ミャゴラトーリのオペラ公演「ジャンニ・スキッキ」が、好評のうちに終わった。今回はエルデ・オペラ管弦楽団との共催で、初めてのオーケストラ付きの公演。「ジャンニ・スキッキ」という格好の演目で華やかに、楽しく演じることができたと思う。気温35度という今夏最高の暑さの中を、400人を超える方々が観賞してくれた。
何と言っても楽しい演出であった。相続争いというみにくい話を、しかも遺言状を改竄するというけしからん話を、それぞれの人間性を表現しながら底抜けに明るい楽しい話に仕上げた。大澤恒夫演出が冴えわたったのではないか。「とにかく面白かった!」…、ほとんどの人がそう言って帰って行った。
考えてみれば不思議なオペラだ。相続争いで揉みあうごちゃごちゃ音楽が演じられている中に、突如、世にも美しいアリアが飛び出す。リヌッチョの歌う『フィレンツェは花咲く木のように』とか、ラウレッタが歌う『私のお父さん』など、何か唐突過ぎるような美しさである。しかも、サンタ・クローチェ広場やヴェッキオ橋、アルノ川など、フィレンツェの名所を謳い上げる。
相続争いという日常どこにもありそうなドタバタ劇と、それにはまったくそぐわないともいえる夢みるような美しいメロディが、対照的に心に残る。これも作曲者プッチーニの仕掛けらしいが、そこに名作の所以があるのであろう。
うれしいニュースも伝えられている。ミャゴラトーリオペラで歌い続け、今回もリヌッチョ役で美しいテノールを響かせた寺田宗永(通称テラッチ)君が、この度さわかみオペラ芸術振興財団の奨学金を得て、イタリアのボローニャに留学することになった。半年間の本場留学でたくさんたくさん学び、今後の日本オペラ界をリードしていく力を身に着けてきてほしいものである。
リヌッチョ役の寺田宗永君とツィータ役の池田香織さん
寺田君の留学を励ます支援会の方々