世の中悪いニュースばかりが流れ、どうなっていくのか不安である。日本人は勤勉で情に厚く、みんなで助け合って生きてきたと思っていたが、近時の格差の拡大、貧困層の増大などが原因か、人を人とも思わないような事件が相次ぎ、今後に希望を失いかけていた。
そこに、意外なニュースが二つ続いた。
昨日のこと。職場の女性が財布をなくしたと青ざめて帰社してきた。身辺から行った先々を探すが見当たらない。最後に財布を使ったのが弁当屋で弁当を買ったとき、と言うので問い合わせるが無い。いずれにせよ何処かに落としたに違いなく、現金の入っている財布が出てくる可能性は皆無と思った。
ところが、その財布は近くの交番に「落し物拾得物」として届けられていた。もちろん中身は全て無事で。わが社の前の路上に落ちていたものを、通りがかりの人が交番(中野坂上)に届けてくれたのだ。
しおれた彼女の姿を見て心を暗くしていた私は、「全く信じられない!」思いでその報告を聞いた。彼女は「交番の巡査さんに『世の中悪い人ばかりではありませんよ』と言われましたと、いつもの明るい笑顔に戻った。私も久しぶりに清々(すがすが)しい気持ちで話を聞いた。
実は先日、山形県の酒蔵ツアーに出かけたが、このときも参加の女性が財布をなくした。身辺はもちろん、バスの中まで探すが無い。新幹線の中か買い物の店か何処かであろうが、最早出てくる可能性はないだろうと全員あきらめていた。
ところが、この財布が新庄駅の拾得物係に届けられていたのだ! 下車駅の売店での買い物のとき落としたらしい。これも中身は全て無事であった。
二つの財布の中身(つまり金額)については、敢えてここに記ないが、店に押し入り人を殺してまで金銭を盗もうとする世の中にあって、いくばくのカネであろうと手にしようとするのは人情かもしれない。しかしそれを拾った人は、きっと「落とした人の心情」に心を向けたのであろう。
山形では、「山形県は酒もいいが人も立派なんだ」などと話し合ったものだが、東京のど真ん中でも「立派な人」が多いのだ。
明日へ希望をつなぐ出来事であった