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てらまち・ねっと



 先日のニュースでは、原口総務相が、超高速ブロードバンド(大容量通信)網を全世帯に普及させる「光の道」構想を加速する狙いを表明したという。
 電話のユニバーサル(全国一律)サービスを光回線の光IP電話にも拡大して、固定電話からの移行を促すことで、加速させるという。

 幾つかのニュースを調べて、総務省の「ICT(情報通信技術)の利活用を阻む制度・規制等についての意見募集」のページを開いた(下記に抜粋・リンク)。
 「8月20日」必着期限で意見募集している。

 分かりやすい次のニュースを記録しておく
●「光の道」構想 固定電話廃止が焦点に(2010年7月20日 読売新聞)
●“全国で光回線のIP電話を”(NHK 7月19日 21時6分)
●光回線移行計画、NTTに提出要請へ (毎日放送 7月20日)

●総務省、ICTの利活用を阻む制度や規制についての意見募集を開始 (日経ニューメディア  [2010/07/16])

 もう少し調べてみると、NTT分割問題もからむこの方針にはソフトバンク孫社長がかかわっていると見られる。

 「NTTグループには大誤算? 原口総務相の経営形態見直し指示 」 (週間 ダイヤモンド)
 「ソフトバンク孫社長が仕掛ける 「NTTの構造分離」への疑問」(現代ビジネス)

 ともかく、インターネットの利用者としては、超高速ブロードバンド網が全世帯に普及することは大歓迎。

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●ICTの利活用を阻む制度・規制等についての意見募集
    報道資料 平成22年7月16日
 総務省は、「光の道」構想の実現に向け、ICT(※)の利活用を阻む制度・規制等について、本日から平成22年8月20日(金)までの間、意見募集を行います。
 ※ICT=Information and Communications Technology(情報通信技術)の略

1 趣旨
 総務省は、2015年頃を目途にすべての世帯でブロードバンドサービスを利用する「光の道」構想の実現に向けた検討を進めています。ブロードバンドサービス利用率の向上には、医療・教育・行政等のあらゆる分野において、豊富なアプリケーションやコンテンツが存在することが重要ですが、既存の制度・規制等がこれら分野におけるICTの利活用を阻んでいることが問題として指摘されています。

 このことを踏まえ、政府の「新成長戦略」(平成22年6月18日閣議決定)や「新たな情報通信技術戦略」(平成22年5月11日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部決定)において、ICTの利活用を阻む制度・規制等の徹底的な洗い出しを行い、それらの抜本的な見直しを図るため、「情報通信利活用促進一括化法(仮称)」を検討することが掲げられたところです(参考資料 参照)。

 ついては、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部における検討への貢献等を視野に入れつつ、今後見直しを検討することが必要と考えられるICTの利活用を阻む既存の制度・規制等について、意見募集を行います。

2 意見公募要領
(1)意見募集対象
 ・ 既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 ・ ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 ・ ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
 なお、意見募集対象は、総務省ホームページ(http://www.soumu.go.jp)の「報道資料」欄及び電子政府の総合窓口(http://www.e-gov.go.jp)の「パブリックコメント」欄に掲載するとともに、連絡先において供することとします。

(2)意見提出期限
  平成22年8月20日(金)17時(必着)
  (郵送の場合は、同日付けの消印まで有効)
 詳細については、別紙の意見公募要領 を御覧ください。

  意見公募要領
・・・
2 資料入手方法
意見募集対象については、準備が整い次第、電子政府の総合窓口[e-Gov](http://www.e-gov.go.jp)及び総務省ホームページ(http://www.soumu.go.jp)の「報道資料」欄に掲載するほか、連絡先において閲覧に供することとします。
・・・・


●「光の道」構想 固定電話廃止が焦点に
   (2010年7月20日 読売新聞
 原口総務相が、電話のユニバーサル(全国一律)サービスを光回線の光IP電話にも拡大する方針を示したのは、固定電話からの移行を促すことで、超高速ブロードバンド(大容量通信)網を全世帯に普及させる「光の道」構想を加速する狙いからだ。

 NTTが8月末までに総務省に示す固定電話の廃止時期が、構想実現に向け焦点となりそうだ。

 ピーク時に6000万件を超えた固定電話の加入者数は、昨年度末で4334万件まで減った。一方、光ファイバーなどのIP(インターネット・プロトコル)電話は2283万件と、6年間で4倍に増加し、固定とIPの逆転も予想される。

 固定電話網の廃止が決まり、代わって光IP電話がユニバーサルサービスとして安価で広く提供されれば、普及が一気に進む可能性がある。

 NTTは旧電電公社時代の資産である電話設備を独占的に保有しているため、固定電話網を維持するユニバーサルサービスの義務を負っている。だが、固定電話の加入者数が減り、設備の老朽化で維持コストは膨らんでいる。光回線に一本化されれば、NTTにとっても二重投資を避けられるメリットがあるはずだ。

 しかし、NTTの三浦惺(さとし)社長は、固定電話網の廃止時期について「利用者が一定数まで減った段階で考える」とし、明言を避けている。1985年の民営化後に2兆円を超す光回線への投資を行ってきたため、光IP電話にユニバーサルサービスを課される抵抗も根強い。

 NTTと「光の道」構想を掲げる総務省が歩み寄れなければ、NTTが圧倒的なシェア(占有率)を持つ光回線の他社への一層の開放や、光回線事業の分離に向けた議論が本格化する可能性がある。(水上嘉久)

●“全国で光回線のIP電話を”
     NHK 7月19日 21時6分

●光回線移行計画、NTTに提出要請へ
       20日09:34
 2015年までに全世帯がブロードバンドサービスを利用するという「光の道」構想の実現のため、原口総務大臣はNTTに対して、現在の銅線から光回線へ移行する計画を提出するよう要請する考えを示しました。

 これは、オーストラリアのシドニーを訪問中の原口総務大臣が記者団に対し明らかにしたものです。

 20日からの総務省の作業部会では、2015年までに全世帯でブロードバンドサービスの利用を実現するための具体策をつくることにしています。

 これについて原口総務大臣は、「まずは事業者であるNTT自身に『解』を一回求めるのが大事」だとして、NTTに対し、現在の銅線から光ファイバーへ移行する計画を作成させ、8月末までに提出を要請する方針です。

 また原口大臣は、光回線事業の分離案も含めて検討されているNTTの経営形態については、「ブロードバンドサービスが全世帯に100%提供できれば、どんな組織形態であろうが、国民からみて構わないと思っている」と述べて、NTTから提出される光回線への移行計画を踏まえたうえで、組織形態を検討すべきだと強調しました。

●総務省、ICTの利活用を阻む制度や規制についての意見募集を開始
   長谷川 博=日経ニューメディア 2010/07/16
 総務省は2010年7月16日、「光の道」構想の実現に向けて、ICTの利活用を阻む制度や規制について、同日から2010年8月20日までの間、意見募集を行うと発表した。今回の意見募集で対象とするのは、「既存の制度・規制などによってICT利活用が阻害されている事例・状況」「ICT利活用を阻害する制度・規制などの根拠」「ICT利活用を阻害する制度・規制などの見直しの方向性についての提案」の三つ。

 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)は、ICTの利活用を阻む制度と規制の抜本的な見直しを行うための新たな法律「情報通信利活用促進一括化法(仮称)」の策定に向けた検討を行うことになっている。今回の総務省の意見募集は、IT戦略本部への情報提供を目的とする。提出された意見を参考に、ICTの利活用を阻む制度・規制の洗い出しを進める。

 総務省は、2015年ごろをメドにすべての世帯でブロードバンドサービスを利用できる「光の道」構想の実現に向けた検討を進めている。ブロードバンドサービス利用率の向上には、医療・教育・行政などのあらゆる分野において豊富なアプリケーションやコンテンツが存在することが重要になるが、既存の制度・規制がこれらの分野におけるICTの利活用を阻んでいることが問題として指摘されている。

 総務省の原口一博大臣は2010年7月16日の会見で、「コンテナ型のデータセンターを造る際に建築基準法のネックになるなど、ICTの利活用に法律が追いついていない」と述べ、今回の意見募集の背景を説明した。なお総務省は、情報通信利活用促進一括化法の法案を国会に提出する時期について、「原口大臣は次期通常国会での提出を目指しており、事務方もそれに合わせたい」としている。


●NTTグループには大誤算? 原口総務相の経営形態見直し指示
    週間 ダイヤモンド
【第116回】 2010年3月12日 町田徹 [ジャーナリスト]

「原口一博総務大臣の態度は、絵に描いたような『君子豹変』だ。これでNTT労働組合の献金問題で嫌味を言われることもなくなるだろう。ただ、わずか半年で180度の方向転換をしたのだから、NTTグループにとっては大変な誤算のはず。かなり慌てているらしい」――。

 各方面を慮っているのではないかと疑いたくなるほど、新聞・テレビの主要メディアは報じようとしなかったが、原口総務大臣が3月9日の総務省3役会議で、光ファイバー網の全国整備を加速する「光の道構想」の早期取りまとめを指示したことが、賛否を巡って電気通信業界を二分する話題になっている。

 原口大臣にとって、多くの民主党の主要閣僚と同様に、野党時代からNTT労働組合は有力支持母体のひとつだ。それゆえ、どちらかといえば、議論ばかりが盛り上がり、四半世紀あまりにわたって本質的な進展のみられなかったNTTグループの分離分割論議などには冷ややかな政治家とみられてきた。ところが、今回、突然、その一般的なイメージとは正反対のニュアンスの「NTTの経営形態」見直し論議を伴う「光の道構想」のとりまとめを指示したのだ。

 喜びの色を隠せないのがソフトバンクだ。対するNTTは、努めて冷静を装っているように見受けられる。とはいえ、原口大臣が『基本的な方向性』を取りまとめる期限として指定した5月半ばへ向けて、電気通信行政から目が離せなくなりそうだ。

原口大臣がNTTの経営形態 再検討まで打ち出した事情
 今回の「光の道構想」の叩き台は、昨年暮れ公表の総務省の成長戦略(「原口ビジョン」)だ。同ビジョンは、2020年に全国の4900万世帯でブロードバンドサービスを利用できるようにして、それ以降、年率約3%という高いレベルで持続的な経済成長を実現しようという目標を掲げていた。

 原口大臣が3役会議に出した指示では、この目標年次を5年前倒して2015年とし、生産性の向上ペースをさらに速めようという点が新しい。

 そして、具体策として、(1)「光の道」の整備のため、NTTの経営形態の見直しも含めて、光ファイバーのアクセス網の整備施策を洗い直す、(2)「光の道」へのアクセス権という概念を新たに打ち出し、これを国民に保証するため、従来は固定の電話だったユニバーサルサービス(僻地であっても必ず提供するサービス)の対象や、確保方策(1番号当たり8円を利用者に負担してもらっているユニバーサルファンドが従来の基本方策)を再検討する、(3)「豊かな社会」を実現するため、ICT(情報通信技術)の利活用促進の一括法案を提言する――など3点を早急に検討することを指示した。この3点を、「光の道整備3法」としてパッケージの法整備を目指す案もあるという。

ちなみに、その検討の受け皿は、原口大臣が昨年10月に設置した「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」だ。ICTタスクフォースは、「過去の競争政策のレビュー部会」「電気通信市場の環境変化への対応検討部会」「国際競争力強化検討部会」「地球的課題検討部会」の4つの部会に分かれている。偶然だが、筆者は「過去の競争政策のレビュー部会」の構成員のひとりである。

 そして、この「光の道構想」の最も大きなポイントであり、原口大臣の指示としては意外と受け止められているのが、アクセス網の整備のために、あえてNTTの経営形態の再検討まで辞さないという強い決意を打ち出した点である。

 というのは、これによって、光ファイバーのアクセス網で圧倒的なシェアを持っているNTT東西2社からアクセス網を物理的(もしくは機能的)に別の企業として(あるいは特殊な隔壁のある社内の別組織として)分離したうえで、場合によっては他社からの出資を募り、呉越同舟で民間の資本力を結集したうえでアクセス網の整備を加速するプランが現実味を帯びてくるからだ。この点を、多くの学者や業界関係者、官僚が「肯定的なサプライズ」と受け止めた。
 
・・・・(略)・・・・
 もともと竹中平蔵総務大臣時代に、政府と与党・自民党の合意として、2010年度中に経営形態見直しを議論したうえで、結論を出すことにはなっていたものの、昨秋の民主党を中心とした連立政権の誕生によって、この合意は白紙撤回になったとされていたからである。それだけに、今回の原口大臣の指示は、NTTグループにとって大きな誤算という。

 そんな中で、同グループ内では、原口大臣の指示のうち、(1)のアクセス網の整備論や経営形態問題を論じるよりも、(3)のICTの利活用の一括振興の方が重要との意見が強いようだ。

 というのは、光ファイバーなどのインフラ上で利用される端末やアプリケーション、コンテンツの総合的な戦略がないと、全体として需要を喚起することができず、光ファイバー網に対する投資コストすら回収できないのではないかとの危機感をもっているからだ。このため、今後は「建設的なのは、利活用論議だ」と訴えていく可能性が大きい。確かに利活用喚起の重要性を否定する議論が多いとは考えにくい。

 ライバル各社には、鳩山由紀夫内閣の支持率の低下が著しく、政権の先行きに不透明感がないとは言えないことから、NTTにとって、誤算とはいえ、本音ではそれほど大きなショックを受けていないのではないかとシニカルに分析する向きも存在した。

 NTTと対照的に、競争事業者では、これまで「インフラ整備はコストが回収できず、株主への背信行為だ」として、光ファイバー網整備を他社に依存する方針を掲げて来たソフトバンクが「歓迎すべき議論だ」と喜びを隠せない様子を見せている。

 ただ、これと別に、関係者の間では、具体的な光ファイバー網の整備手法として、改めて国営の光ファイバー網整備公団を設置する案や、投資コストを政府保証債で調達するといった賢明とは言い難い選択を推す向きもあるという。インフラのフリーライダーに徹することによって、コストをかけずに収益につなげようという発想が見え隠れする手法である。

 しかし、コスト負担の肩代わりを強いられかねない国家財政の方は、2010年度に税収が37兆円しかないのに、歳出規模で90兆円を超える予算を組んでいる最中。いずれ納税者に重いつけが回るのが確実な中では、「事業者としてあまりにも無責任で身勝手な発想だ。負担するなら、国にとっては無謀な行為としか言いようがない」と批判の声も少なくない。

 いったい、どれぐらい実現性のある光の道構想が構築されるのか。しばらくは通信政策から目が離せなくなりそうだ。


●ソフトバンク孫社長が仕掛ける 「NTTの構造分離」への疑問
   現代ビジネス2010年04月27日(火) 町田 徹

    原口総務相の「光の道」構想を礼賛
 5年後に国内の4900万世帯(事業所)がすべて超高速ブロードバンドを利用する「光の道」構想は、原口一博総務大臣が日本の国際競争力の維持のため、肝煎りで実現を目指す国家戦略だ。

 実は私も、この構想の具体化を議論する同大臣のタスクフォースのメンバーを務めている。そのタスクフォースの公開ヒアリングで、耳を疑いたくなるようなプランを提案する人物が現れた。

 日本を代表するベンチャー企業の経営者、ソフトバンクの孫正義社長がその人である。

 どう考えても帳尻のあわない作戦を前提に、光ファイバー網を保有する日本電信電話(NTT)グループを分割すれば、未整備の部分の整備も進み、自動的に「光の道」構想が実現すると胸を張ったのだ。

 孫社長の主張の矛盾とは何か。そんな発言をした彼の本意はいったい、どこにあるのだろうか。

「政府案を指示」と絶賛
 問題のヒアリングは、4月20日に、電気通信事業者6社と業界団体1団体を招致して、東京・霞が関の総務省の地下2階にある「大講堂」で開催された。

 孫ソフトバンク社長は、5番目に登場。緊張のせいか、あの人なつっこい笑顔はなく、やや堅い表情で、意見陳述を開始した。

 そして開口一番、「政府の構想を支持したい」と声を張り上げて、まだほんの策定段階の「光の道」構想を全面的に支持する姿勢を鮮明にした。

・・・・(略)・・・・

コンクリートの道から光の道へ」と説いた今年1月の首相の施政方針演説や、原口大臣が3月に検討を指示した「光の道」構想を高く評価する発言を繰り返した。

・・・・(略)・・・・

孫社長は「光(ファイバー網敷設)のコストは安い、(だからNTTの光のアクセス部門を)構造分離すべきだ。(分離しても)経営は成り立つ。そうすれば、自然に豊かな国民生活を実現できる」と主張したのだ。

光ファイバー網の維持費には触れないまま
 さらに、孫社長は畳み掛けるかのように、多数の電話線が架けられている電柱の写真を聴衆に見せた。次いで、ほんの数本のケーブルが懸架されているだけの電柱の写真を示して、光ファイバー網は効率的で、飛躍的に伝送能力が向上すると言い張った。また、銅線と違い、ガラス製の光ファイバーは腐食しないから、寿命が長いとも強調した。

孫社長が説明に使った資料 こうした論証により、光ファイバーは投資効率が高いとのイメージを刷り込もうと試みたのである。

 さらに、孫社長は、2本の棒グラフが並ぶ16ページの図表に話を切り替えた。(右図)グラフの左側を指して、

「メタルの、10年で維持費だけで3.9兆円です」

 と、説明。それから右側の短い棒に話を移して、

「追加で、(残りのメタル回線を)100%光の芯線に置き換えるのに必要なコストは、たった2.5兆円です。つまり、(メタル回線の)維持費だけで、(必要な光ファイバー網の)モノが買える」

 と、自信たっぷりの表情で請け負って見せたのだ。

 しかし、この議論にはムリがある。

 なぜならば、孫社長の説明は、メタル回線の維持費(3.9兆円)と今後必要になる投資額(2.5兆円)の2つの数字の比較に過ぎないからだ。その主張が正しいと裏付けるためには、光ファイバー網の維持費がいくら必要かを示さなければいけない。その説明がすっぽり抜け落ちていたからである。

 そして、ヒアリングが進むに連れて、孫社長の論理は、どんどん破綻の色を濃くしていった。

 その第一は、孫社長が、光ファイバー網の整備について「今後5年間で早期に一括して行う必要がある、さもないとコストが嵩む」と説明した点である。

 前述のように、孫社長は、メタルの回線維持コストが不要になり、1年間に3900億円、10年経過後に3.9兆円を捻出できると述べた。しかし、5年間で投資を終えるというならば、その半分に過ぎない。足りない分は借金でもしないと賄えないのである。孫社長は、そういう肝心の点を無視して、机上の空論を振り回していたのである。

 さらに、孫社長はこの日、投資や工事を前倒しすることによって、NTTグループが従業員の雇用を維持できると述べた。

 実は、メタル回線にしろ、光ファイバー網にしろ、維持コストの中で大きな位置を占めているのは、補修要員の人件費だ。これを減らさないと、メタル回線にしろ、光ファイバー網にしろ、維持費の抜本的な削減などできない。雇用確保が目的なら維持費は削減できないのである。

 孫社長のこうした矛盾だらけの説明は、一般傍聴席からも疑問の声があがっていた。筆者はヒアリングの終了後、複数の電気通信事業者から「孫社長の説明はまるでペテンだ」との手厳しい批判を聞かされる始末だった。

 話は前後するが、タスクフォースのメンバーある筆者はヒアリングの質疑応答で、光ファイバー網の維持費を質したが、孫社長は回答を用意していなかった。「後ほど根拠を示す」と述べて、その場をしのいだのである。

 翌日、事務局経由で筆者に届いた資料に盛り込まれた数値は、その出典が示されていないばかりか、「検証中の数値であり、今後修正の可能性がある」というものに過ぎなかった

・・・・(略)・・・・

 また、孫社長が主張したように、NTTグループが分離されて市場競争がこれまで以上に活発化し、光ファイバー網が廉価で利用できるようになれば、ソフトバンクも含めて、様々な企業や利用者が恩典を受けられるのは事実だろう。

 しかし、だからと言って、公式な政府の会議の場で、今回のように出典を明示できず、検証も不十分な数値を持ち出して、ライバルの企業分割を迫ったり、政府に国家戦略の構築を要求したりするのは、賢明な行為とは言えない。むしろ、招致した原口大臣だけでなく、国民の信頼や期待を裏切る行為である。 

 孫社長はもっと冷静かつ論理的な議論を展開すべきだった。猛省を促したい。 
 


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