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 2月12日に県の監査委員に住民監査請求した「行政委員らは4億3310万円を不当利得として返還すべき」とのデータを載せる。

 国や県、市町村には、法律や条例で「行政委員」が定められている。
 たまに開かれる会議に出席する「非常勤」でありながら、月ごとに一定額を支払っているケースがある。
 昨年1月、大津地裁は、判決で「(月額報酬は)勤務日数に応じた報酬を定めた地方自治法に違反する」として支出差し止めを命じた。

 それを受けて、検討する自治体もあるし、現状追認の自治体もある。

 岐阜県の場合、選挙管理、収用、労働など8の行政委員会がある。
 内水面漁業管理委員会だけが日額制。
 7委員会は月額10万2300~21万8550円。
 委員は、議会の同意を受けるなどして首長が任命する専門家。
 たとえば、選挙管理委員は、選挙の当選証書を手渡したり、投開票時の確認作業などを行い、月に1度、約2時間の総会に出席するほか、知事選があった昨年1月は2回の委員会を開催。
 2008年度は13回の委員会があった。

 一回あたり、6万円から20万円ほどにもなる、超高額な日当。

 そこで住民監査請求した。
 今回は、会議1回の報酬は最高で2万円が限度だと設定し、それを超えて支給された4億3310万円を不当利得として返還を求めた。
 
 (関連) 2009年2月4日ブログ
    ⇒ ◆行政委員の月額報酬は違法/支出差し止めを命じた大津地裁判決/日本中、同じ状態
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                     (転載、転用ご随意に)
 ● 住民監査請求本文、印刷用PDF 4ページ 168KB
 ● 住民監査請求本文、テキスト・データ 10KB

 ● 第1号証 岐阜県行政委員会の特徴や状況 印刷用PDF 1ページ 60KB

 ● 第2号証 行政委員会の執務実績と委員一人1回の日当額、支給総額及び返還すべき不当利得額の集計表 印刷用PDF 2ページ 53KB

岐阜県行政委員の高額な月額報酬の是正と
不当利得分の返還に関する住民監査請求 


第1 措置請求
1. 概要
 行政委員は、首長が任命する専門家である。委員は、議会の同意等を経た上で選任される。

行政委員会は、政治的中立性を確保する観点から、長の指揮監督を受けない。なぜなら、権限が執行機関に集中して行政の公正さが損なわれることを防ぐため、行政委員会制度を設けているからだ。

委員は非常勤である。委員への報酬は、岐阜県各種委員等給与条例(「本件条例」という)に基づいて支給されている。本件条例第1条及び別表に定めるところの、特別職である非常勤の上記委員会の委員の給与は、月額報酬を支給すると定めているが、この規定は、以下に述べるとおり、地方自治法203 条の2第2 項に違反して無効である。

実態の調査に関して、ある政令市の場合、監査委員、人事委員会、選挙管理委員会の会議の1 回の所要時間は大部分が1 時間以内であったという。このように、一回ずつの会議は極めて短時間、簡略な場合が多く、相対的に常軌を逸した高額な日当となっている。

ごく短時間であろう会議のための日当(報酬は)1会議あたり10万円から19万円である。
 よって、
(1) 知事らに対し、本件各委員への月額報酬支出を差止めること、

(2) 一人1回の会議で2万円を超えて支給された分は不当利得というべきであるから、各委員はそれぞれの受領分を県に返還すべきである。すなわち、過去6年分の支給総額5億0562万円のうち、不当利得額というべき4億3310万円の返還をすべきことを各委員に、

(3) もしくは各委員に不当利得額4億3310万円を返還請求すべきであると知事らに、

以上を勧告することを監査委員に請求する。

2. 条例と会議の実態や支出の現況
(1)  普通地方公共団体の委員会は、法律の定めるところにより、法令又は普通地方公共団体の条例若しくは規則に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則その他の規程を定めることができる(地方自治法第138条の4第2項)。行政委員会は、その権限に属する事務の一部を、長と協議して、長の補助機関等に委任又は補助執行させることができる(法180条の7)。

行政委員会と長が協議し職員を融通する方法としては、兼職・事務従事・充て職がある。特に事務量が多く、専任職員を必要とする委員会では行政部局からの出向の形を取る。このように、委員会の職務の大部分や実務は「職員」が遂行しているから、委員らの仕事は少ない。
なお、行政委員会の趣旨や定例会等開催実績は岐阜県も十二分に把握している(第1号証)。

(2) 本件条例第1条は、「この条例は、次の各号に掲げる者に対する報酬及び費用弁償又は給料、手当及び旅費の額並びにその支給方法を定めることを目的とする。 一 執行機関である委員会の委員及び監査委員」とし、別表において「1号委員」として規定している。

 表-1  具体的な会議の日数などの状況の抜粋 (詳しくは第2号証)
         (略/上記のリンク先を)

 3. 違法性
(1)  地方自治法203条の2第1項は、「普通地方公共団体は、その委員会の委員、非常勤の監査委員その他の委員、自治紛争処理委員、審査会、審議会、及び調査会等の委員その他の構成員、専門委員、投票管理者、開票管理者、選挙長、投票立会人、開票立会人及び選挙立会人その他普通地方公共団体の非常勤の職員(短時間勤務職員を除く。)に対し、報酬を支給しなければならない。」と規定し、同条2 項は、「前項の職員に対する報酬は、その勤務日数に応じてこれを支給する。ただし、条例で特別の定めをした場合は、この限りでない。」と規定する。

上記地方自治法203条の2第2項本文は、非常勤の職員に対する報酬は、生活給付としての性格を有さず、純然たる勤務に対する反対給付としての性格のみを有するから、勤務量、具体的には勤務日数に応じてこれを支給すべきとしたものである。

そして、同項ただし書は、勤務の実態がほとんど常勤の職員と異ならず、常勤の職員と同様に月額ないし年額をもって支給することが合理的である場合や、勤務日数の実態を把握することが困難であり、月額等による以外に支給方法がない場合などの特別な場合について、条例の特別な定めにより、月額あるいは年額による報酬の支給を可能にしたものである。

(2) 普通地方公共団体は、法第203条の2第1項に所定の非常勤の職員に対しても、特別な事情がある場合には、同条第2項本文の例外として同項ただし書に基づき、条例で特別の定めをすることにより、勤務日数によらない報酬を支給することができるとされているが、例外的な扱いはその勤務実態が常勤の職員と異ならないといえる場合に限られるべきである。

普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて条例を制定することができるにとどまるから(法第14条第1項)、議会の制定した条例が上記のような法第203条の2第2項の趣旨に反するときには、当該条例は法令に違反するものとして、その効力を有しないといわなければならない。(大津地裁平成21年1月22日判決)

結局、本件条例の月額の規定は法203 条の2第2 項に違反して無効である。

(3) なお、内水面漁場管理委員会は、日額であり、会長1万5千円、その他委員1万3千円と規定されている。すなわち、県や県議会は、法令上は「日額」という制度であることを十二分に認識していたにもかかわらず、本件で指摘する委員らには「月額」を規定し、委員らも十二分にこれを認識したう上で、常軌を逸した高額な報酬を受領し続けたものである。
 以上、内水面漁場管理委員会については「日額」であるので本件住民監査請求の対象としない。

(4) 法第180条の5第5項で、普通地方公共団体の委員会の委員又は委員は、特別の定めがあるものを除くほか、非常勤とする旨が規定されており、非常勤の職員に対する報酬については「その勤務日数に応じて支給する」と規定されている。

(5) 法第2条第16項は、「地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない 」とし、同17項は「前項の規定に違反して行った地方公共団体の行為は、これを無効とする」としている。

(6) したがって、本件委員に対し、勤務日数によらないで月額報酬を支給することとした本件条例は、地方自治法の各規定の趣旨に反しその効力を有しないのであり、本件公金支出は、法第204条の2の規定に反し、違法であって、無効である。

4. 岐阜県の損害
本来、勤務実績に応じた日額での支給が法令の主旨であり、本件条例の規定は違法であって無効であるから、「本件条例が根拠である」として支出された委員の報酬は本来岐阜県の負担すべきものではない。全額が損害であるとの考え方もあり得るが、本件請求では、日額で支給した場合を超えた部分の差額相当額は、「委員の不当利得」であると主張する。この不当利得分は、結果として県に損害を与えている。

5. 本件請求人が監査委員に求めること
(1) 差し止め請求の勧告 
知事らに対し、本件委員に対して月額報酬支出をしてはならない(差止め)と勧告すること。

(2) 受給した相手方に対する不当利得の返還請求の勧告
 県民目線あるいは社会通念上、一人1回の会議あたりその報酬は「日額1万円」程度で十分というべきである。が、関係者の体面などに配慮し、この請求では、あえて控えめにして、「一人1回の会議で2万円」を超えて支給された分は不当利得というべきである。

この前提に立ち、この基準、つまり一人1回の会議で2万円を超えて支給された分は法律上の根拠がないから、「不当利得」というべきである。過去のどこまで返還すべきとするかであるが、本件請求においては、過去6年分の不当利得額の返還を請求すべきであるとする。
明細は第2号証に示すが、合計は以下である。

表-2 委員の執務状況、日当額、支給総額、返還すべき不当利得額の集計(詳しくは第2号証)

   (略/上記のリンク先を)

 よって、委員らに、各委員としてのそれぞれの受領した上記の不当利得分を速やかに返還するよう勧告すること。

※ 民法第703条 (不当利得の返還義務)「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(「受益者」という)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。 」

(3) 知事らに対して返還請求することの勧告 
前項の不当利得分相当につき、知事あるいは他に権限がある者に、「速やかに、各委員に返還請求する」ように勧告すること。

6. 岐阜県の財政の逼迫
 岐阜県の財政の困窮は著しい。職員給与等の削減を行っても足りず、県民に直接大きな影響を与える各種施策の費用の削減も実施する事態である。本件のような常識を逸した高額な手当てはただちに廃止し、これ以上の損害を生じさせないために違法な支出を差し止めるとともに、過去の支給分は速やかに返還して県の財政再建に資するべきである。  

第2 請求者 「くらし・しぜん・いのち 岐阜県民ネットワーク」&「市民オンブズマン・ぎふ」の呼びかけに賛同した県民
          寺町知正 ほか104名

 以上、法第242条第1項により、事実証明書を添えて、必要な措置を請求します。
                             2010年2月12日
岐阜県監査委員 各位

          別紙事実証明書目録
第1号証 岐阜県行政委員会の特徴や状況 
第2号証 行政委員会の執務実績と委員一人1回の日当額、支給総額及び返還すべき不当利得額の集計表          
                 以上

 ●なお、今回の住民監査請求は県民の皆さんに呼びかけて、応えた104人で請求。
  その呼びかけ資料は↓
 ★ 住民監査請求の呼びかけ 印刷用PDF 90KB
 
 ★ 岐阜県の行政委員の報酬や会議の状況 PDF 57KB

 ★ 住民監査請求の署名用紙 印刷用PDF 89KB



 ● 2010年2月13日の報道記事  印刷用PDF 2ページ 310KB

 ●「県の非常勤委員 報酬高い」
    朝日 2010年02月13日
◆返還求め監査請求
 県の非常勤の行政委員の報酬が高すぎるとして、市民団体「くらし・しぜん・いのち岐阜県民ネットワーク」(代表・寺町知正山県市議)が12日、月額報酬の支払いの差し止めと、報酬4億3千万円の返還を求める住民監査請求書を県に提出した。寺町代表は「月額制は常軌を逸した高額。日額制に変更するよう求めていきたい」としている。

 請求したのは寺町氏ら105人で、人事、教育、選挙管理など6委員会と監査委員に所属する委員の報酬が対象。請求によると、2004~09度年の6年間で年に12~36回の会議があり、計5億562万円が支払われた。会議1回当たりで委員1人に支払われた報酬は、6万7千~19万円となる計算だという。

 寺町代表は「社会通念上許されない高額」と指摘。会議1回の報酬は最高で2万円が限度とし、それを超えて支給された4億3310万円を不当利益として返還を求めた。

 地方自治法では、委員の報酬は「勤務日数に応じて支給」と定めているが、「条例で特別の定めをした場合はこの限りでない」と例外規定がある。県の場合、条例で委員の報酬を月額10万~23万5千円としている。月に1日も勤務しなかった場合は支給されない。


 ●住民監査請求:山県市議らが 県行政委員「非常勤の月額報酬過大」 /岐阜
        毎日新聞 2010年2月13日
 非常勤でありながら月ごとに一定額を支払っている県の行政委員の報酬について、寺町知正・山県市議ら105人が12日、過大な報酬支払いは地方自治法に反するとして、今後は月額制で支出させない措置をとるよう、住民監査請求を行った。

 県人事課によると、県には選挙管理、収用、労働など8の行政委員会があり、委員はいずれも非常勤。内水面漁業管理委員会だけが日額制。同委員会を除く7委員会の報酬は月額9万3000~21万8550円。
 報酬額は県の「各種委員等給与条例」で定められ、財政難で県職員の給与を削減した今年度から、県幹部と同様に月額7%を削減している。

 請求申し立てによると、04~09年の各委員の会議日数は、教育委員会83回▽選挙管理委員会84回▽人事委員会121回▽公安委員会206回▽監査委員104回▽労働委員会74回▽収用委員会72回。日数が少なく、実際の勤務量と照らし合わせると、平均日当は過大になると指摘。知事らに対し、月額制支給の取りやめを求めたほか、1日の会議で2万円を超えた支出は不当利得だとして、過去6年間の不当利得分の返還を求めている。

 寺町市議は「会議の数を考えると高額だ。財政難というなら、速やかに修正してほしい」と主張している。
 行政委員報酬を巡っては、大津地裁が昨年1月、滋賀県の月額制を地方自治法違反と判断した。【山田尚弘】


●非常勤行政委員の報酬、日当制に…静岡県
     2010年2月8日23時38分 読売新聞
 静岡県は新年度から、非常勤の行政委員の報酬をすべて月額制から日当制に切り替える。

 年間数日しか勤務しない委員もいるためで、報酬総額はほぼ半減され、年間約6000万円の歳出抑制につながる。

 県によると、非常勤委員への日当制の全面導入は都道府県で全国初となる。県によると、9行政委員の報酬は現在すべて月額制で、66人いる非常勤委員の報酬は月額5万9000~25万円。これを原則1日3万5400円とすることで、年間活動日数が平均65日と最多の公安委員で月約19万円、3日程度の内水面漁場管理委員は月1万円以下となる。監査、人事の常勤委員は月額制のままとする。

●住民訴訟:非常勤の県行政委「月額報酬は違法」 市民オンブズ、差し止め提訴 /山形
  毎日新聞 2010年1月16日 非常勤の県の行政委員の報酬が月額なのは、勤務日数に応じた報酬を定めた地方自治法違反だとして、市民オンブズマン県会議(外塚功・舟越範夫代表)は15日、行政3委員の月額での支払い差し止めを求める住民訴訟を山形地裁に起こした。

 訴状によるとオンブズ側は、選挙管理、教育、収用の3委員には08年度、月額で6万1500~19万2000円が支払われたが、会議は年6~16回で、時給に換算すると9万~14万円になると主張。勤務日数や実態にそぐわず、地方自治法違反だと主張している。

 オンブズ側は昨年10月、月額での支払い差し止めを求め県監査委員に住民監査請求したが、監査委員は昨年12月、請求を却下した。
 行政委員の報酬を巡っては、大津地裁が昨年1月「(月額制の)滋賀県条例は地方自治法違反」と判決。滋賀県は控訴したが、北海道や神奈川など全国8道府県で見直しの動きがある。【浅妻博之】

●市民団体の訴え却下 徳島県の委員報酬訴訟 徳島地裁
      サンケイ 2010.1.15
 徳島県が行政委員会の委員に月額制で報酬を支払うことに反対する市民団体メンバーが、日額制に条例改正しないことの違法確認を求めた訴訟の判決で、徳島地裁は15日、訴えが不適法だとして却下した。

 判決理由で黒野功久裁判長は「条例改正の権限は議会にあり、知事を相手取った訴訟は不適法」と判断した。

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