三日間とも全く中身の濃い旅であった。それは、そもそもこの旅に誘ってくれて、私の希望を丹念に取り入れながら日程を組んでくれた友人S君によるところが大きい。S君の奥様は沖縄ご出身で、彼は沖縄に長く住んでいたのでいわば地元と言ってよい。
初日、S君夫妻が案内してくれたのが南部、しかも私が一度訪ねたことのある「平和記念公園」や「ひめゆりの塔」などは立ち寄るだけにして、観光客より地元民が足を運ぶ場所を主に回った。
まず知念村の「テダ御川」の岬を訪ねたが、この海は美しかった。小高い丘を越えて海に下ると中腹に灯台があり、その彼方に美しい海が広がる。心が洗われるような美しさであった。その岩場に沸く「テダ御川」という霊泉は、「知名崎通過の際、海上無事を祈った霊水」(知念村教育委員会立て札)といわれ、今でも村人は折を見て霊泉に祈りをささげているという。ちょうどその村人に出会ったが、その人たちのほか観光客の一人も立ち寄っていなかった。
こんな美しいところを…、と勿体なく思った。
彼でなくとも深呼吸をしたくなるような海だった
続いて訪ねたのが同じく知念村の「斎場御嶽(せーふぁうたき)」。これは、ここから5キロ東の海上に浮かぶ「久高島(くだかじま)」ともども“沖縄の原点”と言える地である。斎場御嶽は、琉球創造の神アマミキヨ降臨の地と言われるので、本島でいえば、天照大神が降臨した高千穂の峯か…? また久高島は、そのアマミキヨが五穀を広めた島と伝えられ、かつ「太陽の昇る位置にある」ことから「東方楽土ニライカナイへの『お通し(遥拝)』所として沖縄各地で崇拝されている」(南城市教育委員会立て札)という。そういえば三日目に「中城城跡(なかぐすくじょうあと)」に行ったが、ここにも「久高島拝所」があった。
その久高島を遥拝するのに最適の場所が斎場御嶽とされ、巨岩と古木に囲まれた霊気ただよう森であった。事実、村民の中には霊気に打たれるのを恐れて近付かない人もいるという。鈍感な私は霊気を感じる感受性を持ち合わせていなかったが。
いずれにせよ、久高島と斎場御嶽は沖縄の原点と思われた。S君は最初に、さりげなく私をそこに導き、沖縄人の心に思いをつなぐよう心がけてくれたのであろう。
斎場御嶽より、はるかに久高島を望む