セルジュという、フランスのリヨン市に住む、永い友人がいる。永いと言っても30年足らずであるが、外国人としては密度も濃い。
彼は、平均3年ごとに日本を訪れるが、その何日かをわが家に宿泊する。最初は独身で来日した。次に友人と、その次にはボリビア人の奥さんを連れて来た。やがて長女を伴い、次に次女も一緒に、最後は長男を含めた5人で、狭いわが家に宿泊していった。その長女が、昨年大学を卒業して職に就いたというから、かなり永い付き合いと言えよう。
毎年暮れになると、日本を愛する彼の好みを選んで、“日本のカレンダー”をクリスマスプレゼントに送る。年が明けると、彼が愛する“リヨンの街のカレンダー”が、新年のあいさつとして届く。
今年届いたのは、リヨンの生んだ偉大な作家、サン・テグジュペリの『星の王子様』をあしらったカレンダーであった。毎年のものはフランス語版であったが、フランス語の話せない私たちを思ってか、それは、The Little Prince という英語 版(彼との共通語は英語)であった。
2007年、彼の招きで私と妻はリヨンを訪ねた。彼は私たちをディナーに招き、3日間にわたって街の隅々まで案内してくれた。彼はいたるところで「これがフランスで一番美しい街だ」と紹介した。ある校舎の前では、「これが私の出た学校だ。父もここで学んだ」と胸を張った。
そして何よりも、リヨンの街はサン・テグジュペリであふれていた。いたる所にモニュメントがあり、人々はそのそばで寛いでいた。因みに、リヨン空港は「サン・テグジュペリ空港」と呼び。
この作家の言葉に、こんな言葉がある。
「人はお店でいろいろ買える。しかしそこでは買えないものがある。それはフレンドシップ……友情」
セルジュはまた、お店では買えないものを贈ってくれた。