歩いていて出くわした会話。「とうとうネットを張ったかや」と畑を見下ろしながら声を掛けた人。「何が来るのかよう分からんが今年しゃあやれんかいね」と斜面の段畑で作業中の人が見上げて答える。風は冷たいがやわらかな陽射しにほっとさせる昼下がり。
段畑の下には民家も見え、バイパス道路もそばを通っていて昼間は野生動物が姿を表すような場所ではない。が、夜間はひっそりとした段畑、新鮮な作物をいただきに何かの生き物が現れても不思議ではない。先の会話から最近、被害が大きくなったことが伺える。その畑、緑色濃い何種類かの野菜が冬日を受けている。
何十年も前、山の斜面の畑でわずかな野菜を作っていた。当時、野生の動物からの被害は思い出せない。あるといえば土からのぞいている大根をカラスがつつく、その程度だった。動物でなく黒い頭の生き者にひと畑ジャガイモを盗まれたことはある。数本くらいの大根を持ちされることはよくあった。
ここらでもイノシシや猿、狸などによる被害はよく聞かされる。対策はとられているのだろうが、動物たちはそれを越える能力を持っているのかもしれない。それは野生として生きるための知恵がそこに働くのだろう。熊対策としてどんぐりの木などを植林する活動も多いという。
こうした動物対農家の戦いはいつころから多くなったのだろう。市街地周辺でもこの傾向が見られる。ましてや過疎高齢化や限界などと称される地域での苦労は大変だろう。新政権はこれまでの農業政策を否定されている。新農林大臣は郷土出身、力強い策が小規模農家まで早く届くことを願う。