米アップル社の最高経営責任者(CEO)ティム・クック氏が、同社から受け取れる株式配当金約60億円の受け取りを辞退したというニュースが、26日付日経新聞夕刊に載っていた。背景に高額報酬への批判を避ける狙いがありそうだと記されてあった。
配当金60億円という額にも驚いたが、クック氏の昨年度の報酬は約300億円というから、これまた浮世離れした金額である。年収300億円というのは、半分税金で持って行かれたとしても、毎日4千万円は使えるような額であるので、別途60億円の配当金がなくてもどうということはないだろう。このような人たちの生活意識や生活内容は、いったいどうなっているのだろうか?
アップル社は、iphoneやipadを世に出し、今をときめく会社だ。スティーブ・ジョブスズは類まれな発想力を持ち、ティム・クック氏はその発想力とイノベーションを支えてきたのであろう。だから彼らにどんな富が集積しても文句は言えないのかもしれない。
しかし、その発想の産物を商品に作り上げ、それを世界中に売りさばくには、下請けも含めた何万、何十万という生産者と販売員が必要だ。ジョブズとクック氏がいかに優秀でも、何億の商品を作り売りさばくことはできない。しかしそうして得た結果の富はアップルという企業に属しその所有者(株主)のものとなる。富は購入者も含めて社会的に生産・販売される中で実現するが、それは一企業(つまりその株主)のものとなる。
そして、それを生産した多くの生産者も含めた平民と、企業を所有する一部富裕者との間に大きな格差が生まれる。クック氏は60億円の配当を辞退したが、それは社会に還元されたわけではなく、アップル社企業内に蓄積されたままだ。
これこそが資本主義の魅力で、ドリームを育て面白いのだ、というのだろうが、それにしてもどこまでも広がる格差を放置していてよいのだろうか、と心配になってくる。(文無しのひがみかもしれないが)