●平川市長選選挙違反:裁判官声荒らげ「全国からバカにされる」 現金授受は「恒例」 県選管「不名誉な注目」 /青森
毎日新聞 2015年04月21日
「全国的にも不名誉な注目を浴びた。二度と繰り返さないよう注意喚起をお願いしたい」
3月5日に行われた県議選の立候補予定者説明会で、県選管の田中俊匡事務局長(当時)はこう強調した。念頭にあったのは昨年1月の平川市長選を巡る公職選挙法違反事件だ。当時の市議20人中15人が逮捕された事件の公判では、市議の被告が現金授受について「恒例」と供述するなど、現金が横行する状態が浮き彫りになった。統一地方選が進行する中、公判で明らかになった現金授受を巡る経緯を振り返った。
同市長選は大川喜代治前市長=公選法違反(買収)罪で有罪が確定=と、有力県議の長尾忠行現市長が争い、長尾氏が勝利。事件はこの選挙を巡り、大川氏派の元社会福祉法人理事長=同=が市議買収を計画したものだ。
「清流に泥を投げ込んだわけではない。泥水の中にさらに泥を投げ込んだに過ぎないのである」。大川氏と元理事長の代理人の小田切達弁護士は、昨年12月25日の公判の最終弁論で平川市政界を「泥水」にたとえ、「選挙で現金が動くことを異としない」状況だったと指摘した。元理事長も公判で「前回(2010年)市長選でも金を渡したのに、今回出さないわけにはいかなかった」と供述。「祖父の代からお金を渡すのが恒例になっている風習がある」と話した。大川氏も「選挙の度に『買収がある』という話がしょっちゅう聞こえてくる」「金を渡さないと応援してもらえないと思った」と述べるなど、現金授受の常態化を示した。
現金を受け取った側の公判供述でも、特段の抵抗なく現金を受け取った様子が浮かび上がった。当時の市議らは「ガソリン代など選挙には金が必要なので、罪悪感はなかった」「自然の流れで受け取った」などと話した。「子供が買収を見たらどう思うか」と裁判官に尋ねられ、「子供には見せないようにすれば良いと思った」との供述もあり、裁判官が「ここ津軽の選挙では通用しても全国から見ればバカにされる」「(金を)もらった方にお目こぼしすると、いつまでも(違反は)なくならない」と声を荒らげる場面もあった。
一方、現金授受に抵抗感があった被告もいた。元理事長から買収資金を預かった元市議は、返却せずに別の3元市議に現金を渡した理由について「そんなお金を手元に置いておくのが怖かった」と話した。受け取った元市議の一人は「仲間でないと思われるのがいやだった」と複雑な心境を明かしている。 |