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辺野古移設が唯一の方法、普天間の機能は必要不可欠
《 沖 縄 時 評 》
在沖米軍トップらとマスコミが意見交換
米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古沖への移設をめぐり、「基地反対」が沖縄の民意のように県内外のメディアは報じている。しかし、一般的な県民意識としては米軍に対して友好的だ。
米政府に相手にされぬ沖縄の再提案
2月24日に実施された辺野古埋め立ての是非を問う沖縄県民投票では埋め立て反対は72%。玉城デニー知事は、有権者の4分の1以上が反対した結果を根拠に、移設工事中止を安倍晋三首相に要請した。
一方、首相は「県民投票の結果は真摯(しんし)に受け止めながら、一つ一つ負担軽減に向けて結果を出していきたい」と述べたが、辺野古移設に関しては玉城氏の要請には応じなかった。
米政府も現実味のない沖縄の再度の提案に冷ややかだ。ロバート・ケプキー駐沖縄米総領事と在沖縄米軍トップ(四軍調整官)を兼務するエリック・スミス在日海兵隊司令官がこのほど、世界日報を含むマスコミとの意見交換会に出席した。
ケプキー氏は、「沖縄県の要請についてはコメントする立場にはない」と述べた。県の要請は検討の対象にすら上がっていない。その上で、ケプキー氏は「沖縄は米軍のアジア太平洋地域の安全保障維持で中心的役割を果たしている。米国政府と協力して負担軽減に努めているところだ」と述べ、辺野古移設を実現することが、唯一の負担軽減の方法であることを強調した。
ケプキー氏は意見交換会の冒頭、こう述べた。
「昨年トランプ大統領が安倍首相と会談した際、米国が日本を防衛する揺るぎない決意を表明し、在日米軍再編にもコミットすることを決めた。普天間飛行場のキャンプ・シュワブへの移設は両国が長きにわたった作業の結論だ。キャンプ・キンザー(浦添市)、キャンプ・フレスター(北谷町など)、普天間飛行場が全て返還されれば、沖縄の負担が軽減される」
日米同盟は平和の要
続く質疑応答では、辺野古移設の是非と米軍のプレゼンスについての質問が集中した。
辺野古沖に軟弱地盤が見つかったことについて、スミス氏は「日本政府が代替施設を造っており、工事関係者にも絶大な信頼を置いている」と述べた。軟弱地盤の影響で普天間飛行場の返還時期が「2022年以降」から3~4年遅れる見通しであることを明らかにした。
スミス氏はまた、絶滅危惧種に指定されているジュゴンが辺野古と反対側の西海岸で見つかったことについて、「辺野古の移設工事とは関係ない」と断言。「外敵にやられる可能性だってある。訓練する側としても生き物に危害を加えないよう注意を払っている」と強調した。
県議会が普天間の即時停止を要求していることについて、「普天間飛行場は米軍だけではなく国連軍基地だ。普天間は日米同盟、地域の安定には欠かせない」とその重要性強調した。
朝鮮半島情勢にも話題が及んだ。トランプ大統領が在韓米軍撤退をちらつかせることで、将来的に沖縄の米軍プレゼンスは強化されるかという質問に対して、スミス氏は「在沖米軍の規模を増やす計画はなく、むしろ現在の約1万9000人から1万人にまで減らすことを目標としている」と述べた。その上で、「在韓米軍トップは北朝鮮の非核化に完全な証拠がないと報告を受けている。もし、安全保障環境に変化があっても米軍の滞在に変化はない。日米同盟は地域の平和と安定の要になっている」と説明した。
スミス氏はまた、玉城知事が普天間所属の航空隊の訓練をグアムなど県外海外にすれば代替施設は必要なくなるとする「海兵隊不要論」を一蹴。「自衛隊も米軍の駐留を必要としている。私の任務の一つは自衛隊と合同訓練することだ」と述べ、「日常的に自衛隊とともに飛行、航行、訓練し、世界でも他に類を見ない同盟関係となっている」と強調した。ケプキー氏も、「辺野古に移設することが、普天間飛行場を使わない唯一の方法だ」と話した。
地元紙が伝えぬ友好
ケプキー氏は米国と沖縄の友好の橋渡し役としての自身の使命について話し、英会話ボランティアや地域清掃、沖縄の高校生と大学生を対象とした米国派遣事業を紹介した。中でも、派遣事業は、在日米軍専用施設が集中する沖縄の若者を対象に、より幅広い視野で日米同盟の意義を知ってもらおうと、外務省が計画したもので、先日、キャロライン・ケネディ元駐日大使がニューヨークで沖縄からの訪問団と面会した。
在沖米海兵隊の資料によると、昨年のボランティア総時間は延べ1万6568時間でイベントは2075回を数える。人気イベントの一つが、3月23、24日に開かれたキャンプ・シュワブ・フェスティバルだ。会場では、海兵隊の新型輸送機オスプレイ、戦闘攻撃ヘリ、水陸両用車、さらには陸上自衛隊の装甲車が陳列された。夜遅くまで米軍人・軍属と地元の人々が入り交じって、グルメ屋台、移動式遊園地などで楽しい時間を過ごした。
一方、基地外での日米交流も盛んだ。辺野古区では毎年、綱引きやハーリー船競漕という二大イベントが行われるが、ここではキャンプ・シュワブの軍人は地域の住民として受け入れられている。嘉陽宗克辺野古区長と宮城安秀名護市議は、「これが辺野古の真の姿だ」と口をそろえて言う。ただ、地元紙が米軍と地元住民の友好関係を取り上げることはほとんどない。
また、スミス氏は筆者との会話で、「基地に反対する人は世界のどこに行ってもある程度はいる。そのことで嫌な気持ちになったことは一切ない」とし、「沖縄県民の温かさを感じる毎日だ」と喜んだ。
スミス氏の冒頭のコメントも沖縄愛にあふれるものだった。「沖縄に住むことができて感謝したい。ここが私の家である。玉城デニー知事から教わった『ちむぐくる』を感じている」。短いコメントの中に知事への敬意を忘れなかった。
不可解なのは、意見交換会には合計県内外15社ほどが参加していたが、地元2紙の沖縄タイムスと琉球新報の姿がなかったことだ。ところが、タイムスにおいては翌日の紙面で1面と2面で大きくその内容を扱い、「普天間飛行場の騒音は気象状況によって変化する」という趣旨のスミス氏による発言の揚げ足を取るような報道をした。
(豊田 剛)