ウオッカはロシア語で「VODKA:ヴォートウカ」、これは「ヴァダー:水」と同語源というだけあって、一切不純物を感じさせない正に水のようにスッキリした飲み口である。
大麦、小麦、ライ麦など穀物や、じゃがいも、甜菜などを原料とした蒸留酒で、蒸留後に白樺の活性炭で濾過して、すっきりした酒に仕上げる。
酒はいずれにしても、糖分を酵母の力で醗酵させそれを搾った醸造酒(ワイン、ビール、日本清酒など)か、それを蒸留した蒸留酒(ウィスキー、ブランデー、焼酎など)に分けられる。ウオッカは後者で、連続蒸留機で蒸留していくと96度ぐらいの無色無味無臭のアルコールになるが、それを40~60度に加水して何らかの味をつけるとすれば、正に日本の甲類焼酎と同じと思われる。 ところが、日本の甲類焼酎とは全く違う「スッキリした透明感」と「とろりとした感触」がある。
あの「とろりとした甘さ」はなにか?
サンクト・ペテルスブルグの最後の昼食で、私は思い切って値段のはるウオッカを注文すると、店主が奥から、凍結して氷に覆われているようなビンを抱えてきた。「シノックスカヤ」というウオッカであったと記憶するが、やっと溶けて滴るようにグラスに注がれたものを飲むと、正に「とろりとした甘さ」が口中にひろがった。何かぎょうざに似たようなロシア料理が出たが、それとぴったり合って、あのおいしさは忘れられない。
あの「とろり感触」と、もう一つ不思議なことは、どうしても度数40度と思えないことだ。われわれの飲んだものはほとんど40度であったが、ウィスキーにしてもブランデーにしても、もちろん焼酎でも、40度はかなりきつく感じる。しかしウオッカはそれを感じさせない。
ライ麦で造るのはポーランドに多く、フィンランドは大麦が多いらしい。あの「フィンランディア」は大麦だったのか? これまた柔らかい感触が、40度の蒸留酒と思わせない。
一度各国のウオッカ蒸留所を廻りながら教わりたいものである。