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沖縄がまだ米軍の統治下にあった頃、夏休みに大学のクラスメート二人を伴って帰省したことがあった。 新幹線の出来る前、東海道線で鹿児島まで行き一泊して、さらに船で一泊という長旅で、今から考えれば帰省といっても大変な時代であった。
もちろん二人の友人は初めての沖縄旅行であり、パスポート持参の旅は彼らにとって外国旅行そのものであった。 当時は沖縄についての情報はほとんど無く、「基地の島沖縄」程度の予備知識しかなかったようだが、二人が一番心配したのは米軍の存在ではなく、ハブに咬まれないかということであった.。 沖縄の那覇で育った筆者はハブといえばマングースとの決闘で見る見世物の感覚で、それまで野生のハブには遭遇したことが無かったので、友人の沖縄旅行で「ハブが怖い」という心配には少なからず驚いたものである。
このように観光客とその地域に住む者の生活感のギャップは大きいものだが、高速道路で名護方面から那覇に向かう途中、金武町界隈に差し掛かったとき右手に見える大きな「○○に注意!」の看板には以前から違和感を感じていた。 地元の事情を知らない観光客にとって徒に恐怖感を煽るだけで、何の役にも立たないその看板について、だいぶ前に「百害あって無益の看板を撤去すべき」と地元紙に投稿したのだが,無視され掲載されることは無かった。
ところが、誰でも同じことを考えるもので、昨日の沖縄タイムスに名護市の富原さんという方が同じ趣旨の投稿文が掲載されていた。
で、「○○に注意!」の看板は、高速道路にハブは出ないから無用の長物なのだろうという向きは、いささか考えが甘い!
看板を立てた面々はハブより怖い方々というお話です。
とりあえず12月21日付け沖縄タイムスのオピニオン面の富原さんの投稿文を紹介する。
美ら島沖縄に
○○看板物騒 富原守和=63歳 (名護市)金武町のキャンプハンセン基地内で訓練らしい連続射撃音響いて周辺住民から苦情が出ている。射撃訓練といえば自動車道を那覇向けに運転していると、金武から伊計に差し掛かるところに「流弾に注意!米軍実弾訓練中」と書かれた物騒な看板が目に付く。
一体誰がこの無責任、無神経な看板を立てているのだろう。 いくら2割を米軍基地が占める基地の島とはいえひどい看板だ。だいいち追突、速度注意などとは違い、ドライバーとしては、どのようにして流れ弾に注意すればよいのかわからない。 もし流弾事故遭おうものなら「注意喚起してあった」とでもいうのだろうか。 ともあれ毎日道路を利用する者にとって小気味が悪い。 エコ観光を宣伝してより多くの観光客誘致に全県挙げて取り組んでいる“美ら島沖縄”に、このような看板はふさわしくない。道路の管理監督者は流れ弾被害を防ぐ安全管理は当然として、この目障りな看板を早々に撤去してほしい。
いうまでも無くタイトルの○○は、実際の投稿文では「流弾」となっている。
筆者の記憶が正しければ、問題の看板は高速道路の施設内ではく、道路外の山肌に設置されており、道路管理者の管轄外の物であったはず。 したがってこの物騒な看板を設置した者は道路管理者でも、米軍関係者でもない、市民団体の方々が設置したものと聞く。
投稿者の富原さんはその辺は百も承知の上、新聞に掲載されるためのテクニックとして「道路監督者は流れ弾被害を防ぐ安全管理は当然」と事実上不可能ななことを述べているものと推察する。 冒頭の「金武町のキャンプハンセン基地内で訓練らしい連続射撃音響いて周辺住民から苦情が出ている」というくだりもタイムスの担当者の心をくすぐるに十分な富原さんのテクニックだと見た。
いずれにせよ、初めて沖縄観光に来た観光客がくだんの看板を見て、沖縄とは、流れ弾を避けながらドライブする危険な地域だと誤解されかねない。 看板を設置した市民団体にとっては思う壺だろうが、女性人権団体が喧伝するように「沖縄とは米兵の強姦魔が徘徊する地域」に加えて「流弾が飛び交う危険地域」という印象になったら、観光立県を目指す沖縄にとってはとんだ迷惑な話である。
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