昔のCDを聴いていたら、偶然に新たな発見があった。
1985年に発売された荻野目洋子の3枚目のアルバム『貝殻テラス』収録の同名曲『貝殻テラス』。『ダンシング・ヒーロー』でブレイクする直前だが、既に実力派アイドルとして活躍していた頃の曲だ。『ダンシング・ヒーロー』以降の曲よりアイドルらしい曲を歌っていて、結構好きだった。
『貝殻テラス』は当時から好きな曲だったが、聴いたのは本当に久しぶり。たまたま車に持って入った荻野目洋子のベストアルバムに収録されていて、たまたま「この曲を聴いてみよう」と選曲したのがこの曲だったのだ。
作曲は船山基紀、そして作詞は若き日の秋元康である。
何気なく歌詞を聴いていてハッとした。
「二人でいつもわけてたクロック・ド・ムッシュ 一人きりでは残してしまったわ」
これは『波音のオルゴール』の
「レモン味のこのかき氷 一人じゃ食べ切れないでしょう」
と全く同じ構図だ。ちなみにクロック・ド・ムッシュとは、チーズとハムをパンに挟んで焼いたホットサンドウィッチのようなものらしい。
そもそも歌の状況が同じで、2曲とも夏の海で一人、過ぎた夏の恋人との日々を回想している歌だ。周囲にいる恋人達に去年の自分達を重ねているフレーズがどちらにもある。
『波音のオルゴール』の彼女は「海にも入らない」と歌うが、『貝殻テラス』の彼女も「思い出に落ち込んで泳ぐ気になれない」と歌っている。
『波音のオルゴール』では「去年の水着は着ない、地味なワンピースでいい」と歌っているのに対し、『貝殻テラス』では「去年も着ていたダンガリーシャツから愛がこぼれた」と歌う。
これは正に、秋元康自身による「本歌取り」である。30年の年月を経て、再び同じテーマ、同じ道具立てで創作された曲。秋元康は、明らかに確信的にこの「本歌取り」を敢行している。
しかも『波音のオルゴール』はAKBグループ内での『夏の恋を回想』シリーズの1曲でもある。秋元康はこのテーマが相当好きなようだ。
これは嬉しい発見だ。
誤解がないように書いておきたいが、秋元康の詞がワンパターンだとか、手抜きだとか、批判するつもりは全くない。むしろ、30年間変わらないテーマを、手替え品替え、何回も詞にして来たことに敬意を表する。おそらく、私が気付いていない曲も沢山あるのだろう。
今回『波音のオルゴール』と『貝殻テラス』の関係に気づいたのは偶然の助けによるもので、非常にラッキーだったと思う。
こうした「発見」の喜びがあるから、継続してアイドルの曲を聴き続けて来た。「楽曲派」「書斎派」の醍醐味だ。アイドルポップというジャンルが、長い年月を経て、多くの作品が蓄積することで、歴史研究に値するほどの厚みを持った文化になって来たことを実感する。
『貝殻テラス』を聴いたことがある読者は少ないと思われ、非常にマニアックな文章だと自覚しているが、あまりに嬉しかったので掲載させていただいた。
1985年に発売された荻野目洋子の3枚目のアルバム『貝殻テラス』収録の同名曲『貝殻テラス』。『ダンシング・ヒーロー』でブレイクする直前だが、既に実力派アイドルとして活躍していた頃の曲だ。『ダンシング・ヒーロー』以降の曲よりアイドルらしい曲を歌っていて、結構好きだった。
『貝殻テラス』は当時から好きな曲だったが、聴いたのは本当に久しぶり。たまたま車に持って入った荻野目洋子のベストアルバムに収録されていて、たまたま「この曲を聴いてみよう」と選曲したのがこの曲だったのだ。
作曲は船山基紀、そして作詞は若き日の秋元康である。
何気なく歌詞を聴いていてハッとした。
「二人でいつもわけてたクロック・ド・ムッシュ 一人きりでは残してしまったわ」
これは『波音のオルゴール』の
「レモン味のこのかき氷 一人じゃ食べ切れないでしょう」
と全く同じ構図だ。ちなみにクロック・ド・ムッシュとは、チーズとハムをパンに挟んで焼いたホットサンドウィッチのようなものらしい。
そもそも歌の状況が同じで、2曲とも夏の海で一人、過ぎた夏の恋人との日々を回想している歌だ。周囲にいる恋人達に去年の自分達を重ねているフレーズがどちらにもある。
『波音のオルゴール』の彼女は「海にも入らない」と歌うが、『貝殻テラス』の彼女も「思い出に落ち込んで泳ぐ気になれない」と歌っている。
『波音のオルゴール』では「去年の水着は着ない、地味なワンピースでいい」と歌っているのに対し、『貝殻テラス』では「去年も着ていたダンガリーシャツから愛がこぼれた」と歌う。
これは正に、秋元康自身による「本歌取り」である。30年の年月を経て、再び同じテーマ、同じ道具立てで創作された曲。秋元康は、明らかに確信的にこの「本歌取り」を敢行している。
しかも『波音のオルゴール』はAKBグループ内での『夏の恋を回想』シリーズの1曲でもある。秋元康はこのテーマが相当好きなようだ。
これは嬉しい発見だ。
誤解がないように書いておきたいが、秋元康の詞がワンパターンだとか、手抜きだとか、批判するつもりは全くない。むしろ、30年間変わらないテーマを、手替え品替え、何回も詞にして来たことに敬意を表する。おそらく、私が気付いていない曲も沢山あるのだろう。
今回『波音のオルゴール』と『貝殻テラス』の関係に気づいたのは偶然の助けによるもので、非常にラッキーだったと思う。
こうした「発見」の喜びがあるから、継続してアイドルの曲を聴き続けて来た。「楽曲派」「書斎派」の醍醐味だ。アイドルポップというジャンルが、長い年月を経て、多くの作品が蓄積することで、歴史研究に値するほどの厚みを持った文化になって来たことを実感する。
『貝殻テラス』を聴いたことがある読者は少ないと思われ、非常にマニアックな文章だと自覚しているが、あまりに嬉しかったので掲載させていただいた。