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11 行政委員会の報酬見直し〈神奈川県〉
《論点》
・行政委員会委員の報酬のあるべき姿
・見直し基準や考え方
1 これまでの経緯と現状
行政委員会の委員報酬は、ほとんどの都道府県において月額で支給されてきたが、平成21年1月22日に大津地裁で、月額報酬を支払うことは違法であるとの判決が出された。この判決を契機に、地方自治法の規定である日額支給の原則に基づき、これまで月額支給が慣例とされてきた行政委員の報酬について、見直しの動きが出てきた。
その後、平成22年4月27日には大阪高裁の控訴審判決で、一部の委員を除き月額報酬を支払うことは違法であるとの判決が出されたが、大津地裁の判決を契機に既に見直しに取り組んだ一部の都道府県では、平成22年度当初には日額支給への改正を行っている。
今回、各都道府県における行政委員会の報酬見直し状況について調査した結果を次のとおり報告する。
【行政委員会の報酬の支給状況】(平成22年4月現在)
(1) 全ての行政委員会において日額で支給・・・1団体
(2) 一部の例外を除き全ての行政委員会において日額で支給・・1団体
(3) 全ての行政委員会において日額と月額の併用で支給・・・2団体
(4) 一部の行政委員会において日額で支給・・・17団体
(5) 全ての行政委員会において月額で支給・・・26団体
【報酬見直しの事例】
一部、若しくは全ての行政委員会において日額で支給している21団体のうち、平成21年度中に見直しを行ったのは10団体(そのうち、1団体は以前から一部の行政委員会において日額支給を実施)であり、4団体が、全体的な見直しを実施した。
なお、一部の委員を日額とした団体では、収用委員会、海区漁業調整委員会及び内水面漁場管理委員会を日額とした団体が多く見られた。
【見直しの考え方の例】
(事例1)
地方自治法の趣旨から、月額支給とすることができる特別な事情がある場合を除き、原則日額支給とする。
なお、月額支給とする特別な事情がある行政委員は、次のとおりとする。
① 識見を有する者のうちから専任された非常勤の監査委員
現行の勤務形態として日数が多く、自己活動への制約が非常に大きいこと
② 公安委員会委員
現行の勤務形態として勤務日数が多く、職務内容等に照らし、職責が非常に重いこと
(事例2)
すべての行政委員会について、会議や出張等の活動に対する日額報酬を基本としつつ、日額報酬では評価し難い職務や職責について引き続き報酬の対象としていく必要があると判断し基礎報酬(月額)を支給する。
※ 日額報酬で評価し難い職務や職責の例
会議の事前準備や調査研究、自己研鑽、日常的な相談・調整への対応など日数の算出が困難な活動や、執行機関の委員としての継続した職責等
【見直しによる行革効果】
見直しによる予算の縮減等行革効果は、平成21年度中に見直しを行った団体の試算によると、平均34%の縮減となる。
【今後の見直し予定】
支給状況に関わらず、今後の見直し予定については、33団体から検討しているとの回答があり、内訳は以下のとおり。
平成22年度中に改正条例を施行する予定・・・・・・6団体
平成23年度中に改正条例を施行する予定・・・・・・2団体
見直しを検討しているが、時期については未定・・・25団体
※ 上記回答の他に、調査段階では検討をしていないが、「係争の結果や他県の動向を踏まえた上で検討を行う」との趣旨の回答が8団体からあった。
2 課題
【調査等を通じて明らかになった課題】
(1) 日額報酬の水準設定
日額化を行う上で、支給対象とする業務の範囲や会議出席以外に自宅等で行う調査や資料推敲等の業務、職務の性質、職責等をどのように報酬額に反映させるかが課題である。
(2) 各団体における見直し基準の設定、運用面における規程の整備
各団体において委員報酬を見直す際の見直しの基準及び考え方、運用面に関しての整備を図る必要がある。
(3) 司法判断への留意
住民監査請求等係争中のため、見直しの検討ができない、あるいは、見直しは検討しているが、司法判断も踏まえて見直しを行う予定の団体がある。
3 改革の方向性
行政委員の報酬については、地方自治法の趣旨から、月額支給とすることができる特別な事情がある場合を除き、原則日額支給とすべきである。
ただし、全国調査の結果、現段階では見直しを実施した都道府県はまだ少数で、地方自治法の規定についての捉え方も各県により様々であること、また、司法判断を踏まえて見直す予定としている団体があること等から、全国一律の基準をもって見直すことは困難である。
今後、既に見直しを実施した団体の見直し結果の内容、手法などを参考に、司法判断の状況等も踏まえつつ、各団体の実情に合わせ、各都道府県が自主的に見直しを進めていくこととする。 |