昨日のブログで焼酎に触れながら、「ブドウの国はそれを醸造してワインを造り、それを蒸留してブランデーを造る・・・・・・米の国はそれを醸造して清酒を造り、蒸留して焼酎(米焼酎)を造った・・・」と書いた。しかし、ではワインとブランデー、清酒と米焼酎は同質のものかと言えば決してそうではない。材料の点では兄弟と言えるが、酒としては全く別のものである。そこに蒸留酒の特質がある。
醸造酒はその材料の成分がほとんどそのまま酒に含まれていく。しかし、蒸留酒では、蒸発しない成分は取り残されて酒にはならない。そもそも蒸留とは、対象物を熱して蒸発させ、その湯気を冷やして水滴として集める作業だ。だから、醗酵したもろみを蒸留すると、最も蒸発しやすいアルコールはどんどん湯気になっていくが、糖分やアミノ酸など蒸発しない成分は取り残されて除去されていく。蒸留を続けると、水よりアルコールのほうが蒸発しやすいので、最後は純粋アルコールに近いものだけが残る。
しかし、純粋アルコールは無色透明無味無臭だ。それはアルコールではあるが酒ではない。酒にとってアルコール(正確にはエチルアルコール)は重要な要素であるが、それだけでは酒にならならない。酒の酒たるゆえんは、アルコール以外の成分--それぞれの素材が持つ特有の味や風味を生み出す成分にあると言える。
何を取り出し、何を除去していくか・・・これが蒸留酒つくりの苦労の中身で、ここに醸造酒とは全く異なる食文化としての酒を生み出す世界があるのだ。