ついに消費増税法案が国会に提出された。かねてからの持論である野田首相の執念のようなものを感じるが、それだけに周辺に残す傷跡も大きい。連立相手の国民新党は亀井静香代表の連立離脱宣言で泥沼状態になったし、民主党内も小沢一郎一派の造反でガタガタときしんでいる。前回のブログで「行く春ややぶれかぶれの迎酒」という正岡子規の句を紹介したが、野田首相も執念の延長線上で「やぶれかぶれの法案提出」とい感がなくもない。
「税と社会保障の一体改革」などというものはそもそも国家百年の大計で、本来なら政治家たる者全身全霊を傾けて議論に集中すべきであろうが、それをいずれも政争の具としている。自民党にしても10%消費税をスローガンに掲げながら、いざ相手から法案提出されると政局の具にするありさまだから話にならない。野田自体はかねての主張で、まさに国家百年の計を論じようとしているのかもしれないが、野党も与党内部も水準が低すぎる。その低水準はさておき、一体この法案はどうなるのだろうか?
そもそも、何十年も続くデフレを脱却もできないで、こんな大衆課税をかけていいものかという問題がある。政府もその点は不安らしく、実施に向けて「名目成長率3%、実質2%程度を目指す」としている。しかしバブル崩壊後20数年、そのような成長率を日本は体験していない。人口は既に減少過程に入っているし、時代を支える若者たちはもう一つ元気がない。増税を目指す14年、15年までに3%成長など実現するとは思えない。これまた政府はわかっているようで、この成長率を「条件」とはせず、「目指す」とした。
加えて、社会保障との一体改革とはいうが、増税分5%のうち社会保障の「充実」に充てられるのは1%だけで、のこりの4%は従来の社会保障の「ほころび部分の補てん」に充てられるという。つまりこれまでの財政破綻の償いのための増税が主で、これにより社会保障が大幅に充実するわけではないのだ。だから、10%の後はすぐに引き続く増税を必要とするのだ、ということをちらつかせている。
日本は消費税の導入について歴史的な失敗をやったのではないか? もっと成長力のあった時代に、消費税的な安定財源を確保してそれで医療、年金、教育など国家百年の大計を作り上げておくべきではなかったのか? ヨーロッパ先進国や北欧諸国に比して30年ぐらい遅れたのではないか? いまさら言っても仕方がないが。