持参したおにぎりを急いで齧り、続けざまに映画館に戻る。
原作はつい最近読んだばかり。東野圭吾にしては辻褄合わせがやや凡庸で、切れの無い作品だと思った。毎年何作もミステリを書いていればいくらなんでも面白いものばかり量産できはしないだろう。
それでも着想はやはり面白い。格式ある一流ホテルで起こると予期された殺人事件を、マスカレード(仮装)した刑事とホテルマンが協力して阻止しようと奮闘するという設定が良い。
しかし肝心の内容は、残されたメッセージが次の殺害場所を示す緯度経度でした。と言うような使い古されたジャブにもがっかりだし、一流ホテルのフロントマンと同じようなスキルを易々と習得できる筈無いでしょとか、ちょっと無理がありすぎて三流ミステリの臭いもする。
そんな原作だった割には、映画は面白かった。フジテレビ制作だし、監督もテレビ出身だから低く見積もりすぎていたのかもしれないけれど。
木村拓也はいつものキムタク演技だけど、相方の長澤まさみとの相性が良いみたいで上手くはまっていた。大柄でボリュームある長澤まさみが貧弱なキムタクと対峙すると、一流ホテルの貫禄みたいなものがでてくるから説得力がある。小柄で小娘みたいな女優がやってしまうとキムタクワールドに取り込まれてしまい、一連のテレビドラマと区別が出来なくなるところだ。ホテルを訪れる怪しげな人々をテンポ良く見せるのも映画らしいリズムがあり、原作通りといえばそれまでだが楽しめる。ワンポイントであってもキャストをふんだんに使っているので、その辺も楽しみながら観ることができる。
原作には無いが、ホテル内の従業員とか警察内部に伏線を張ったりできれば、もうちょっと緊張感のある作品になっただろうけど、原作者が許さないかもしれないしそもそも今のフジテレビにそこまでの気概があるかも疑問だ。
日曜日の昼は満員だった。
原作もシリーズ化されているから、多分映画もシリーズになるのだろう。
次作るとするなら、原作に頼り切った平均点狙いはしないで欲しいと注文を付けておこう。
それにしても上映中に携帯端末を操作する馬鹿が多いのには辟易する。
不思議と耳に残る音楽に合わせて啓蒙される映画盗作罰則のお知らせに、上映中の携帯端末操作も違法です!とやってくれないかな。後から頭ひっぱたきたくなる衝動をどうにか抑えている今日この頃。