前記したように、ロイヤル・ストリートは瀟洒な建物といい町の芸術家たちの演奏といい、どちらかと言えば昼の雰囲気であるが、バーボン・ストリートは正に夜の雰囲気。
バーボン…その名が示すとおり酒場が軒を連ねている。そして、どの酒場からも演奏する音楽やBGMの曲が流れ出ている。しかも、ほとんどの店は通路に面したドアが開けっ放しになっているので、聞きたい曲が流れていると入り口に足を止めてしばらく曲を聞く…という具合だ。
その中の一つの酒場から、うたごえ喫茶などでよく歌った大好きな歌「私の愛した町」が聞こえてきた。しばらく入り口で聞いていたが、ゆっくり聞きたくなって中に入り椅子にかける。すると酒の注文とりに来るのでハリケーン(ラムをベースにしたカクテル)を頼み、ちびちびやりながら2~3曲聞き、酒代を置いて店を出て、また次の店を覗く……。
しばらく進んで横丁に入ったところに、かの有名な「プリザベーション・ホール」がある。これは腰を落ち着けて聴きたいものだと、満員の順番を待って席を取り、古き時代のジャズを楽しむ。何せこのホールは、歴史を語りつづけるディキシーランドジャズの古老たちが演奏する店、しかも入場料は 2ドル(1988年当時)という安さであるので超満員であったが、たっぷりと古きよき時代のジャズを楽しんだ。
私は、この音楽と酒の渦巻くバーボン・ストリートをいつまでも歩きつづけた。ガンボ・スープをすすり、ポーボーイをほうばり、ハリケーンを呷りながら…。
そうだ、この三つの食べ物と飲み物については是非書いておかねばならない。ニューオルリーンズを語るに欠かせない食品であろうから。それにあわせて、次回はラムについて書くことにする。