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てらまち・ねっと



 昨日の最高裁大法廷の一票の格差訴訟の判決、「もしかして」と「選挙無効」をわずかに期待したけれど、やはり、無理な話だった。
 そこで、判決の全文を見てみた。61頁4万字以上と長かったので、1/3程度に抜粋してブログに記録した。
 判決文2から7ページの「2 原審の適法に確定した事実関係等の概要」は省略。
 15人の裁判官のうち11人の賛成で決まった判決の全文の抜粋、裁判官ごとの賛成意見(6人)反対意見(4人)などは本論部分は略し、結論など区切りだけブログにとどめた。
 基本はリンク先の最高裁のウェブサイトにどうぞ。

 ともかく、最高裁の気おくれしたスタンスが目立った。多数意見としての判決や、裁判官個々の意見を見ていくと、なんと国会に遠慮しているのか・・・そんな印象。最高裁webから。
★《裁判要旨 平成25年7月21日施行の参議院議員通常選挙当時において,公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の下で,選挙区間における投票価値の不均衡は平成24年法律第94号による改正後も違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったが,上記選挙までの間に更に上記規定の改正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超えるものとはいえず,上記規定が憲法に違反するに至っていたということはできない》

 2014年11月27日中日新聞社説は端的。
★《「違憲」とまで言い切れなかったのは、前回の大法廷判決から選挙まで約九カ月しかなかった。その「時間」を配慮したからだ。これで衆院も参院も「違憲状態」という異常事態となった。だが、果たして立法府はその自覚があるだろうか。・・今回の判決では「違憲」と考えた裁判官は十五人のうち四人いた。そのうち一人は「選挙無効」だった。その重みを感じるべきである。それでも立法府の腰が重いのなら、司法府も遠慮することなく、ずばり「時間切れ」の宣言をしたらどうか。》

 ところで、きょう午前は、議会の定例会の開会日の本会議。明日12時は一般質問の通告期限。
 なお、gooブログから通知された昨日11月26日のアクセス数は、「閲覧数5834」「訪問者数1261」だった。

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●昨年の参院選「違憲状態」 最高裁判決
        中日 2014年11月27日
 「一票の格差」が最大四・七七倍だった昨年七月の参院選は一票の価値が不平等で憲法違反だとして、弁護士の二グループが選挙無効(やり直し)を求めた十六件の訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は二十六日、違憲状態だったとする判断を示した。選挙無効の請求は退けたが、一人が個別意見の中で、参院選訴訟として初めて「無効」に踏み込んだ。参院選をめぐる違憲状態判決は三回目。

 一審の高裁・支部で三件の違憲判決が出ており、このうち一件は選挙無効も認めたが、大法廷は、二〇一六年選挙までに抜本改革するとした国会の取り組みを考慮し、違憲判断を回避した。その上で、前回大法廷判決に続き、都道府県単位の選挙区割りの見直しを求め、国会に抜本改革の着実な実施を迫った。

 判決は、十五人の裁判官のうち十一人の多数意見。うち六人は、抜本改革をしないまま一六年選挙を実施した場合は、次回判決では違憲判断もありうると示唆する補足意見を述べた。

 残りの四人は「違憲」との反対意見。このうち山本庸幸(つねゆき)裁判官は「議員一人当たりの有権者数が少ない選挙区については即時、無効とすべきだ」とした。

 昨年七月の参院選は、格差が最大五・〇〇倍だった一〇年選挙をめぐる一二年の前回大法廷判決が違憲状態だったため、定数を四増四減して行われた。格差は多少、改善されたが五倍前後で推移した。

 参院は制度の抜本改革について、一三年選挙では見送ったものの、一六年選挙までに行うとしている。今回の判決はこれを評価し、「単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、都道府県単位の選挙区設定となっている現行方式を改めるなど、できるだけ速やかに不平等状態を解消する必要がある」と付言した。

◆「次は違憲」改革迫る
 <解説> 参院選一票の格差訴訟の最高裁判決は前回判決に続き「違憲状態」の警告を国会に示した。二〇一六年選挙までに抜本的な是正に取り組むことを前提に国会の裁量を尊重はしたが、約束が果たされなければ次は違憲判決、という最後通告に近い厳しい判断だ。

 参院は三年ごとに半数を改選する仕組みで、有権者が少ない選挙区にも最低二議席を割り当てなければならず、格差が縮まりにくいという特有の事情がある。このため衆院より寛容な「五倍程度の格差なら合憲」との見方が国会に浸透し、司法もこれを容認してきた。

 しかし近年は衆参のねじれで参院の役割が重くなる事態もあり、司法が投票価値の平等をより厳格に捉える傾向にある。「五倍なら合憲」とみられていた判決相場は変わり、五・〇〇倍の一〇年選挙も、四・七七倍の一三年選挙も憲法違反の不平等選挙と判断された。

 衆院、参院がいずれも「違憲状態」という異常な国会で、抜本改革に向けた議論は一向に進まない。今回、十五裁判官中の一人とはいえ、初めて「無効」の意見表明があったことは、司法の忍耐が限界を超えつつあることを端的に示している。

 最高裁が、司法と立法府の関係を配慮したぎりぎりの表現で選挙制度改革を求めているのは明白だ。二年後の参院選までに都道府県単位を基本とする選挙区割りを変えられるか。重い課題が突き付けられた。 (共同・川上宏)

 <参院選 「一票の格差」> 議員1人当たりの有権者数が選挙区ごとに異なるため、一票の価値に格差が生じる問題。衆議院に比べて参議院は定数が少なく、3年ごとの半数改選のため各選挙区の定数は必ず偶数になり、格差が拡大しやすい。訴訟では、法の下の平等を定めた憲法に違反する著しい不平等が生じている場合は「違憲状態」、さらに格差是正に必要な期間が過ぎ国会の裁量権の限界を超えていれば「違憲」、選挙をやり直しても公益を著しく害さないと判断すれば「無効」の判決になる。
判決概要
 事件番号 平成26(行ツ)78 事件名 選挙無効請求事件 裁判年月日 平成26年11月26日 法廷名 最高裁判所大法廷
 裁判種別 判決 結果 破棄自判
 原審裁判所名 広島高等裁判所 岡山支部 原審事件番号 平成25(行ケ)1 原審裁判年月日 平成25年11月28日

裁判要旨 平成25年7月21日施行の参議院議員通常選挙当時において,公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の下で,選挙区間における投票価値の不均衡は平成24年法律第94号による改正後も違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったが,上記選挙までの間に更に上記規定の改正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超えるものとはいえず,上記規定が憲法に違反するに至っていたということはできない

判決全文
 平成26年(行ツ)第78号,第79号 選挙無効請求事件
 平成26年11月26日 大法廷判決
 主 文
 原審各判決を破棄する。
 被上告人らの請求をいずれも棄却する。
 訴訟の総費用は被上告人らの負担とする。

 理 由
上告代理人都築政則ほかの各上告理由について
1 本件は,平成25年7月21日施行の参議院議員通常選挙(以下「本件選
挙」という。)について,岡山県選挙区の選挙人である被上告人らが,公職選挙法
14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定(以下,数次の
改正の前後を通じ,平成6年法律第2号による改正前の別表第2を含め,「定数配
分規定」という。)は憲法に違反し無効であるから,これに基づき施行された本件
選挙の上記選挙区における選挙も無効であると主張して提起した選挙無効訴訟であ
る。

2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
・・・・・・(略)・・・
平成25年7月21日,本件定数配分規定の下での初めての通常選挙として,本- 7 -
件選挙が施行された。本件選挙当時の選挙区間の最大較差は,4.77倍であっ
た。

(5) 本件選挙後の事情についてみると,平成25年9月,参議院において本件
選挙後に改めて選挙制度の改革に関する検討会が開かれてその下に選挙制度協議会
が設置され,同検討会において,同27年中の公職選挙法改正の成立を目指すこと
が確認されるとともに,同協議会において,同月以降おおむね月数回ずつ有識者等
からの意見や説明の聴取をした上で協議が行われ,同26年4月には選挙制度の仕
組みの見直しを内容とする具体的な改正案として座長案が示され,その後に同案の
見直し案も示された。これらの案は,基本的には,人口の少ない一定数の選挙区を
隣接区と合区してその定数を削減し,人口の多い一定数の選挙区の定数を増やして
選挙区間の最大較差を大幅に縮小するというものであるところ,同協議会におい
て,同年5月以降,上記の案や参議院の各会派の提案等をめぐり検討と協議が行わ
れている(上記各会派の提案の中には,上記の案を基礎として合区の範囲等に修正
を加える提案のほか,都道府県に代えてより広域の選挙区の単位を新たに創設する
提案等が含まれている。)。

3 憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば,議員の選出における各選挙人の
投票の有する影響力の平等,すなわち投票価値の平等を要求していると解される。
しかしながら,憲法は,国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させるた
めに選挙制度をどのような制度にするかの決定を国会の裁量に委ねているのである
から,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する唯一,絶対の基準となるも
のではなく,国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関
連において調和的に実現されるべきものである。それゆえ,国会が具体的に定めた- 8 -
ところがその裁量権の行使として合理性を有するものである限り,それによって投
票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても,憲法に違反すると
はいえない。

憲法が二院制を採用し衆議院と参議院の権限及び議員の任期等に差異を設けてい
る趣旨は,それぞれの議院に特色のある機能を発揮させることによって,国会を公
正かつ効果的に国民を代表する機関たらしめようとするところにあると解される。
前記2(1)においてみた参議院議員の選挙制度の仕組みは,このような観点から,
参議院議員について,全国選出議員(昭和57年改正後は比例代表選出議員)と地
方選出議員(同改正後は選挙区選出議員)に分け,前者については全国(全都道府
県)の区域を通じて選挙するものとし,後者については都道府県を各選挙区の単位
としたものである。昭和22年の参議院議員選挙法及び同25年の公職選挙法の制
定当時において,このような選挙制度の仕組みを定めたことが,国会の有する裁量
権の合理的な行使の範囲を超えるものであったということはできない。

しかしなが
ら,社会的,経済的変化の激しい時代にあって不断に生ずる人口変動の結果,上記
の仕組みの下で投票価値の著しい不平等状態が生じ,かつ,それが相当期間継続し
ているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが,国会の裁量権の限界
を超えると判断される場合には,当該定数配分規定が憲法に違反するに至るものと
解するのが相当である。

以上は,昭和58年大法廷判決以降の参議院議員(地方選出議員ないし選挙区選
出議員)選挙に関する累次の大法廷判決の趣旨とするところであり,基本的な判断
枠組みとしてこれを変更する必要は認められない。

もっとも,選挙区間の最大較差が5倍前後で常態化する中で,前記2(2)のとお- 9 -
り,平成16年,同18年及び同21年の前掲各大法廷判決においては,上記の判
断枠組みは基本的に維持しつつも,選挙制度の仕組み自体の見直しが必要である旨
の平成21年大法廷判決の指摘を含め,投票価値の平等の観点から実質的にはより
厳格な評価がされるようになっていたところであり,また,平成24年大法廷判決
においては,昭和58年大法廷判決が長期にわたる投票価値の大きな較差の継続を
許容し得る根拠として挙げていた後記4(1)ウの諸点につき,長年にわたる制度及
び社会状況の変化を踏まえ,数十年間にもわたり5倍前後の大きな較差が継続する
ことを正当化する理由としては十分なものとはいえなくなっている旨の指摘がされ
ているところである。

4 上記の見地に立って,本件選挙当時の本件定数配分規定の合憲性について検
討する。
(1)ア 憲法は,二院制の下で,一定の事項について衆議院の優越を認める反
面,参議院議員につき任期を6年の長期とし,解散もなく,選挙は3年ごとにその
半数について行うことを定めている(46条等)。その趣旨は,立法を始めとする
多くの事柄について参議院にも衆議院とほぼ等しい権限を与えつつ,参議院議員の
任期をより長期とすること等によって,多角的かつ長期的な視点からの民意を反映
させ,衆議院との権限の抑制,均衡を図り,国政の運営の安定性,継続性を確保し
ようとしたものと解される。いかなる具体的な選挙制度によって,上記の憲法の趣
旨を実現し,投票価値の平等の要請と調和させていくかは,二院制の下における参
議院の性格や機能及び衆議院との異同をどのように位置付け,これをそれぞれの選
挙制度にいかに反映させていくかという点を含め,国会の合理的な裁量に委ねられ
ていると解すべきところであるが,その合理性を検討するに当たっては,参議院議- 10 -
員の選挙制度が設けられてから60年余にわたる制度及び社会状況の変化を考慮す
ることが必要である。

前記2の参議院議員の選挙制度の変遷を衆議院議員の選挙制度の変遷と対比して
みると,両議院とも,政党に重きを置いた選挙制度を旨とする改正が行われている
上,都道府県又はそれを細分化した地域を選挙区とする選挙と,より広範な地域を
選挙の単位とする比例代表選挙との組合せという類似した選出方法が採られ,その
結果として同質的な選挙制度となってきており,急速に変化する社会の情勢の下
で,議員の長い任期を背景に国政の運営における参議院の役割がこれまでにも増し
て大きくなってきているといえることに加えて,衆議院については,この間の改正
を通じて,投票価値の平等の要請に対する制度的な配慮として,選挙区間の人口較
差が2倍未満となることを基本とする旨の区割りの基準が定められていることにも
照らすと,参議院についても,二院制に係る上記の憲法の趣旨との調和の下に,更
に適切に民意が反映されるよう投票価値の平等の要請について十分に配慮すること
が求められるところである。

イ 参議院においては,この間の人口変動により,都道府県間の人口較差が著し
く拡大したため,半数改選という憲法上の要請を踏まえて定められた偶数配分を前
提に,都道府県を単位として各選挙区の定数を定めるという現行の選挙制度の仕組
みの下で,昭和22年の制度発足時には2.62倍であった選挙区間の最大較差
が,昭和52年選挙の時点では5.26倍に拡大し,平成4年選挙の時点では6.
59倍にまで達する状況となり,平成6年以降の数次の改正による定数の調整によ
って若干の較差の縮小が図られたが,5倍前後の較差が維持されたまま推移してき
た。- 11 -

ウ さきに述べたような憲法の趣旨,参議院の役割等に照らすと,参議院は衆議
院とともに国権の最高機関として適切に民意を国政に反映する機関としての責務を
負っていることは明らかであり,参議院議員の選挙であること自体から,直ちに投
票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難い。昭和58年大
法廷判決は,参議院議員の選挙制度において長期にわたる投票価値の大きな較差の
継続を許容し得る根拠として,上記の選挙制度の仕組みや参議院に関する憲法の定
め等を挙げていたが,これらの諸点も,平成24年大法廷判決の指摘するとおり,
上記アにおいてみたような長年にわたる制度及び社会状況の変化を踏まえると,数
十年間にもわたり5倍前後の大きな較差が継続することを正当化する理由としては
十分なものとはいえなくなっているものといわざるを得ない。

殊に,昭和58年大
法廷判決は,上記の選挙制度の仕組みに関して,都道府県が歴史的にも政治的,経
済的,社会的にも独自の意義と実体を有し,政治的に一つのまとまりを有する単位
として捉え得ることに照らし,都道府県を各選挙区の単位とすることによりこれを
構成する住民の意思を集約的に反映させ得る旨の指摘をしていたが,この点につい
ても,都道府県が地方における一つのまとまりを有する行政等の単位であるという
限度において相応の合理性を有していたことは否定し難いものの,これを参議院議
員の各選挙区の単位としなければならないという憲法上の要請はなく,むしろ,都
道府県を各選挙区の単位として固定する結果,その間の人口較差に起因して上記の
ように投票価値の大きな不平等状態が長期にわたって継続している状況の下では,
上記の都道府県の意義や実体等をもって上記の選挙制度の仕組みの合理性を基礎付
けるには足りなくなっているものといわなければならない。

以上に鑑みると,人口の都市部への集中による都道府県間の人口較差の拡大が続- 12 -
き,総定数を増やす方法を採ることにも制約がある中で,半数改選という憲法上の
要請を踏まえて定められた偶数配分を前提に,上記のような都道府県を各選挙区の
単位とする仕組みを維持しながら投票価値の平等の実現を図るという要求に応えて
いくことは,もはや著しく困難な状況に至っているものというべきである。

このこ
とは,前記2(3)の平成17年10月の専門委員会の報告書において指摘されてお
り,平成19年選挙当時も投票価値の大きな不平等がある状態であって選挙制度の
仕組み自体の見直しが必要であることは,平成21年大法廷判決において特に指摘
されていたところでもある。これらの事情の下では,平成24年大法廷判決の判示
するとおり,平成22年選挙当時,本件旧定数配分規定の下での前記の較差が示す
選挙区間における投票価値の不均衡は,投票価値の平等の重要性に照らしてもはや
看過し得ない程度に達しており,これを正当化すべき特別の理由も見いだせない以
上,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたというほかはない

エ 本件選挙は,平成24年大法廷判決の言渡し後に成立した平成24年改正法
による改正後の本件定数配分規定の下で施行されたものであるが,上記ウのとお
り,本件旧定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡が違憲の問題
が生ずる程度の著しい不平等状態にあると評価されるに至ったのは,総定数の制約
の下で偶数配分を前提に,長期にわたり投票価値の大きな較差を生じさせる要因と
なってきた都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みが,長年にわたる制
度及び社会状況の変化により,もはやそのような較差の継続を正当化する十分な根
拠を維持し得なくなっていることによるものであり,同判決において指摘されてい
るとおり,上記の状態を解消するためには,一部の選挙区の定数の増減にとどまら
ず,上記制度の仕組み自体の見直しが必要であるといわなければならない。

しかる- 13 -
ところ,平成24年改正法による前記4増4減の措置は,上記制度の仕組みを維持
して一部の選挙区の定数を増減するにとどまり,現に選挙区間の最大較差(本件選
挙当時4.77倍)については上記改正の前後を通じてなお5倍前後の水準が続い
ていたのであるから,上記の状態を解消するには足りないものであったといわざる
を得ない(同改正法自体も,その附則において,平成28年に施行される通常選挙
に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い結論を得るものと
する旨を定めており,上記4増4減の措置の後も引き続き上記制度の仕組み自体の
見直しの検討が必要となることを前提としていたものと解される。)。

したがって,平成24年改正法による上記の措置を経た後も,本件選挙当時に至
るまで,本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は,平成2
2年選挙当時と同様に違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものと
いうべきである。

(2)ア 参議院議員の選挙における投票価値の較差の問題について,当裁判所大
法廷は,これまで,①当該定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均
衡が,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っているか否か,②上記の
状態に至っている場合に,当該選挙までの期間内にその是正がされなかったことが
国会の裁量権の限界を超えるとして当該定数配分規定が憲法に違反するに至ってい
るか否かといった判断の枠組みを前提として審査を行ってきており,こうした判断
の方法が採られてきたのは,憲法の予定している司法権と立法権との関係に由来す
るものと考えられる。すなわち,裁判所において選挙制度について投票価値の平等
の観点から憲法上問題があると判断したとしても,自らこれに代わる具体的な制度
を定め得るものではなく,その是正は国会の立法によって行われることになるもの- 14 -
であり,是正の方法についても国会は幅広い裁量権を有しているので,裁判所が選
挙制度の憲法適合性について上記の判断枠組みの下で一定の判断を示すことによ
り,国会がこれを踏まえて自ら所要の適切な是正の措置を講ずることが,憲法上想
定されているものと解される。

このような憲法秩序の下における司法権と立法権と
の関係に照らすと,上記①において違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に
至っている旨の司法の判断がされれば国会はこれを受けて是正を行う責務を負うも
のであるところ,上記②において当該選挙までの期間内にその是正がされなかった
ことが国会の裁量権の限界を超えるといえるか否かを判断するに当たっては,単に
期間の長短のみならず,是正のために採るべき措置の内容,そのために検討を要す
る事項,実際に必要となる手続や作業等の諸般の事情を総合考慮して,国会におけ
る是正の実現に向けた取組が司法の判断の趣旨を踏まえた裁量権の行使の在り方と
して相当なものであったといえるか否かという観点に立って評価すべきものと解さ
れる(最高裁平成25年(行ツ)第209号,第210号,第211号同年11月
20日大法廷判決・民集67巻8号1503頁参照)。

イ そこで,本件において,本件選挙までに違憲の問題が生ずる程度の投票価値
の著しい不平等状態の是正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超えるとい
えるか否かについて検討する。

参議院議員の選挙における投票価値の不均衡については,平成10年及び同12
年の前掲各大法廷判決は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていな
いとする判断を示し,その後も平成21年大法廷判決に至るまで上記の状態に至っ
ていたとする判断が示されたことはなかったものであるところ,違憲の問題が生ず
る程度の著しい不平等状態に至っているとし,その解消のために選挙制度の仕組み- 15 -
自体の見直しが必要であるとする当裁判所大法廷の判断が示されたのは,平成24
年大法廷判決の言渡しがされた平成24年10月17日であり,国会において上記
の状態に至っていると認識し得たのはこの時点からであったというべきである。

この違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態を解消するために
は,平成24年大法廷判決の指摘するとおり,単に一部の選挙区の定数を増減する
にとどまらず,都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしか
るべき形で改めるなど,現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的
措置を講ずることが求められていたところである。このような選挙制度の仕組み自
体の見直しについては,平成21年及び同24年の前掲各大法廷判決の判示におい
ても言及されているように,参議院の在り方をも踏まえた高度に政治的な判断が求
められるなど,事柄の性質上課題も多いため,その検討に相応の時間を要すること
は認めざるを得ず,また,参議院の各会派による協議を経て改正の方向性や制度設
計の方針を策定し,具体的な改正案を立案して法改正を実現していくためには,こ
れらの各過程における諸々の手続や作業が必要となる。

しかるところ,平成24年大法廷判決の言渡しによって選挙区間における投票価
値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていることを国会
が認識し得た平成24年10月17日の時点から,本件選挙が施行された同25年
7月21日までの期間は,約9か月にとどまるものであること,それ以前にも当裁
判所大法廷の指摘を踏まえて参議院における選挙制度の改革に向けての検討が行わ
れていたものの,それらはいまだ上記の状態に至っているとの判断がされていない
段階での将来の見直しに向けての検討にとどまる上,前記2(3)のとおり上記改革
の方向性に係る各会派等の意見は区々に分かれて集約されない状況にあったことな- 16 -
どに照らすと,平成24年大法廷判決の言渡しから本件選挙までの上記期間内に,
上記のように高度に政治的な判断や多くの課題の検討を経て改正の方向性や制度設
計の方針を策定し,具体的な改正案の立案と法改正の手続と作業を了することは,
実現の困難な事柄であったものといわざるを得ない。

他方,国会においては,前記2(4)のとおり,平成24年大法廷判決の言渡し
後,本件選挙までの間に,前記4増4減の措置に加え,附則において平成28年に
施行される通常選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行
い結論を得るものとする旨を併せて定めた平成24年改正法が成立するとともに,
参議院の選挙制度の改革に関する検討会及び選挙制度協議会において,平成24年
大法廷判決を受けて選挙制度の改革に関する検討が行われ,上記附則の定めに従
い,選挙制度の仕組みの見直しを内容とする公職選挙法改正の上記選挙までの成立
を目指すなどの検討の方針や工程が示されてきている。このことに加え,前記2
(5)のとおり,これらの参議院の検討機関において,本件選挙後も,上記附則の定
めに従い,平成24年大法廷判決の趣旨に沿った方向で選挙制度の仕組みの見直し
を内容とする法改正の具体的な方法等の検討が行われてきていることをも考慮に入
れると,本件選挙前の国会における是正の実現に向けた上記の取組は,具体的な改
正案の策定にまでは至らなかったものの,同判決の趣旨に沿った方向で進められて
いたものということができる。

以上に鑑みると,本件選挙は,前記4増4減の措置後も前回の平成22年選挙当
時と同様に違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態の下で施行され
たものではあるが,平成24年大法廷判決の言渡しから本件選挙までの約9か月の
間に,平成28年に施行される通常選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについ- 17 -
て引き続き検討を行い結論を得るものとする旨を附則に定めた平成24年改正法が
成立し,参議院の検討機関において,上記附則の定めに従い,同判決の趣旨に沿っ
た方向で選挙制度の仕組みの見直しを内容とする法改正の上記選挙までの成立を目
指すなどの検討の方針や工程を示しつつその見直しの検討が行われてきているので
あって,前記アにおいて述べた司法権と立法権との関係を踏まえ,前記のような考
慮すべき諸事情に照らすと,国会における是正の実現に向けた取組が平成24年大
法廷判決の趣旨を踏まえた国会の裁量権の行使の在り方として相当なものでなかっ
たということはできず,本件選挙までの間に更に上記の見直しを内容とする法改正
がされなかったことをもって国会の裁量権の限界を超えるものということはできな
い。

(3) 以上のとおりであって,本件選挙当時において,本件定数配分規定の下
で,選挙区間における投票価値の不均衡は,平成24年改正法による改正後も前回
の平成22年選挙当時と同様に違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあっ
たものではあるが,本件選挙までの間に更に本件定数配分規定の改正がされなかっ
たことをもって国会の裁量権の限界を超えるものとはいえず,本件定数配分規定が
憲法に違反するに至っていたということはできない。


参議院議員の選挙制度については,これまで,限られた総定数の枠内で,半数改
選という憲法上の要請を踏まえて定められた偶数配分を前提に,都道府県を各選挙
区の単位とする現行の選挙制度の仕組みの下で,人口の都市部への集中による都道
府県間の人口較差の拡大に伴い,一部の選挙区の定数を増減する数次の改正がされ
てきたが,これらの改正の前後を通じて長期にわたり投票価値の大きな較差が維持
されたまま推移してきた。

しかしながら,国民の意思を適正に反映する選挙制度が- 18 -
民主政治の基盤であり,投票価値の平等が憲法上の要請であることや,さきに述べ
た国政の運営における参議院の役割等に照らせば,より適切な民意の反映が可能と
なるよう,従来の改正のように単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず,
国会において,都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしか
るべき形で改めるなどの具体的な改正案の検討と集約が着実に進められ,できるだ
け速やかに,現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置によっ
て違憲の問題が生ずる前記の不平等状態が解消される必要があるというべきであ
る。

5 以上と異なる原審の各判断には,憲法の解釈,適用を誤った違法がある。各
論旨は理由があり,原審各判決は破棄を免れない。そして,以上説示したところに
よれば,被上告人らの請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとす
る。

よって,裁判官大橋正春,同鬼丸かおる,同木内道祥,同山本庸幸の各反対意見
があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官櫻井
龍子,同金築誠志,同岡部喜代子,同山浦善樹,同山崎敏充の補足意見,裁判官千
葉勝美の補足意見がある。

●裁判官櫻井龍子,同金築誠志,同岡部喜代子,同山浦善樹,同山崎敏充の補足意
見は,次のとおりである。
私たちは,多数意見に賛同するものであり,本件選挙当時,本件定数配分規定の
下での選挙区間の投票価値の不均衡は,違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著し
い不平等状態(以下「違憲状態」という。)にあったと考えるが,その状態を解消
するために必要とされる選挙制度の仕組みの見直しの在り方について,補足して意- 19 -
見を述べておきたい。・・・・・(略)・・・

 ★裁判官千葉勝美の補足意見は,次のとおりである。
私は,多数意見において,本件選挙までに法改正による違憲状態の是正がされな
かったことが国会の裁量権の限界を超えるものということはできないとしたことに- 21 -
関連して,次のとおり私見を付加しておきたい。
・・・・(略)・・・

●裁判官大橋正春の反対意見は,次のとおりである。
私は,多数意見と異なり,本件定数配分規定は本件選挙当時において憲法に違反
し,本件選挙は違法であると考えるものである。
・・・・・・(略)・・・本件においては選挙を無効としないことを選択するの
が相当であると考える。
4 以上により,私は,本件定数配分規定は,本件選挙当時,違憲であり,いわ
ゆる事情判決の法理により,請求を棄却した上で,主文において本件選挙が違法で
ある旨を宣言すべきであると考える。

●裁判官鬼丸かおるの反対意見は,次のとおりである。
私は,多数意見とは異なり,本件定数配分規定は憲法に違反するものであり,本
件定数配分規定に基づいて施行された本件選挙も違法であるから,その違法を宣言
すべきであると考える。このような見解に至った理由を以下に述べる。
・・・・(略)・・・したがって,
今回,違憲の結論を採るに当たっては,憲法の予定する立法権と司法権の関係に鑑
み,司法が直ちに選挙を無効とするとの結論を出すのではなく,まず国会自らによ
る是正の責務の内容及びこれを速やかに実現する必要性を明確に示すことが相当で
あると思料される。そして,今後の進捗の状況等を注視し,その是正が速やかに行
われない場合には,司法が選挙の効力に関して上記の結論につき決する新たな段階
に歩を進めるのが相当であろう。
以上のことから,本件については,選挙を無効とすることなく,本件選挙は違法
であると宣言することにとどめるのが相当であるとの結論を採るものである。

●裁判官木内道祥の反対意見は,次のとおりである。
・・・・・・(略)・・・選挙無効とする選挙区を選定する規律が熟していないこと
に鑑み,今回については,全ての選挙区の選挙について選挙無効とすることなく違法
を宣言するにとどめることが相当であると考えるものである。
以下,その理由を述べる。
・・・・・・(略)・・・そこで,本件選挙については,
一部の選挙区の選挙のみを無効とすることは控えることとし,
全ての選挙区の選挙について違法を宣言するにとどめることとするのが相当である。

●裁判官山本庸幸の反対意見は,次のとおりである。- 55 -
・・・・・・・・(略)・・・ただし,人口の急激な移動や技術的理由などの区割
りの都合によっては1~2割程
度の一票の価値の較差が生ずるのはやむを得ないと考えるが,それでもその場合に
許容されるのは,せいぜい2割程度の較差にとどまるべきであり,これ以上の一票
の価値の較差が生ずるような選挙制度は法の下の平等の規定に反し,違憲かつ無効
であると考える。
・・・・・(略)・・・
なお,一票の価値の平等を実現するための具体的な選挙区の定め方に関しては,
もとより新しい選挙区の在り方や定数を定める法律を定める際に国会において十分
に議論されるべき事柄であるが,都道府県又はこれを細分化した市町村その他の行
政区画などを基本単位としていては,策定が非常に困難か,事実上不可能という結
果となることが懸念される。その最大の障害となっているのは都道府県であり,ま
た,これを細分化した市町村その他の行政区画などもその大きな障害となり得るも
のと考えられる。したがって,これらは,もはや基本単位として取り扱うべきでは
なく,細分化するにしても例えば投票所単位など更に細分化するか,又は細分化と
は全く逆の発想で全国を単一若しくは大まかなブロックに分けて選挙区及び定数を
設定するか,そのいずれかでなければ,一票の価値の平等を実現することはできな
いのではないかと考える。


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