥人!
お母さんと「海」を連弾
「ちょっとまちがっちゃった」
「ゴメンナサイ」
2曲を、立派な姿勢でソロ演奏。
ママとおばあちゃんと記念撮影
もらったご褒美をのぞき込み
喜んではしゃぎまわる(やっぱりまだ五歳だ)
コロナと猛暑に悩まされた夏は例年になく長かったが、ようやく季節は巡ってきた。このところ、時折、秋の風情を感じるようになっていたが、時を待たずして、九州からカボスが、新潟から銘酒(銘柄はあえて伏せておく)が着いた。
子供の頃からの癖で、カボスの季節になるとあらゆる食菜にカボスをかける。煮物、焼物、鍋物はもちろん、味噌汁やおしんこ類に至るまで、この新鮮な香りで食べる。その合間に、いま着いた銘酒をなみなみと注いだ平盃を傾ける感触がたまらない。
ただ、昨年に続き今年も秋刀魚がない。水揚げ量激減、値段は庶民の財布の域を超える。冷凍ものならあるらしいが、それは望まない。だって“秋の風情”とは言えないから…。
「私はアスリートである前に一人の黒人である。その一人として、今なすべきことがある」として、大阪なおみ選手は全米オープンテニスをボイコットした。大会側もこれを重く見たのか、日程を一日遅らせて大阪選手の参加を促した。
彼女は参加することとしたが、差別と闘うことはやめなかった。全7試合、白人警官の犠牲となった7人の黒人の名前を記した黒いマスクをつけてコートに登場した。
そして全試合を勝ち続け、見事に優勝した。彼女にとっては、四大大会三つ目の栄冠であった。
彼女は、このような人間としての尊厳、主張すべきことを曲げない信念、そしてそれを実行する勇気を、どのようにして身につけたのだろうか?
優勝を讃えるとともに、彼女の存在そのものを誇りに思う。
今年は年明けとともに新型感染コロナウィルスに襲われた。大型観光クルージング船が中国から持ち込んだものだが、やがて世界的なパンデミックを伴い、国民生活の根本を変えた。
続く猛暑の季節は、毎年更新される最高温度で、これまた人々の生活を脅かしている。「子供の頃、午前中の涼しい間に宿題をやりなさい、とお母さんに言われていたが、その涼しい午前中もなくなった」と娘がつぶやく。
そして台風の季節。しかも毎年、「かつて経験したことのないような雨と風」が容赦なく全土を襲う。今年もまた、最高風速50から60メートル相当、というような台風10号が、九州全土を台風域に巻き込みながらその西岸を吹き抜けた。かつて経験したことのないような被害を各地に残しながら…。
野生の動物を野に放つことからくる感染症、地球温暖化に伴う猛暑や異常台風…。全て人災の匂いに満ちている。