ミャゴラトーリ制作、岩田達宗演出の「カヴァレリア・ルスティカーナ」公演(5月30日、牛込箪笥区民ホール)を終えて一か月になるが、ようやく出来合上がったビデオを見て、改めてその迫力ある演奏に感動した。岩田氏の斬新な解釈による演出と、それに応えた出演者たちの演技と歌唱力は素晴らしかった。
何よりも、小劇場演劇的オペラという趣旨を生かした、観衆を巻き込んだ舞台づくりは圧巻であった。牛込箪笥ホールはわずか300名の客席しか持たないが、その最前列部分の平坦部はすべて椅子を取り払い、そこを主要舞台とした。ピアノ演奏がされた本舞台と、2段舞台となるが、ほとんどの演技はその平坦部で行われ、しかもその周囲も客席が取り囲み、舞台はギリシャ・ローマの円形劇場を思わせるものがあった。
驚いたのは、その平坦舞台を取り囲む観客の中に合唱隊の一部が配置されており、最初の合唱でそれらの人たちが立ち上がり歌い始めたことにより、一気に観客をオペラの中に引きこんだ。残る合唱隊員は観客席の最後部に配置されていたので、全ての観客は最初の合唱で包み込まれたのである。小劇場という特性を、見事な演劇的手法で生かしたと言えよう。
とらえようによっては、どうしようもない男が人妻に手を出して、挙句の果てに決闘となり殺されたという、単なる色恋沙汰になりかねない話を、関わる3人の女性の「女の物語」に仕上げた岩田演出は、上述の舞台回しとあいまって強い感動を与えた。
先ずは、歌手たちの熱唱場面のいくつかを並べておく。
サントゥッツァ(ソプラノ並河寿美)
トゥリッドゥ(テノール青柳素晴)
アルフィオ(バリトン大沼徹)
ロ-ラ(メゾソプラノ 向野由美子)
ルチア(メゾソプラノ巖淵真理)