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てらまち・ねっと



 アスベストによる健康被害は深刻。それに対して、最高裁が国の責任を認定する判決を二つ出した。 
 判決の基本は、「国の規制権限は技術の進歩や医学の知識に合わせて適切に行使されるべきだ」。
 とはいえ、当然のことがなされないのが常。
 多分、今でも、違う分野では、同様のことが続いているのだろう。

 そんなことも思いつつ、最高裁判決の要点と全文にリンクし、一部を抜粋しておく。

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●石綿被害、国の責任認定 大阪・泉南訴訟で最高裁
       中日 014年10月10日 朝刊

 大阪・泉南地域のアスベスト(石綿)工場で働き肺がんや中皮腫などになった元従業員と遺族ら計八十九人が、国に計約十二億円の損害賠償を求めた二件の集団訴訟の上告審判決で、最高裁第一小法廷(白木勇裁判長)は九日、「排気装置の設置を義務付ける粉じん対策が遅すぎた」と判断。アスベストによる健康被害で最高裁として初めて、国の賠償責任を認めた。

 判決は五人の裁判官全員一致の意見。全国の建設労働者と遺族ら七百人余りが国や建材メーカーに計約二百四十五億円の賠償を求めている「建設アスベスト訴訟」の審理や、被害救済に向けた国の施策にも影響を与えそうだ。

 争点は(1)排気装置の設置義務付け(2)粉じん濃度の規制強化(3)防じんマスク着用の義務化-の三点。最高裁はこのうち、(1)についてのみ違法性を認めた。

 第一小法廷は、石綿の危険性の医学的知識が確立した一九五八年の時点で、石綿工場の労働者にアスベスト疾患の一つの「石綿肺」が深刻になっていたと指摘。「工場への排気装置設置が技術的に可能で、国は罰則付きで義務付けるべきだった」とし、国が七一年に設置を義務付けたのは遅すぎたとした。

 原告は(2)と(3)でも国の対策が不十分だったと主張したが、第一小法廷は「濃度規制は専門的知見に基づいて行われており、適法だった」「マスクは工場での補助的な対策手段で、早期に着用を義務付けなかったことが違法とはいえない」と退けた。

 訴訟は一陣と二陣があり、国の責任については二審の大阪高裁判決で判断が分かれていた。この日の最高裁判決では、二陣の原告五十五人のうち五十四人に対する約三億三千万円の賠償が確定。一陣の原告三十四人のうち二十八人は、あらためて賠償額を算定するため審理を高裁に差し戻した。

●泉南アスベスト訴訟、国の賠償責任認める 最高裁
       日経 2014/10/9
 大阪・泉南地域に集中していた紡績工場でアスベスト(石綿)を吸い、肺がんなどを発症したとして、元従業員らが国に損害賠償を求めた2件の集団訴訟の上告審判決が9日、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)であった。同小法廷は「排気装置の設置義務付けが遅れたのは違法」として、国の賠償責任を認める判決を言い渡した。

勝訴の判決を受け記者会見する泉南アスベスト訴訟の原告団メンバー (9日午後、衆院第1議員会館)
 全国のアスベスト訴訟で、国の責任を認める最高裁判決は初めて。同時期に他地域のアスベスト工場で働いていた労働者にも、賠償の道が開かれる可能性が高まった。2件の訴訟は国の責任の有無を巡って高裁の結論が分かれていたが、同小法廷は統一判断を示した。

 判決理由で同小法廷は、国の戦後の実態調査などの結果、アスベストによる健康被害は「1958年ごろには深刻だと判明していた」と指摘。その上で「できる限り速やかに、罰則をもって工場内に排気装置の設置を義務付け、普及を図るべきだった」と判断し、国の違法を認定した。5人の裁判官の全員一致。

 泉南アスベスト訴訟は提訴時期が異なる2つの原告団によって争われてきた。今回の最高裁判決で、一、二審で原告側が勝訴していた「第2陣訴訟」については、国に約3億3千万円の賠償を命じた大阪高裁判決が確定。二審で原告が敗訴した「第1陣訴訟」については、改めて賠償額を算定するため審理を同高裁に差し戻した。

 原告側が併せて主張していた粉じん濃度の規制と、防じんマスクの着用義務付けについては、最高裁は国の責任を認めず、原告89人のうち7人は敗訴が確定した。

 塩崎恭久厚生労働相は「国の責任が認められたことを重く受け止めている。原告の方には誠に申し訳なく、判決に従って適切に対応したい」などとする談話を出した。

●アスベスト健康被害 最高裁が国の責任認める
        NHK 10月9日
かつて大阪南部にあったアスベストを扱う工場で働き、健康被害を受けた人たちが国を訴えた裁判で、最高裁判所は工場に排気装置の設置を義務づける国の規制が遅かったと判断し、およそ3億3千万円の賠償を命じる判決を言い渡しました。
アスベストによる健康被害で最高裁が国の責任を認めたのは初めてです。

かつて大阪南部の泉南地域にあったアスベストを扱う工場で働いていた人たちは、肺がんなどになったのは国の規制が遅れたためだと主張して、1陣と2陣の2つの裁判を起こしていました。
この中では国による段階的な規制が遅かったかどうかが大きな争点になりましたが、1陣と2陣で2審の判断が分かれたため、最高裁判所で審理が行われていました。

9日の判決で、最高裁判所第1小法廷の白木勇裁判長は「国の規制権限は技術の進歩や医学の知識に合わせて適切に行使されるべきだ」と指摘しました。

そのうえで最も有効な対策とされる排気装置の設置を昭和46年になって義務づけたことについて「国は罰則のない行政指導で排気装置の設置を促した昭和33年にはアスベストの被害が深刻なことがわかっていたはずで、その時点で規制権限を行使せず設置を義務づけなかったのは違法だ」と判断して、国の規制が遅かったと結論づけました。

そして2陣訴訟の原告のうち54人について、およそ3億3千万円の賠償を国に命じたほか、1陣訴訟の原告28人について、2審の敗訴を取り消し、賠償額を算定するよう2審に命じました。

この結果、国の賠償額は今後さらに増える見通しです。
深刻な健康被害が広がったアスベストの問題で、最高裁が国の責任を認めたのは初めてで、被害者の救済に向けて国は対応を迫られるとみられます。

原告「もう少し早く出ていれば」
大阪の泉南市役所には、原告や弁護士などおよそ40人が集まり、判決を待ちました。
そして連絡を受けた弁護士が最高裁が国の責任を認める判決を言い渡したことを伝えると、大きな拍手が上がりました。
原告団の共同代表を務める蓑田努さんは「原告のすべての主張が認められたわけではないので中途半端だとは思いますが、初めて国の責任を認め、嬉しく思います」と話していました。

また、原告の原まゆみさんは「去年からは毎晩、息苦しくなり本当に辛いです。これまでに多くの人が『息が苦しい』と言って亡くなっていくのを見てきました。判決を聞いてとても嬉しいですが、一方で、もう少し早く出ていれば、私たちと一緒に喜べる人がもっといただろうと思うと残念です」と話していました。

さらに、父親を亡くした山田哲也さんは「父は帰ってきませんが、天国から私たちが喜んでいる姿を見て少しは救われたのかなと思います。これまでの国の対応には怒りを持っていて、今後、責任を追及したい」と話していました。
原告の弁護団の村松昭夫副団長は、会見で「アスベストの健康被害に対する国の責任を初めて認めた点は評価できる。今回の最高裁の判断は各地で行われているほかのアスベストを巡る裁判にとっても重要な判断の枠組みを確認したと言える」と述べました。

弁護団はこのあと国に対し、原告への謝罪を求めるほか、賠償額を算定するため2審に審理のやり直しを命じた1陣の裁判についても「1日も早い解決が必要だ」として、国に責任を認めて和解に応じるよう申し入れることにしています。

厚生労働大臣「責任重く受け止める」
塩崎厚生労働大臣は記者団に対し、「判決が国の責任を認めたことを重く受け止めており、原告には誠に申し訳なく思う。判決に従って対応したい。今後、アスベストの健康被害を防止するための対策を徹底していく」と述べました。

●石綿被害の救済 労災認定の難しさ、対象外被害者の支給額はわずか…運用に課題
         産経 2014.10.9
 アスベスト(石綿)被害をめぐり、最高裁が国の賠償責任を初めて認める判決を言い渡した泉南アスベスト訴訟。石綿被害の救済は、兵庫県尼崎市の旧クボタ工場周辺で多くの住民の中皮腫発症が明らかになった平成17年以降、本格化した。元労働者の労災認定件数が増え、労災対象外の工場周辺住民らへの補償も進む。ただ、患者団体などからは運用面での課題を指摘する声も上がっている。

 厚生労働省によると、石綿の影響による肺がんと中皮腫の労災認定件数は、16年度はそれぞれ58件と128件だったが、17年度には213件と502件に急増。ここ5年は肺がんが約380~480件、中皮腫が約500~540件で推移している。

 ところが、石綿関連の疾病は20~60年の潜伏期間を経て発症するため、労災認定を受ける際の職歴の証明が難しい。かつての勤め先が現存しなかったり、年金記録が見つからなかったりした場合、証明書類がそろえられず、労働基準監督署に不支給とされた元労働者が訴訟や審査請求を起こすケースも少なくない。

 一方、労災対象にならない被害者を救済する「石綿健康被害救済法」(18年施行)の認定者数は、今年8月末現在で約9800人に上っている。だが、同じ遺族年金でも遺族年金を含めて数千万円を受け取れる労災認定者に比べると、原則300万円の支給額は圧倒的に少ない。

 石綿関連疾病の患者らでつくる「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」の古川和子会長は「同じ病気で救済に格差が生じる現状はおかしい。制度を見直すべきだ」と話している。

●「クボタショック」機に全国で相次ぐ訴訟 全国14訴訟、原告総数は800人超
        産経 2014.10.9
石綿の健康被害をめぐっては、平成17年に兵庫県尼崎市の大手機械メーカー「クボタ」の旧神崎工場や周辺で被害が明らかになったいわゆる「クボタショック」をきっかけに、全国で訴訟が相次いだ。

 泉南地域の元工場労働者が起こした2訴訟を含め、全国の主な14訴訟の原告総数は800人超、請求総額は265億円超に上る。アスベスト訴訟は、泉南訴訟のように工場内での暴露による「屋内型」、建設・解体工事現場での暴露による「屋外型」、工場の周辺住民らが賠償を求めている「環境型」に大別される。

 中でも、元建設労働者が6地裁に計9訴訟を起こした屋外型の建設アスベスト訴訟は、原告数730人(今年5月15日現在)と最大規模だ。

 このうち、元労働者と遺族が国と建材メーカーに約118億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は24年12月、「粉塵(ふんじん)防止対策は実効性を欠き、不十分だった」として国の賠償責任を一部認定。計約10億6千万円を支払うよう命じ、メーカー側への請求は退けた。

 一方で、同年5月の横浜地裁判決は原告側の請求を全面的に退けており、判断が分かれている。この2訴訟は東京高裁に係属中だ。

 環境型では、工場周辺住民の遺族がクボタと国に約7900万円の損害賠償を求めた訴訟で神戸地裁が同年8月、クボタに約3195万円の賠償を命じ、国への請求は棄却。大阪高裁も支持し原告側が上告中だ。

最高裁判例
事件番号  平成23(受)2455 事件名  損害賠償請求事件
裁判年月日  平成26年10月9日 法廷名  最高裁判所第一小法廷  判決
原審裁判所名  大阪高等裁判所 原審事件番号  平成22(ネ)2031 原審裁判年月日  平成23年8月25日

判示事項  労働大臣が石綿製品の製造等を行う工場又は作業場における石綿関連疾患の発生防止のために労働基準法(昭和47年法律第57号による改正前のもの)に基づく省令制定権限を行使しなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえないとした原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨  次の(1)~(4)など判示の事情の下では,労働大臣が昭和46年4月28日まで労働基準法(昭和47年法律第57号による改正前のもの)に基づく省令制定権限を行使して罰則をもって局所排気装置を設置することを義務付けなかったことにつき,石綿製品の製造等を行う工場又は作業場の実情に応じて有効に機能する局所排気装置を設置し得るだけの実用的な工学的知見が確立していなかったことを理由に上記の省令制定権限の不行使が国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえないとした原審の判断には,違法がある。

(1) 昭和33年頃には,上記の工場等の労働者の石綿肺り患の実情が相当深刻なものであることが明らかとなっていた。
(2) 昭和33年頃,局所排気装置の設置は石綿工場における有効な粉じん防止策であり,労働省は,昭和30年代から通達を発出するなどしてその普及を図っていたが,上記の工場等における局所排気装置による粉じん対策は進まなかった。
(3) 昭和32年までには,我が国において局所排気装置の設置等に関する実用的な知識及び技術の普及が進み,局所排気装置の製作等を行う業者及び局所排気装置を設置する工場等も一定数存在していた。
(4) 昭和32年9月,労働省の委託研究の成果として,局所排気に関するまとまった技術書が発行され,労働省労働基準局長が,昭和33年5月26日付け通達により,石綿に関する作業につき局所排気装置の設置の促進を一般的な形で指示し,その際には上記技術書を参照することとした。

 ★ 全文
15-16ページ
(3) 以上の諸点に照らすと,労働大臣は,昭和33年頃以降,石綿工場に局所
排気装置を設置することの義務付けが可能となった段階で,できる限り速やかに,
旧労基法に基づく省令制定権限を適切に行使し,罰則をもって上記の義務付けを行
って局所排気装置の普及を図るべきであったということができる。そして,昭和3
3年には,局所排気装置の設置等に関する実用的な知識及び技術が相当程度普及し
て石綿工場において有効に機能する局所排気装置を設置することが可能となり,石
綿工場に局所排気装置を設置することを義務付けるために必要な実用性のある技術
的知見が存在するに至っていたものと解するのが相当である。

そうすると,昭和33年当時,労働大臣が,旧労基法に基づく省令制定権限を行
使して石綿工場に局所排気装置を設置することを義務付けることが可能であったと
解する余地があり,そうであるとすれば,同年以降,労働大臣が上記省令制定権限
を行使しなかったことが,国家賠償法1条1項の適用上違法となる余地があること
になる。

4 以上と異なる原審の前記第1の3(1)の判断には,判決に影響を及ぼすこと
が明らかな法令の違反がある。論旨は理由がある。

20ページ
第6 結論
以上のとおりであるから,原判決中,上告人X1ら及び同X7以外のその余の上
告人らに関する部分並びに同X7の請求のうち固有の損害の賠償請求に関する部分
を除く部分は破棄を免れず,上記破棄部分については,更に審理を尽くさせるた
め,本件を原審に差し戻すべきであるが,上告人X1らの上告は棄却すべきであ
る。

なお,上告人X7の固有の損害の賠償請求に関する上告については,上告受理申
立て理由が上告受理の決定において排除されたので,棄却することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

 ●最高裁判例
事件番号  平成26(受)771 事件名  損害賠償請求事件
裁判年月日  平成26年10月9日 法廷名  最高裁判所第一小法廷 判決
原審裁判所名  大阪高等裁判所  原審事件番号  平成24(ネ)1796  原審裁判年月日  平成25年12月25日
判示事項  
裁判要旨  労働大臣が石綿製品の製造を行う工場等における石綿関連疾患の発生防止のために労働基準法(昭和47年法律第57号による改正前のもの)に基づく省令制定権限を行使しなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法であるとされた事例

 ★全文
19-20ページ
(6) 以上の諸点に照らすと,労働大臣は,石綿肺の医学的知見が確立した昭和
33年3月31日頃以降,石綿工場に局所排気装置を設置することの義務付けが可
能となった段階で,できる限り速やかに,旧労基法に基づく省令制定権限を適切に
行使し,罰則をもって上記の義務付けを行って局所排気装置の普及を図るべきであ
ったということができる。

そして,昭和33年には,局所排気装置の設置等に関す
る実用的な知識及び技術が相当程度普及して石綿工場において有効に機能する局所
排気装置を設置することが可能となり,石綿工場に局所排気装置を設置することを
義務付けるために必要な実用性のある技術的知見が存在するに至っていたものと解
するのが相当である。また,昭和33年当時,石綿工場において粉じん濃度を測定
することができる技術及び有用な粉じん濃度の評価指標が存在しており,局所排気
装置の性能要件を設定することも可能であったというべきである。

そうすると,昭
和33年通達が発出された同年5月26日には,労働大臣は省令制定権限を行使し
て石綿工場に局所排気装置を設置することを義務付けることが可能であったという
ことができる。

(7) 本件における以上の事情を総合すると,労働大臣は,昭和33年5月26
日には,旧労基法に基づく省令制定権限を行使して,罰則をもって石綿工場に局所
排気装置を設置することを義務付けるべきであったのであり,旧特化則が制定され
た昭和46年4月28日まで,労働大臣が旧労基法に基づく上記省令制定権限を行
使しなかったことは,旧労基法の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,著し
く合理性を欠くものであって,国家賠償法1条1項の適用上違法であるというべき
である。これと同旨の原審の前記第1の3(1)の判断は,正当として是認すること
ができる。論旨は採用することができない。

24ページ
第4 結論
以上によれば,原判決中,被上告人X1に関する上告人敗訴部分は破棄を免れ
ず,同部分につき,同被上告人の請求を棄却した第1審判決は正当であるから,同
被上告人の控訴を棄却すべきであるが,上告人のその余の上告は棄却すべきであ
る。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。


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