横浜ジャック&ベティの前から3列目。嗚咽を我慢できずにタオルを噛む
帰りの京浜急行の車内に座ってもアイルランドの女の子の幸せを願いながら思い出し泣きをする
コットは物静かな女の子
多分日本にいたらイジメらてしまうかもしれないほど寡黙な少女だ
家庭には兄弟姉妹が沢山いるし、学校でも勉強は得意ではない
母親はまた子を宿しているから甘えるわけにもいかなし、父親は飲んでいるかギャンブルに現を抜かすダメ野郎
そんな彼女に口減らしの意味もあって、親戚の家に一夏預けられることになる
無口なおじさんと親切なおばさんには子供がいないけど、事故で亡くなった男の子の服は沢山ある
寡黙な彼女ではあるけど徐々にこの家庭に馴染んで行く
わたくしも小学生の頃、弟と二人浦和の叔母さんの家に一月近く預けられたことがある
冷涼な田舎に住んでいたから浦和の夏の暑さと砂埃には辟易してが、狭い団地の生活や冷房の冷たさを知ることができた
あれはあれで楽しい夏の思い出だ
故に、コットが一人違う家で見知らぬ生活を送る序盤には思い入れがある
おばさんは汚れたコットの足を隅々まで洗い、毎日長い髪をすいてくれる。雨が降らなくとも枯れない井戸にバケツを下げて通うのも日々の生活として定着して行く
おじさんは乳牛を飼育しながら無骨に生きている。牛舎から消えたコットを心配して厳しく叱るけれど、一緒に掃除をした後に郵便受けまでの真っ直ぐな道を駆けるコットを愛情深く褒めてもくれる
子供は大人に認めてもらうことで自分の存在位置を測ることができる
緯度の高いアイルランドの夏は眠る時間になっても表は明るく、わたくしたちの夏とはかなり違うように思うけど、今まで家庭にも学校にも居場所がなかったコットにとっておじさんおばさんと過ごしたこの夏は、自分が居るべき場所を知ることができた至極の日々だった
夏休みが終わり、実家に帰るとジメッとした空気に息が詰まりそうになる
兄弟姉妹も揃った食卓に飲んで帰ってきた父親が加わる。おじさんとおばさんは居心地悪そうにそそくさと暇乞いをする。もうすぐコットの幸せな夏の日々が終わってしまう
敷地のゲートへ走り行く車を追いかけ、郵便受けまで毎日駆けたように全力でコットは走り出す
ゲートで追いついたコットはおじさんの力強い腕に抱かれる
走り来た道には父親の姿が・・・
その姿を見たコットは小さな声で「お父さん」と言うが、おじさんに強くしがみついてもう一度「お父さん」
その愛情の迸りは、はじまりの夏を告げているようだった
リーフの解説では物語は1981年の夏のお話のようだ
幼かったコットも今や50歳を過ぎたおばさんだ
あの夏、彼女のその後は分からないけど、誰かに愛され愛し、必要とされることを知ったコットはきっと素晴らしい人生を過ごしていることだろう。そして、誰かのために愛を注ぎ愛される今日を生きている
こんな小品こそ、メジャーな映画館で沢山の人に観ていただきたいと思う
原題の物静かな少女より、断然邦題の方がしっくりくるのも嬉しかった
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