早朝散歩しているとそこかしこで犬を引き連れた風景に出会う。思い返せば、飼い犬に鎖をつないで散歩したことなど無かった。わたくしの生まれ育った田舎では40年前までは犬も放し飼いしていたし、犬のために時間を費やして散歩に連れて行くなんて考えたことも無い。
ポチ(安直な名付けだけど)らしい骸が近所のお宅の裏庭で見つかったと聴いたのはいつだったろう。
あいまいな記憶でしかないが、高校生ではなかったと思う。飼い犬の死に頓着するより毎日をめまぐるしく駆けている気がしていた中学生の頃か。
死んだ時期もはっきり覚えていない程度だから何歳まで生きたのか分からないけど、結構長生きだったことだけは確かだ。わたくしが物心つく頃から家族の一員だったことを勘案すれば、12~15年くらいは一緒に暮らしていたことになる。
ポチは気が優しい雌犬だった。頭も良かったから家族にもご近所にも可愛がられたと思う。
おばあちゃんになってからは玄関の土間(田舎の家だから何しろ広い)で日がな寝そべっており、これまた年老いた三毛猫が暖を求めて背中にちょこんと乗っても嫌な顔さえしなかった。外に出る時も器用に引き戸を鼻先で開けて行くから、今の都会で飼われている犬に比べれば幸せな生涯だったろう。
彼女に申し訳なかったと心残りなのは、産んだ子犬等と引き裂いた無慈悲だろうか。
年に一度、5~6頭の子犬をよその家の軒下で産むから、体の小さかった我々子供が懐中電灯片手に潜り込み捕獲しに行った。まだ目のあかないうちにダンボールに詰め、高い橋の上から渓谷に投げ捨てた。子供だからこそできた事だけど、今思えば遣る瀬無い。
暫く辺りをウロウロするポチの母性を理解していなかった。
一匹でも残して、親離れするまで一緒にしてあげられたらと、そんな事を思ってる。