映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

今年は「夜明け」から

2019-01-23 20:49:41 | 新作映画

今年最初の鑑賞は是枝・西川監督の身内、広瀬監督の処女作「夜明け」から。





二人の名監督の膝元で映画製作をしてきた人だから、多少は期待していた。
残念ながら、女性監督にありがちな小さな世界を堂々巡りする悪いパターンに終始しており、わたくしには退屈で仕方なかった。別に小さな世界にこだわるのがいけない訳じゃないけど、夜明けと共に拾われた命が夜明けの踏み切りが開いた後何処を目指しているのか、まるで想像できない。ありきたりなハッピーエンドもバッドエンドも望んではいないけど、観ている観客の心をどこかに連れて行ってくれないと、二時間あまりの物語に付き合ってたこちらとしては肩透かしをくった無念さしか残らない。
柳楽優弥の眼差しは、「誰も知らない」の少年がそのまま大きくなったみたいで魅力的だったけど、心の彷徨いには違和感があった。
どうしたら上手くいったのかも考え付かないので対案は無いけど、一人称にも成り得ない作品はもうウンザリしている。映画の撮り方は学んだんだろうけど、人を掘り下げて他人に伝える術をもう一度真摯に学ぶしかないんだろう。



散歩する犬

2019-01-19 03:59:34 | 歳時記雑感

早朝散歩しているとそこかしこで犬を引き連れた風景に出会う。思い返せば、飼い犬に鎖をつないで散歩したことなど無かった。わたくしの生まれ育った田舎では40年前までは犬も放し飼いしていたし、犬のために時間を費やして散歩に連れて行くなんて考えたことも無い。

ポチ(安直な名付けだけど)らしい骸が近所のお宅の裏庭で見つかったと聴いたのはいつだったろう。
あいまいな記憶でしかないが、高校生ではなかったと思う。飼い犬の死に頓着するより毎日をめまぐるしく駆けている気がしていた中学生の頃か。
死んだ時期もはっきり覚えていない程度だから何歳まで生きたのか分からないけど、結構長生きだったことだけは確かだ。わたくしが物心つく頃から家族の一員だったことを勘案すれば、12~15年くらいは一緒に暮らしていたことになる。

ポチは気が優しい雌犬だった。頭も良かったから家族にもご近所にも可愛がられたと思う。
おばあちゃんになってからは玄関の土間(田舎の家だから何しろ広い)で日がな寝そべっており、これまた年老いた三毛猫が暖を求めて背中にちょこんと乗っても嫌な顔さえしなかった。外に出る時も器用に引き戸を鼻先で開けて行くから、今の都会で飼われている犬に比べれば幸せな生涯だったろう。

彼女に申し訳なかったと心残りなのは、産んだ子犬等と引き裂いた無慈悲だろうか。
年に一度、5~6頭の子犬をよその家の軒下で産むから、体の小さかった我々子供が懐中電灯片手に潜り込み捕獲しに行った。まだ目のあかないうちにダンボールに詰め、高い橋の上から渓谷に投げ捨てた。子供だからこそできた事だけど、今思えば遣る瀬無い。
暫く辺りをウロウロするポチの母性を理解していなかった。

一匹でも残して、親離れするまで一緒にしてあげられたらと、そんな事を思ってる。





日本アカデミー賞 要らないかな

2019-01-16 21:03:43 | 旧作映画、TVドラマ

毎年この時期にはキネマ旬報のベストテンが発表されているのに、今年は本誌発売の直前に発表するらしい。それならそれで待ちますけど。これまた毎年愚痴っているけど、最近の選者はどうも偏った嗜好の方が多いみたいで、エンターテイメントを意識してないように思う。キネ旬読者の選ぶベストテンの方が実際の感性を反映していたんだけど、去年は○ャニーズの組織票のおかげでこれも汚されてしまった。今年は真っ当な選出に戻って欲しいな。

対極とまでは言わないけど、業界の顔色伺いながら波風立たないように分配する日本アカデミー賞とやらは、映画好きからするとレコード大賞と同じ臭いしかしない。映画人のための映画人の賞だと言い張るけど、その映画にお金を払うのは観客の我々だから、身内のご苦労様会にされては失望以外の何物でもない。
ノミネート作品を配給会社と並べてみた。
①「万引き家族」ギャガ
②「孤狼の血」東映
③「北の桜守」東映
④「カメラを止めるな」アスミックエース
⑤「空飛ぶタイヤ」松竹
全部観て言うわけじゃないから説得力は無いけど、①②④は評価も実績も頷ける選出だと思う。③は酷評される出来みたいだし、⑤は原作が有名な割りに話題にならなかった。このあたりにプンプン臭う大人の事情がありそうだ。ただ、配給会社に東宝が無いのは珍しい。
「寝ても覚めても」も独立系の作品だから選んでもらえなかった。
結局、「万引き家族」の総取りになるのだろうな。
アニメ作品のノミネート
①「未来のミライ」②「ドラゴンボール超ブロリー」③「ペンギンハイウェイ」④「名探偵コナン ゼロの執行人」⑤「若おかみは小学生」
これも①と⑤しか観てない。①が期待はずれだったから⑤にとって欲しいけど、④あたりに落ち着きそうだ。
外国作品
①「ミッションインポッシブル フォールアウト」②「ボヘミアンラプソディー」③「シェイプオブウォーター」④「スリービルボード」⑤「グレイテストショーマン」
②③⑤を観た。個人的には⑤を選びたいけど、勢いからして②で決まりそうだ。日本映画のノミネートより余程説得力があるけど、気になるのはアメリカ映画ばかりだということ。今やアジア映画やヨーロッパ映画さえチェックしてないから偉そうなことはいえないけど、本当にこれでいいのかな?高校生の好きな映画アンケートみたいじゃないかな?

そもそも、ノミネートって誰が選んでいるんだろう。
照明や録音、編集といった技術的な賞は専門家じゃないとその凄さは分からないと思うけど、結局は作品賞候補の作品からの選出ばかりなのも疑問だ。優れた技術あってこそ良質の作品が生まれるのは納得できるけど、飛びぬけて素晴らしい撮影とか美術とかって作品の出来不出来とは関係ないと思う。

最後に第一回目の作品賞候補
「青春の門 自立編」
「竹山ひとり旅」
「八甲田山」
「はなれ瞽女おりん」
そして受賞したのは「幸福の黄色いハンカチ」
全部観ているが全部傑作と言って良い。特に受賞作品は日本映画の至宝だと思っている。
日本アカデミー賞。どうしてこうなってしまった!




冬ドラマとその前に

2019-01-09 21:00:09 | 旧作映画、TVドラマ

暮れにCS放送されていた「101回目のプロポーズ」と「ひとつ屋根の下」を泣きながら観たので、脚本家野島伸司について調べてみたら1990年代のドラマしか記憶になかった。昨年の夏ドラマだった「高嶺の花」も石原さとみと野島伸司だから観たけれど、序盤で愛想を尽かし止めてしまった。'90年代の軌跡をたどるしかないけど、結構沢山観ていたことに気がつく。
'89「愛しあってるかい」
陣内孝則と小泉今日子の学園を舞台にしたお気楽なコメディだった。厳密には1990年代ではないけど、バブル景気の浮かれ調子がそのままドラマの根底にありトレンディドラマの括りになるだろう。
'91「101回目のプロポーズ」
久しぶりに観返したが、本当に良くできた恋愛ドラマだ。その後の様々なドラマや映画に影響を与えたのは頷ける。それまでは美女と野獣のふりをして見せていても、結局野獣の本当の姿は王子さまでしたと言うオチになってしまうのがセオリーだったし、役者も無理やりの変装を解けば二枚目俳優が演じるのがお約束。このドラマが受け入れられたのは、最後まで武田鉄矢は冴えないおっさんのままでありながら、浅野温子(正しくバブル期の美女)の心を掴むまでのプロセスがカッコいいからだ。
'92「愛という名のもとに」
前作と違うのは群像劇だったこと。「東京ラブストーリー」の強烈な印象を引きづった鈴木保奈美を中心にノスタルジックなドラマだったと記憶している。浜田省吾の歌が一層過去を鮮明に炙り出していた。
'93「高校教師」
センセーショナルな問題作としてかなり話題になった。若き真田浩之と桜井幸子の逃避行が、痛ましく迎えるラストシーンを忘れられない名シーンに格上げした。森田童子の囁くような歌声を取り入れた構成力も非凡だった。この作品を契機に野島作品は、どこか社会の裏でひっそり息づく闇を描くようになる。本当はテレビドラマの脚本より映画脚本に進むべきだったのかもしれない。
'93「ひとつ屋根の下」
変化球ではあるが、ホームドラマを真正面から描いたところに腕力を感じる。'70年代'80年代テレビの花だったホームドラマを若手中心のトレンディドラマ仕様に仕立て上げたアイデアも優れていた。現在も一線で活躍している俳優の若く幼い演技を観るのも楽しい。
'94「家なき子」原案のみ
原案だけで脚本は書いていないようだけど、古典的な題材を新しく翻訳し直したところが凄い。安達祐実が前作「ひとつ屋根の下」で酒井法子のタネ違いの妹役で出演していたのを暮れに観た時に発見したのが嬉しかった。
'97「ひとつ屋根の下2」
前作の中心的役割だった福山雅治がビッグになりすぎて時間が取れなかったからか、ほとんど出番が無くその穴を埋めるように松たか子が家族のように加わった。
'98「聖者の行進」
より一層作家性を色濃くした作風は、テレビドラマとしては一般的に受け入れ辛い内容であったため、その後の作家野島伸司を殺してしまったかもしれない。主演のいしだ壱成ものりピーも犯罪者になってしまったことも、偶然とは言え拭えない汚点でもある。

さて、2019年冬ドラマについて、
この冬に観たいと強く思ったのはたったの一本。
「3年A組-今から皆さんは人質です」
初回を観た感想としては、狭い無機質な学校の教室中心のなかで連続ドラマとして成り立たせるのはかなり難しいだろうと思った。菅田将暉と永野芽郁、川栄李奈の三人が役者としても能力が高いことは周知の事実だが、30人の群像の中でどのように物語を紡いでいくのだろう。あまり好きではないけど、上白石萌歌の存在感もポイントになりそうだ。一回目はこの四人の演技合戦を見ているようだった。
ドラマとしては、学校が爆破されて生徒が人質にとられているのに学校も警察もどこかのんびりしているし、SATがあんなにヘマな突入するとは思えないし。教室での人質監禁というのは面白い舞台設定だけど、外の世界との隔離の仕方が稚拙すぎて興ざめだ。外部との連絡交信を閉ざす密室が作れたならこの作品はものすごく面白くなったかもしれない。
ボブの永野芽郁を堪能できれば良いか。

初回をつい見過ごしてしまった「いだてん」は土曜日の再放送でチェックしようと思う。宮藤大河ドラマが「あまちゃん」のようにNHKの看板番組に新風を吹き込むことができるか楽しみだ。
竹内結子の「スキャンダル専門弁護士QUEEN」杉咲花「ハケン占い師アタル」NHKの「トクサツガガガ」は取りあえず観てみる。