狼魔人日記

沖縄在住の沖縄県民の視点で綴る政治、経済、歴史、文化、随想、提言、創作等。 何でも思いついた事を記録する。

前知事と翁長知事の戦い、代執行訴訟

2015-11-18 08:05:24 | 普天間移設

 

よろしかったら人気blogランキングへ クリックお願いします

 

 「狼」の画像検索結果

 

 お願い

 

 人気ブログランキングの投票が分散されるのを防ぐため、次のバナーをクリックお願いします。

 

 

 

よろしかったら人気blogランキングへ クリックお願いします

案の定、けさの沖縄タイムスは合計9面を使って、国の代執行訴訟に対して大発狂!

各面の見出しを一部抜粋・紹介する。

■一面トップ

政府 知事を提訴

「辺野古取り消し違法」

撤回の代執行求め

■二面トップ

負担を強要 構図なお

民意無視 地方分権に逆行

■三面トップ

国と県 法廷対決再び

知事、変わらぬ強権批判

■社会面トップ

知事 揺るがぬ決意

新基地「差別の表れ」

代執行訴訟へ鋭い舌鋒

 

一面トップに原告の石井国交相、被告の翁長知事の顔写真を掲載しているが、今回の裁判は事実上は埋め立て承認をした仲井真前知事と埋め立て承認を取り消した翁長知事の「どちらが違法か、適法か」の戦いである。

 

「辺野古取り消し違法」政府、知事を提訴 12月第1回弁論2015年11月18日 05:01

 

 
(右)代執行訴訟を受け会見する翁長知事=17日午後5時34分、沖縄県庁  (左)記者会見する石井国交相=17日午前、国交省

(右)代執行訴訟を受け会見する翁長知事=17日午後5時34分、沖縄県庁 (左)記者会見する石井国交相=17日午前、国交省

 
 

 

 代執行訴訟 訴状骨子

 

 
名護市辺野古の新基地建設で、翁長雄志知事の埋め立て承認取り消しは違法として、石井啓一国土交通相は17日午前、代執行に向けた訴訟を福岡高裁那覇支部に起こした。法定受託事務における代執行訴訟は2000年の改正地方自治法施行後、全国で初めて。埋め立てによる公益性と環境への影響などが争点になる。翁長知事は記者会見で、埋め立て承認や、その取り消しの権限は知事にあることから「違法と決めつけられるいわれはない」と反論した。

 

 米軍基地をめぐる国と県の対立は前例のない法廷闘争に突入した。

 

 国側は、翁長知事の承認取り消し処分を取り消すよう求めている。県側は戦後70年間の基地の過重負担、県外との負担の格差が新基地建設でさらに固定化すると訴え、埋め立ての必要性、合理性などを問う構えだ。

 

 裁判所は12月2日に第1回口頭弁論を開くことを決め、双方に通知した。

 

 県側は県議会12月定例会と日程が重なり、翁長知事が意見陳述できない可能性があるため、期日変更を求めたが、認められなかった。県は県議会の日程を調整する方針だ。

 

 訴状では、辺野古への移設で普天間飛行場の危険性除去や日米の信頼関係の維持につながるなど公益性が高い一方、辺野古の住民生活や自然環境への影響に十分配慮しており、利益が不利益を上回ると強調。受益的処分では法律的な瑕疵(かし)の有無にかかわらず、取り消しできないという最高裁判決を取り上げるなど承認取り消しを「違法」としている

 

 石井国交相は閣議後会見で「承認取り消し処分は違法で、著しく公益を害する」と述べ、代執行訴訟が政府の一致した考えであると説明した。

 

 高裁が国交相の訴えを認めれば、期日を定め、承認取り消し処分を取り消すよう知事に命令する。その時点で知事の取り消し処分は効力を完全に失う。知事が従わなければ、国交相が代執行することになる。高裁が知事の主張を認めた場合、知事の取り消し処分の効力は戻る。いずれも7日以内に最高裁へ上告できる。

 

 那覇地方法務局の担当者2人は17日午前8時半ごろ、福岡高裁那覇支部を訪れ、訴状を提出した。

 

 

 

■知事「正当性を証言」 口頭弁論出廷の構え

 

 翁長雄志知事は17日夕、国の代執行提訴を受けて県庁で記者会見し「政府の態度は完全なダブルスタンダード」と厳しく批判した。12月2日の口頭弁論に出廷し、自ら証言する意思を重ねて示し「われわれの考えが正当であることを主張・立証したい」と法廷闘争に意欲を示した。

 

 知事は、政府が佐賀県での米軍オスプレイ訓練をあっさり断念したことなどを念頭に「46都道府県には何らしわ寄せをしない形で、沖縄で物事を処理しようとしている」と述べ、国の対応が二重基準だと強調した。

             ☆

2013年12月27日、仲井真前知事は10ヶ月に及ぶ厳密な審査の結果、辺野古埋め立てに関わる防衛局の申請を承認した。

一方、選挙前から「辺野古反対」を主張していた翁長知事は10月13日、仲井真前知事の承認を「法的瑕疵がある」という理由で取り消し処分にした。

防衛局は、国交省に対し知事の取り消しの執行停止と同時に行政不服審査をを申し立て、執行停止が許可された。(行政不服審査は国交省で目下審査中で、結論は来年に持ち越す見込み)

 

>訴状では、辺野古への移設で普天間飛行場の危険性除去や日米の信頼関係の維持につながるなど公益性が高い一方、辺野古の住民生活や自然環境への影響に十分配慮しており、利益が不利益を上回ると強調。受益的処分では法律的な瑕疵(かし)の有無にかかわらず、取り消しできないという最高裁判決を取り上げるなど承認取り消しを「違法」としている

翁長知事を筆頭に、辺野古反対派のアキレス腱は安全保障に関わる「中国の脅威」だと書いた。

これは、先日のBSフジのプライムニュースに出演した前泊沖国大教授が、司会者に「中国の脅威」を問われ、のらりくらりと問題のすり替えを試み、さらに「中国の脅威はどう思いますか」と詰め寄られ、「この問題(中国の脅威)は側において」と逃げようとしたが、司会に「そこに置かないで!」と突っ込まれ、しぶしぶ「脅威はある」と答えさせられた。 

無理やり「中国の脅威」を認めさせられた感の前泊氏、それでもなお未練がましく、「脅威はあっても外交努力や話し合い」などと能天気な発言をした事実がすべてを象徴している。

三面の囲み記事に「識者評論」として成蹊大法科大学員教授の武田真一郎氏が「国勝訴は困難 二つの理由」と題して、翁長知事の応援歌を歌っているが、「ジュゴンに影響」「サンゴに影響」「自己決定権」など怪しげな文言の羅列で、「中国の脅威」についてはひと言も触れていない。

まさに噴飯物の翁長応援歌で、まともに反論す気もしない。

そして辺野古反対派のもう一つのアキレス腱が「普天間の固定化」である。(上記の武田教授、これについても完全スルーである)

「世界一危険な米軍基地」と喧伝され、住宅地密集地に隣接する普天間基地の危険性は、県民なら誰もが認める事実である。

それに比べ、辺野古移設は、近隣に住宅もまばらで、航空機の離発着は海上を飛行するというV字型飛行場などを利用する「キャンプ・シュワブ内への移設」であり、その危険性は普天間飛行場とは比較にならないほど小さい。

辺野古移設を反対すれば結果的に普天間の危険性がそのまま固定化することは火を見るより明らかである。

普天間の固定化について、危険性を訴える宜野湾住民が翁長知事を提訴したことが記憶に新しい。

 ⇒「埋め立て承認取り消しは違法」 宜野湾市民が翁長知事提訴 「中国の脅威に触れず」 - 産経ニュース

 

この裁判の争点は、大きく分けて二つ有る。

一つは、第三者委員会の「法的瑕疵あり」を根拠に、翁長知事の下した「取り消し」の違法性を証明すること。 これを逆に言えば仲井真前知事が下した埋め立て承認の「覊束裁量」の適法性の証明である。

そして、もう一つの争点が「中国の脅威」にからむ、日米安保の信頼性の問題と普天間の固定化である。

そして今回、国が訴状で明らかにした新たな戦略は、こうだ。

裁判で「法的瑕疵」を争う以前に、上記二つ目の争点を「公益性」と捉え、県の取り消しによって生じる不利益について、普天間飛行場の危険性除去が遅れるほか、日米の信頼性が崩壊しかねず、外交、防衛、政治、経済上の不利益は計り知れないと強調している。

さらに、これまで約473億円や本年度予算に計上した約1736億が無駄になり、国民の負担になると主張している。

国は、1968年の最高裁判決を根拠に、知事の埋め立て取り消しのような「行政処分」は、「法的瑕疵」を争う前に「公益性」の損失が大きいと認められたら、法的瑕疵があったとしても取り消しは出来ないとしている。

 

【まとめ読み】「辺野古」代執行訴訟 双方の主張

2015年11月17日 11:17
 
承認取り消しをめぐる県と国の主張承認取り消しをめぐる県と国の主張
 
辺野古新基地建設で今後予想される日程辺野古新基地建設で今後予想される日程
 
 
辺野古新基地建設で想定される流れ

辺野古新基地建設で想定される流れ

 

 国と沖縄県の「代執行訴訟」で争われるのは、翁長雄志知事の埋め立て承認取り消しが公有水面埋立法に照らして適法か、どうかという点だ。翁長知事は第三者委員会の検証を経て、県で精査した結果、仲井真弘多前知事の承認に「法律的な瑕疵(かし)がある」と主張。国は承認判断に不合理な点や裁量権の逸脱、乱用は認められず適法な承認を取り消したのは「違法」という立場だ。

 県は10月13日に沖縄防衛局へ送った取消決定通知書で理由を明記している。

 埋め立ての必要性について、米軍普天間飛行場を名護市辺野古に移設しなければならない実質的な根拠が乏しく、海兵隊の抑止力や地理的優位性、一体運用の具体的、実証的な説明がないなど「必要性」を認められないと指摘する。

 自然や生活環境への影響では、環境影響評価手続きで県から示された問題点に対応できていないことや、定量評価をせず、明らかに誤った記載があると明示。新基地建設による環境への影響の「的確な把握」「適正かつ十分な措置」のいずれも満たしておらず、不十分と結論付けた。

 また辺野古への移設は過重な基地負担のほか、県外との負担の格差を沖縄に固定することにつながり、その不利益は国土利用の合理性の重要な要素であるにもかかわらず、適切に扱われていないと強調している。

 一方、防衛局は取り消し無効の審査請求などで反論してきた。訴訟の原告は国交相になるが、同様の主張になるとみられる。

 普天間飛行場を市街地から移設することに、国は「危険性や騒音被害を除去する利益は極めて大きい」とする。また、日米合意の実現で、外交・防衛上の利益もあり、効率的なまちづくりや経済効果の創出を含め、埋め立ての必要性、公益性は高いと考える。

 また、環境への影響では前知事は審査基準のもとで、いずれにも適合していると判断し、妥当性を認めたと説明。工事中の環境保全対策で県と協議する留意事項を設けるなど、法の要件に該当するという前知事の判断に不合理な点は認められないとしている。

 過重負担の固定化には、嘉手納基地より南の米軍施設・区域の返還について手順や時期を示したことなど、沖縄の負担軽減を進める政府の姿勢を紹介。埋め立てが土地利用上、不適切、不合理と認める事情は存在せず、「埋め立てにより米軍基地の固定化を招く契機となり、基地負担についての格差や過重負担の固定化につながる」ことにはならないとの見解を示した。

 

■初の裁判 論争手探り

 名護市辺野古の埋め立て承認取り消しをめぐる国と県の対立は法廷で争われることが確実となった。埋め立て承認のような法定受託事務における代執行訴訟は、2000年の改正地方自治法施行後初めてで、先の読めない中、論争が繰り広げられる。

 取り消しの効力を停止した石井啓一国交相の決定を不服として、県が申し出た国地方係争処理委員会も13日に審査を始めた。1月31日までに結果を報告する見通しで、結果に納得しなければ県は高裁に提訴する。県は、いずれも全国的に例のない二つの裁判を同時に争う展開もありそうだ。

 翁長雄志知事は辺野古沿岸の埋め立て承認を10月13日に「法的に瑕疵(かし)がある」として取り消した。ここから政府の対抗策が始まる。新基地建設の根拠を失った沖縄防衛局は翌14日、行政不服審査法(行審法)に基づき、公有水面埋立法を所管する石井啓一国交相に取り消し無効の審査を請求し、その裁決が出るまでの効力停止を申し立てた。

 石井国交相は同27日、効力停止を決定。防衛局は辺野古沿岸の本格的埋め立て工事に着手した。同時に安倍内閣は知事の代わりに取り消し処分を取り消すため地方自治法(自治法)に基づく代執行手続きに入ることを口頭了解した。最初の手続きとして石井国交相は28日、翁長知事に是正勧告の文書を送った。

 翁長知事は11月2日、係争委に審査を申し出た。

 代執行の是正勧告に対し、翁長知事は期限の6日までに応じなかった。国交相は11月9日に次の段階の是正指示を送る。翁長知事はこれにも期限の13日までに応じなかったため、国交相は取り消し処分を取り消すよう求め、高裁に提訴できるようになった。

 高裁が国交相の訴えを認めた場合、期限を付けて、知事に命令する。知事が応じなければ、国交相が代執行できる。高裁判決で知事の取り消しは完全に効力を失う。知事は1週間以内に最高裁へ上告できる。

                  ☆

2015年11月17日 11:44 

名護市辺野古の埋め立て承認取り消しをめぐり、代執行訴訟に向けて国が動き始める中、提訴先とみられている福岡高裁那覇支部の支部長が10月30日付で代わる人事があった。全国的に注目される訴訟を前に、沖縄県側は「国が介入した対抗策の一環か」と警戒している。
» 基地と原発のニュースをフクナワでも

 就任した多見谷寿郎氏は名古屋地裁や千葉地裁勤務を経て、2013年に成田空港用地内の耕作者に、土地の明け渡しと建物撤去などを命じた成田空港訴訟で裁判長を務めた。最高裁は、他県の裁判所で依願退官者が出たことに対応する人事で、「退職者が出た場合は必要に応じて適時発令する」と説明。この時期の人事発令が異例でないことを示唆した。

 県の幹部は「玉突き人事とはいえ、タイミングが“絶妙”すぎて意図的なものを感じる」と顔をしかめる。「国寄りの強権派から選抜したのではないか」との臆測も飛び交う。

           ☆

この記事については、敗訴した時「国が司法に介入した」との口実と書いた。

負け犬の遠吠えの口実は、一つだけでは弱いと感じたのか、本日のコラムでも口実作りに涙ぐましい努力をしている。

 

 (略)

名護市辺野古の新基地建設をめぐる翁長雄志知事の承認取り消しに対して、国が代執行訴訟に向けて動く中、提訴先の福岡高裁那覇支部の支部長が10月30日付で代わる人事があった(17日付総合面)

▼県は、「国が介入した対抗策の一環か」と警戒する。最高裁は「退職者が出た場合は必要に応じて適時発令する」と説明するが、タイミング的に「意図的なものを感じる」という声もある

▼国土交通相は17日、県の埋め立て承認取り消し処分の取り消しを求めて提訴。法廷闘争に入った。翁長知事は会見で「訴訟の場で考えが正当であることを主張する」と淡々と語った。裁判所には沖縄に基地が集中する現実に正面から向き合ってほしい。(赤嶺由紀子)

                   ☆

3月末と10月末は裁判の進行に関係なく裁判官の人事異動はあるもですよ、赤嶺さん。

「パンドラ訴訟」の時は、一審の判決直前に裁判長が人事異動で転出し、新しい裁判長で敗訴した例もあるくらいだ。(控訴して二審では逆転勝訴したが)

【おまけ】

無駄な抵抗!(涙)

2015-11-16
 16日はキャンプ・シュワーブのゲート前で行われている早朝座り込み行動に参加してから海上抗議行動に参加した。  基地内に入ろうとする作業車を阻止しようとする市民と、強制排除する沖縄県警と警視庁の機動隊。海では海底ボーリング調査を阻止しようとする市民と、拘束する海 . . . 本文を読む
 
 
よろしかったら人気blogランキングへ クリックお願いします
 
コメント (17)

代理執行訴訟ー国訴状の要旨、法的な争点

2015-11-18 05:03:05 | 資料保管庫

 

よろしかったら人気blogランキングへ クリックお願いします

 

 「狼」の画像検索結果

 

 お願い

 

 人気ブログランキングの投票が分散されるのを防ぐため、次のバナーをクリックお願いします。

 

 

よろしかったら人気blogランキングへ クリックお願いします

 

辺野古代執行訴訟 国訴状要旨


2015年11月18日
 ■請求の趣旨

 

 被告(翁長雄志知事)が国に対し2015年10月13日付でした、13年12月27日付公有水面埋め立て承認の取り消し処分を、この判決の正本の送達を受けた日の翌日から起算して3日以内に取り消しをせよ。

 ■法的な争点等について

 1996年4月12日に橋本龍太郎首相とモンデール駐日米国大使との日米会談において、普天間飛行場の全面返還が合意され、99年に沖縄県知事が名護市辺野古沿岸域を移設候補地と表明し、名護市長から受け入れの表明がされたことから、閣議により普天間飛行場代替施設を辺野古沿岸域に建設することに決定、2002年に代替施設を埋め立て工法により建設することを決めた。長年にわたって具体的な移設の内容等について議論がされ、これら協議の結果に基づき、13年12月27日に仲井真前県知事が公有水面埋め立ての承認をした。15年10月13日に被告が承認の取り消しをしたことから、本件取り消し処分は(1)最高裁判所の判例が明示する、授益的処分を行政庁が自ら適法に取り消すための要件をおよそ満たしていない違法なもの(2)承認に法的瑕疵(かし)はない-ことから取り消すことはできないとして、地方自治法245条の8第3項に基づき、公有水面埋立法による法定受託事務を行う被告に対し、取り消し処分の取り消しを命ずる裁判を求める。

 最高裁1968年判決では、行政庁が自らその違法または不当を認めて取り消すためには「処分の取り消しによって生じる不利益と、取り消しをしないことによる不利益とを比較し、しかも処分を放置することが公共の福祉の要請に照らし著しく不当だと認められるときに限り取り消すことができる」と極めて限定的な要件を満たす場合に処分の取り消しができるとしている。

 本件の「処分の取り消しによって生ずる不利益」は、辺野古沿岸域を埋め立てる最大の目的の、普天間飛行場の周辺住民へ危険除去ができなくなることであり、96年に日米間で合意して以来約19年間にわたって日米両国が積み上げてきた努力がわが国側の一方的な行為で無に帰し、日米間の外交、防衛、政治、経済など計り知れない不利益だ。さらに、普天間飛行場跡地利用による宜野湾市、県の経済発展の計画は白紙に戻され、県全体の負担軽減も実現されないことになる膨大な不利益が生じる。

 国は辺野古沿岸域の埋め立て工事等のため約900億円の契約を締結し既に約473億円を支払っており、承認が取り消されれば全くの無駄金となり、国民がその負担を背負うことになる。

 他方で「取り消さない不利益」として知事が指摘する、辺野古周辺住民の騒音被害や埋立対象地域の自然環境への影響などは、国が十分配慮しており、不利益は存在しても極めて小さい。また知事が指摘する、沖縄の過重な基地負担が固定化される不利益は、普天間飛行場を辺野古沿岸域に移設する方が沖縄の負担を軽減することになり取り消しをしないことによる不利益といえない。

 そうすると「処分の取り消しによる不利益」と「取り消さないままの不利益」を比較すれば、前者が後者をはるかに上回ることは明らかで、被告が承認を取り消すことができるための最高裁判決の要件を満たすものではなく、本件取消処分は違法であるというほかない。

 したがって取り消しは違法であり速やかに認容判決がされるべきだ。

 念のため、被告が指摘する承認の法的瑕疵を見る。取り消しの理由として公有水面埋立法4条1項1号の「国土利用上適正且合理的ナルコト」から、普天間飛行場の代替施設を沖縄県内あるいは辺野古沿岸域に建設することが適正かつ合理的だという根拠が乏しいと指摘するが、そもそも法定受託事務として、公有水面埋立法に基づいて一定範囲の権限を与えられたにすぎない県知事が、わが国における米軍施設および区域の配置場所などといった国防や外交に関する国政にとって極めて重大な事項の適否を審査したり、判断する権限がないことは明らかだ。法を所管する国土交通省の所属事務に国の国防や外交に係る事項の適否の判断は含まれず、法に基づく法定受託事務の範囲で公有水面埋め立ての権限を付与されているにとどまる県知事に、米軍施設および区域を辺野古沿岸域とすることの国防上の適否について審査判断する権限が与えられていない。また被告は同条項2号の「其ノ埋立ガ環境保全及災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト」という要件について、配慮が不十分であったなどと指摘するが、辺野古沿岸域の埋め立ておよび代替施設の建設については、環境影響評価法と県環境影響評価条例に基づいて丁寧な環境影響評価が実施されている。承認は前知事がこれらの結果を精査した上で判断し、県知事に与えられた裁量権の逸脱や濫用(らんよう)は存在しない。

 以上によって違法であることは明らかだ。裁判所は本件の訴訟を速やかに終結して取り消し処分の取り消しを命じる判決を強く希望する。

 ■最高裁判決の位置づけ

 行政処分の安定性・信頼性の確保は、行政事件訴訟法がそれを指導理念としているものである。また授益的処分の取り消しは、授益的処分に法律的な瑕疵があったからといって取り消すことはできず、極めて限定的な場合にのみできると考えられている。

 最高裁1968年判決は、授益的処分をした行政庁が、その違法または不当を認めて取り消すためには、「取り消しによって生ずる不利益と、取り消さないままの不利益を比較し、公共の福祉に照らして不当だと認められるときに限り、取り消すことができる」として、違法な行政処分の取り消しを極めて例外的な場合と限定し、この高いハードルを超えない限り瑕疵があったとしても取り消しはできないとしている。

 本件が授益的処分なのは明白で、判決が示すハードルを超えない限り適法に取り消すことはできない。

 ■請求の原因

 要旨

 前知事は2013年12月27日、国に対し法定受託事務として、名護市辺野古沿岸域に普天間飛行場の代替施設等を設置するため公有水面の埋め立て工事に関する埋め立て承認をした。

 国は、日米安全保障条約4条を根拠に設置された日米安全保障協議委員会での合意により、米軍海兵隊が駐留する普天間飛行場の移設・返還に伴い、代替施設等を名護市辺野古沿岸域に設置する埋め立て事業実施のため、承認を得た。主体は国で、埋め立て事業実施を担当する沖縄防衛局長が手続きを進めた。

 代替施設等の建設地の名護市辺野古崎周辺地区およびこれに隣接する水域だが、周辺地区は日米安全保障条約および日米地位協定に基づき、米軍の施設および区域(キャンプ・シュワブ)として提供されている。

 被告は承認には法的瑕疵があったとして国に対し、承認の取り消しをした。

 しかし、取り消し権を制限する判例法理に反し、また承認に法的瑕疵がないにもかかわらず取り消した点で違法だ。そこで法を所管する原告(国土交通相)は地方自治法245条の8第3項に基づき、取り消しの取り消しを命じる旨の裁判を求める。

 ■最高裁判決の本件へのあてはめ

 本件承認処分が授益的処分であることは明らかであり行政処分の取り消しが許される極めて例外的な場合に当たるかが、問題となる。本件承認処分の取り消しによりわが国の内外に生ずる不利益は極めて大きく、取り消しをしないことで本件承認処分に基づき既に生じた効果をそのままを維持する不利益は小さく、本件承認処分を「放置することが公共の福祉の要請に照らし著しく不当であると認められる」といえないことも明らかであり上記例外的な場合に当たると解する余地はない。

 ア 本件承認処分の取り消しによって生じる不利益が極めて大きいこと。

 (ア)国内的視点からの不利益。

 a 普天間飛行場の早期移設が実現できないことによる不利益。

 (a)普天間飛行場の周辺住民等の生命・身体に対する危険除去ができなくなること。

 わが国と米国は日米安全保障条約4条を根拠として設置された日米安全保障協議委員会等において宜野湾市の市街地の中心部に位置し、周辺に多数の学校や住宅、医療施設などが密集している普天間飛行場周辺の航空機騒音や墜落事故等の問題に対処するためにわが国が名護市辺野古沿岸域を埋め立てて普天間飛行場の代替施設を建設し、米国に提供することにより米国が普天間飛行場を返還する旨を合意し、これを実現すべく本件埋立事業を遂行する。

 宜野湾市内には2015年度、幼稚園8施設、小学校9校、中学校5校、高等学校3校、大学1校の学校施設や、約4万1600世帯の住宅、約70施設超の医療施設や公共施設等が密集している。沖縄県が本土復帰を果たしてから15年3月18日までの間に105回(年平均2・4回)の航空機による事故が発生しており世界一危険な飛行場といわれることもある。普天間飛行場における航空機による訓練では飛行経路が市街地上空で、普天間飛行場の周辺住民や上記各施設の利用者等は航空機事故の危険性や騒音等の被害にさらされる事態が常態化している。万一、航空機による事故が発生すれば周辺住民等の生命・身体に甚大な被害を及ぼす危険性が高くその危険は具体的なものとして現に存在しているといえる。

 沖縄防衛局は騒音問題に周辺地域の住宅防音工事の助成事業を実施し、これまで約427億円の補助金を支出し、1万世帯以上の防音工事が実施されている。依然として航空機騒音の被害や事故に対する危険感不安感などの精神的被害に対する苦情が14年度に300件以上、15年度は9月までに160件以上が宜野湾市に寄せられ騒音被害が解消されているとはいえない。

 以上の通り航空機事故や騒音被害といった周辺住民の生命身体に対する重大な危険は現実化し現在も継続し一刻も早く除去されなければならない。普天間飛行場が代替施設によってわが国に返還されることが日米安全保障協議委員会において合意されており、具体的な危険性を早期に確実に除去することができる。承認は代替施設を建設するためになされ国は承認によって埋め立てることができる法的地位を得て現実に埋め立て工事に着手できることになった。承認処分が取り消されれば危険性を除去する見通しが全くたたなくなる。仮に辺野古以外の場所への移設を実現しようとしても国が独断ではなく米国や関係自治体との調整を経る過程を考えれば長い年月と莫大(ばくだい)な労力を費やすことになることが明らかである。承認処分の取り消しで危険の除去が大幅に遅滞すればその不利益は計り知れない。

 長年積み重ねられた交渉で普天間飛行場の危険性除去は社会からも大きな信頼が寄せられており、取り消しは社会の信頼を一方的に無視するものであり、行政処分一般に対する信頼を失わせることになりかねない。

 (b)普天間飛行場返還後の跡地利用による宜野湾市の経済的利益が得られなくなること。

 宜野湾市の市域面積の約25%を占める普天間飛行場は都市機能・交通体系・土地利用など効率的なまちづくりや経済活動にも影響を及ぼしている。沖縄県、宜野湾市は14年に普天間飛行場跡地利用計画策定調査業務報告書を作成・公表し、県は15年にも普天間飛行場跡地(仮称)普天間公園等検討調査業務に係る企画提案書を募集するなどして、現在も普天間飛行場の跡地利用計画の策定作業を継続している。

 沖縄県の推計によれば現在普天間飛行場が存在することによる経済効果は地代収入、軍雇用者所得、米軍等への財・サービスへの提供額、基地周辺整備費等及び基地交付金などによる年間約120億円にすぎないのに対し、返還され構想に基づく利用がされた場合の直接経済効果は卸・小売業、飲食業、サービス業その他産業の売上高および不動産賃貸額などによって年間約3866億円に上り、返還前に比べ約32倍もの直接経済効果を挙げると予想されている。10年間で3兆7千億円以上の直接経済効果をもたらす可能性を秘めている上、直接経済効果の発生額を源泉として経済的取引の連鎖により生産誘発額が返還前の年間130億円から3604億円(28倍)、所得誘発額が年間35億円から928億円(26倍)、誘発雇用人数が年間1074人から3万4093人(32倍)、税収効果が年間14億円から430億円(32倍)に上ると予想されている。

 埋め立て承認は返還の実現に向けた大きな一歩であり、承認が取り消されれば検討してきた跡地利用による莫大な経済効果が実現する見通しが全く不透明になる。跡地利用に対する宜野湾市や周辺住民等の信頼が大きく裏切られることになる上、直接経済効果を有する計画が実現できなくなる不利益は甚大である。

 (C)沖縄県の負担軽減が進められなくなること。

 埋め立て事業によって名護市辺野古沿岸域に建設される代替施設は必要となる埋め立て面積(約1・6平方キロ)は普天間飛行場の面積(約4・8平方キロ)の3分のl以下となり滑走路も約1800メートルとなることから普天間の約2700メートルと比べて大幅に短縮される。

 また、普天間飛行場は、沖縄県に駐留する米軍海兵隊の航空能力のうち(1)オスプレイなどの運用機能(2)空中給油機の運用機能(3)緊急時に外部から多数の航空機を受け入れる機能の三つを担ってきたが、代替施設に移転する機能は(1)オスプレイなどの運用機能のみであり(2)空中給油機の運用機能は14年8月空中給油機KC130の15機全機の山口県岩国飛行場への移駐を完了し(3)緊急時に外部から多数の航空機を受け入れる機能も今後の本土への移転が日米間で合意されている。

 普天間飛行場の機能が代替施設に移転すれば規模は現在の半分以下になり沖縄県全体からみた負担の軽減も図られることとなる。早期に確実に沖縄県の負担を軽減することができる。

 それにもかかわらず承認処分が取り消され埋め立て事業が頓挫すれば国は負担軽減を進められなくなり、社会の信頼も裏切られるのであるからその不利益は極めて大きい。

 (d)まとめ

 以上のとおり承認の取り消しにより普天間飛行場の早期移転が実現できないことで周辺住民の生命・身体の危険や騒音被害の除去、宜野湾市の経済発展、沖縄県の負担軽減が図れなくなる不利益は甚大である。

 b 本件埋め立て事業のために積み上げてきた膨大な経費等が無駄になり、個別の契約関係者に与える不利益が大きいこと。

 国は埋め立て事業として海底ボーリング調査等を実施し、これまで環境影響評価手続きや測量等調査、既存隊舎などの移設に係る設計および普天間飛行場の代替施設の護岸・埋立等に係る設計、既存隊舎等の移設工事・解体工事、飛行場配置の基本検討について民間事業者との間で請負契約を締結し、2014年度末までに当初契約金額約900億円の契約を締結し、うち約473億円を既に支払っている。

 また、沖縄防衛局長と名護漁業協同組合代表理事組合長との間で漁業権の消滅漁業の操業制限に係る損失補償契約を締結しており、同局長から同組合長に対し相当額の補償金が支払われている。

 承認の取り消しが認められれば事業が頓挫することになり、積み重ねられてきた多数の事実関係および法律関係が崩れ経費や諸資材、諸機材が無駄になるほか、契約解除に伴う相当金額の損害賠償金が必須となり、15年度に計上した約1736億円の予算のうち契約済額の一部(金額未確定)も無駄になるおそれがある。事業の関係者は多数に上り、承認から約2年余りが経過し事業が完遂される信頼や期待が積み重ねられており、事業の頓挫による不利益は多数の関係者にも及び、信頼や期待が裏切られること甚だしく被る不利益は極めて大きい。

 (イ)国際的視点からの不利益。

 日米安全保障条約に基づきわが国に所在する米軍施設および区域の配置場所はわが国の国防政策の要であり、国家の存立や国民の生命・身体の安全に深く関わる国としての極めて重大な政策判断で、日米間の長年にわたる慎重な外交交渉などを経て1996年に返還が合意され、2002年には代替施設をキャンプ・シュワブ水域内において埋め立て工法で行う基本計画に基づいて迅速に移設を進めることが日米間で確認された。公有水面埋め立てにつき法定受託事務の範囲内で権限を付与されたにすぎない沖縄県知事がわが国における米軍施設および区域をどこに、どのような装備の内容で配置するかといった国の重要な国防政策上の判断について、その適否を審査判断できる立場にあるとは到底考えられない。県知事には埋め立て出願の審査に際し、そもそも米軍施設および区域の配置場所等に係る国防上の適否について審査判断する立場にないことは明らかである一方、仮に取り消しが有効とされるならば、単に国防上の不利益にとどまらず、わが国と米国との間の外交上、防衛上、政治上、経済上の計測不能の不利益がわが国にもたらされ、米国との信頼関係が崩壊しかねないことはもとより、わが国の国際社会における信用が失墜することで受けるダメージはわが国の存立や安全保障を脅かしかねないほど大きい。

 普天間飛行場の代替施設を辺野古沿岸域に設置することは日米両政府間で閣僚も出席した日米安全保障協議委員会等を通じ繰り返し合意され、米国が国家間の約束事として間違いなく実現するであろうと信頼することは当然である。

 直近でも15年4月の日米首脳会談で安倍晋三首相により「辺野古移設が唯一の解決策との政府の立場は揺るぎない」旨の発言がなされている。それにもかかわらず承認処分が取り消されれば国は事業を実施できなくなり、日米間で合意された代替施設の提供および普天間飛行場の返還が大幅に遅延することになる国家間の約束事を反故(ほご)にする事態になれば、これまでの交渉、協議、調整を通じ培われてきた米国のわが国に対する信頼は一挙に失墜しかねない。

 一連の合意の根本的基盤をなすのはわが国と米国との間で締結された日米安全保障条約、ひいてはこれに基づく日米間の相互協力と安全保障の体制である。

 冷戦期を通じては東アジアにおける共産主義に対する対抗手段として、ソビエト連邦崩壊以降においてはパワーバランスの変化に伴うわが国および周辺地域における軍事的脅威や不安定要因に対処するための手段として日米安全保障条約に基づく安全保障体制が維持されてきた。

 近年においては中華人民共和国における軍事力の広範かつ急速な増強や東シナ海・南シナ海における活動の活発化、北朝鮮における核・ミサイル開発の進展、北方領土や竹島の領土問題の存続、いわゆる「グレーゾーン事態」の増加傾向といった国際社会の平和と安定に対する脅威が増大し、わが国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増すなか、第二次世界大戦後長い年月を経て構築され維持されてきた日米安全保障条約に基づく米国との相互協力と安全保障の体制は欠くことのできないものである。

 かかる歴史的経緯や現在におけるわが国の安全保障環境を踏まえるならばわが国唯一の同盟国である米国との間で多くの時間と労力を費やして形成された日米安全保障協議委員会等における合意事項をわが国が履行できないことは米国との信頼関係に亀裂を生じさせ、崩壊させかねない。

 東アジア地域の軍事的脅威や不安定要因を増大させることともなり、わが国の外交上、防衛上の不利益は極めて重大なものとなる。

 日米両政府間の普天間飛行場の返還合意は日米両政府間において長きにわたる交渉、協議、調整の成果としての既定路線となった。前知事による承認はかかる関係者の努力の集大成、重要な通過点ないし標石としての意義を有するもので、今に至って取り消すことは長い年月を経て積み重ねられたわが国の国家的な成果を全て白紙に戻すものであり、当該成果に対するわが国国内および米国の信頼を根こそぎ覆滅させるものである。

 さらに、ことは米国との関係にのみとどまるものではない。国家間の約束事を実現できないなどということになれば、今後の諸外国との外交関係の基礎となるべき国際社会からの信頼が低下することにもつながる。承認によって実現に向けて動きだした米国との約束事を反故にすることによってわが国が受ける国際的な不利益は計り知れないものとなる。

 イ 取り消しをしないことによって本件承認処分に基づき既に生じた効果をそのまま維持することの不利益がないか極めて小さいこと。

 本件承認に瑕疵はなく、承認の取り消しをしないことによって、承認で既に生じた効果をそのまま維持することの不利益は存在しないし、仮に存在するとしても以下のとおり、それは極めて小さいものだ。

 (ア)辺野古周辺住民の騒音被害については配慮がなされていること。

 取り消しをしなければ埋立事業が継続し、普天間飛行場の代替施設等が建設されることとなり騒音被害が辺野古周辺住民に生じ得る。しかし本件代替施設等の滑走路は海上に設置され、周辺住民の居住区域から相当距離を置くことなどから、周辺の全ての集落で騒音の値は環境基準を充足し、宜野湾市の普天間飛行場の周辺で1万世帯以上行われてきたような住宅防音は不要となる。国は長年にわたって名護市および宜野座村や本件代替施設等の周辺住民に対して丁寧に説明し理解を得てきたところだ。このように、周辺住民の騒音被害に対しても十分配慮したものとなっており、騒音被害等の影響の程度は普天間飛行場の現状に比して格段に低い。本件代替施設等の周辺住民の受ける不利益は極めて小さい。

 (イ)埋立区域の環境保全に配慮がなされていること。

 取り消しをしなければ埋立事業が継続し、普天間飛行場の代替施設等が建設され一部の自然環境や生活環境に一定の影響が生じることは避けられない。しかし埋立事業において沖縄防衛局は、普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価に関する有識者研究会の検討結果も踏まえて、環境コンサルタント会社に依頼し専門的見地からできる限りの環境保全措置を採っており、十分な配慮がされている。またジュゴン、サンゴ類等については、国は環境監視等委員会の指導・助言を踏まえ環境保全対策を講じることとし、環境に対する相当な配慮がされており、これに伴う影響は限定的なものとなる。不利益は極めて小さい。

 なお、公有水面の埋め立てが生態系に与える影響は、環境影響評価を行う時点よりも将来の事項に係ることで現時点の科学的知見には限界があることなどから、環境影響評価の時点で環境保全措置の実効性を完全に確保することは困難な場合が一般的で、予測の不確実性が高い場合には環境に与える影響に関する予測の不確実さを織り込んだ上で事後調査や環境監視調査で順応的管理を行うというのが環境影響評価の基本だ。これを無視し、国に不可能を強いる被告の指摘は到底要件の瑕疵足り得ないものだ。

 (ウ)沖縄県の負担の軽減に資すること。

 本件代替施設等は施設および区域の面積や滑走路の長さの点で普天間飛行場より規模が縮小される上、普天間飛行場から移転される機能も一部にとどまること、また辺野古沿岸は既に米軍施設および区域(キャンプ・シュワブ)として提供されている場所であって、代替施設等を建設するために沖縄県に新たな米軍施設および区域のための土地提供を求めるものでもない。辺野古沿岸域に移設する方が沖縄の全体的な負担の軽減になる。

 ウ 小結

 以上のとおり本件承認処分を取り消すことによって生じる不利益は、普天間飛行場周辺住民等の生命・身体の危険や騒音被害の除去、宜野湾市の経済発展、沖縄県の負担軽減のいずれも阻害する点、莫大な経済的不利益が生じる点、米国および国際社会の信頼を失う点において極めて大きい。一方、取り消しをしないことによって本件承認処分に基づき既に生じた効力を維持することによる不利益は存在しないし、仮に存在するとしても、本件代替施設等の滑走路が海上に設置されることや、自然環境に対する環境保全措置が講じられることなどによって十分に配慮されておりその不利益は極めて小さい。また被告の指摘する沖縄の過重な基地負担が固定化される不利益なるものは、取り消し処分を取り消して普天間飛行場を辺野古沿岸域に移設する方が沖縄の負担軽減に資するのであって、取り消しをしないことによる不利益足り得ないものである。

 したがって、本件取消処分は瑕疵の有無にかかわらず、取消権を制限する判例法理に反したものであるから法42条1項に違反し、違法である。上記のとおり、承認取り消し処分を取り消すことによって生じる不利益が極めて大きいことからすると、本件訴訟において仮に被告が本件取消処分の理由として指摘するような法的瑕疵が存在したとしても、それを放置することによる不利益が承認取り消し処分を取り消すことによって生じる有形無形の膨大な不利益を上回ることはおよそ想定することさえできない。承認を取り消した取り消し処分が違法であることは明らかだ。

 したがって、被告が本件訴訟においていくら具体的かつ詳細に主張したとしても、主張自体失当というほかなく、貴裁判所におかれては速やかに弁論を終結して、本件取り消し処分の取り消しを行うべきことを命ずる判決をしていただくよう改めて強く希望する

 

よろしかったら人気blogランキングへ クリックお願いします
コメント