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  「4億2101万6400円を返せ」の住民監査請求をしたのが3月初め。
  関連資料は ★≪消防デジタル無線談合「全国初の県内一斉住民監査請求」 「4億2101万6400円を返せ」の実施について/昨日の岐阜県政記者クラブでの記者会見配布資料をアップ≫ (2018年3月6日ブログ 

 要点は≪消防本部ごとの損害賠償額は、揖斐郡消防組合9786万円、中濃消防組合9355万5000円、中津川市8988万円、下呂市6867万円、山県市3282万3000円、羽島郡広域連合3276万円、岐阜市546万8400円と計算されます。つまり、7消防本部の合計の契約額「21億508万2000円」のうち合計「4億2101万6400円」を各業者が各自治体・消防本部に返還すべき。≫ 

 そして、「羽島郡広域連合組合消防本部」は、業者に請求し、すでに納付された旨の連絡が先月あった。
 「揖斐」「中濃」「山県」「下呂」については、この連休明けに、相次いで「棄却」された通知が届いたことが代理人・事務局から一昨日連絡があった。 昨日は報道から「岐阜市」「中津川市」の「棄却」が知らされた。
 そこで、ネットでみてみたら、中濃消防組合消防本部と下呂市消防本部、岐阜市消防本部が監査結果を掲載していたので、記録しておく。

 岐阜県外では、神戸市は、今回の談合認定の期間に入っていないけれど、業者を相手に市が裁判を起こした。 
 返還をすっと求める自治体といつまでも求めない自治体の違い。

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●神戸市、消防無線談合業者を提訴へ 違約金1億円超求め
     神戸 2018/3/14
 神戸市消防局の消防救急無線のデジタル化工事を受注した沖電気工業(東京)が、同市以外の工事入札で公正取引委員会から談合を認定されたのは契約違反に当たるとして、同市が同社に違約金約1億2500万円を求め訴訟を起こす方針を固めたことが13日、分かった。近く関連議案を市会に提出する。

 同市消防局のデジタル化工事は2010~11年に同社が約12億5千万円で受注した。公取委は17年2月、同社を含む5社が全国の消防救急無線デジタル化に伴う入札で談合を繰り返したとし、うち4社に計63億円の課徴金納付を命じた。

 神戸市と沖電気の契約時期は、公取委が同社に課徴金納付を命じた対象期間(11年4月~14年4月)より前に当たる。ただ公取委が談合の合意は09年12月からあったと認定していることから、市は同社との契約の「違法行為が明らかになった際は契約金の10%を支払う」という部分に該当すると判断。1月に違約金を請求したが、同社は応じなかったという。

 市によると、一連の談合を巡る自治体の訴訟は全国で例がないという。沖電気工業は「正式な連絡がないのでコメントできない」としている。(若林幹夫)

●岐阜市監査委員 消防救急デジタル無線装置の売買に係る措置請求 平成30年5月8日

★★中濃消防組合職員措置請求に係る監査結果の公表  
中濃消防組合告示第5号 / 中濃消防組合職員措置請求に係る監査結果の公表
平成30年3月6日に提出されました中濃消防組合職員措置請求書について、地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第242条第4項の規定に基づき、監査した結果を同項の規定により下記のとおり公表します。
平成30年5月2日   中濃消防組合監査委員
   ・・・(略)・・・
第3 判断
1 当該入札における談合行為の存在について
請求人は、中央電子光学が公正取引委員会による排除措置命令及び課徴金納付命
令の直接の名宛人とはなっていないが、公正取引委員会の認定によれば「入札等に
おいて落札すべき価格は、(中略)代理店等に落札させる場合には当該代理店等と
相談して決定する」とされているところ、中央電子光学はこの「代理店等」に該当
し、さらに、談合により本件工事の価格の公正が害されたと認定しているから、実
質的には、本件契約第50条第1項に該当するとしている。
中央電子光学は、沖電気工業の他、日本電気、富士通ゼネラルといったところと
も特約店になっている。

公正取引委員会の認定による「代理店等」については、それらの名称等は特定さ
れていない。また、中央電子光学自体は、排除措置命令や課徴金納付命令も受けて
はいない。

しかし、公正取引委員会の沖電気工業に対する課徴金納付命令の算定の対象とし
た83の物件には、中濃消防組合が中央電子光学と契約を締結した消防救急デジタ
ル無線整備工事も含まれており、沖電気工業はこれらを認めた上で課徴金を納付し
ていることは、沖電気工業の特約店でもある中央電子光学が、公正取引委員会の認
定による「代理店等」に含まれている可能性は推測されるが、明白な証拠はない。
8社による指名競争入札にあたり、中央電子光学以外はいずれも、公正取引委員
会から排除措置命令を受けた消防救急デジタル無線機器の製造販売業者又は関連
業者で構成されており、その内の6社から入札前に既設指令台システムとの接続困
難等の理由により辞退届が提出され、入札に応じたのは中央電子光学と沖電気工業
の2社のみであった。この事実は、公正取引委員会の認定による「入札等において
落札すべき価格は、(中略)代理店等に落札させる場合には当該代理店等と相談し
て決定するなどし、納入予定メーカー以外の者は、納入予定メーカーが定めた価格
よりも高い価格で入札する又は入札に参加しない」とされているところと似た状況
であり、何らかの因果関係がありそうなことは推測し得るが、断定し得る確たる証
拠はない。
以上により、当該入札における談合行為の存在については、疑わしい行為は認め
られるものの推測の域に過ぎず、何ら明白な根拠、確たる証拠もないことから、現
時点においては認めがたい。

2 談合行為による損害の発生について
請求人は、損害賠償額について、工事請負契約約款第51条第3項は請負代金額
の10分の1に相当する額と定めているが、組合の周辺自治体(岐阜市、下呂市、
山県市、揖斐郡、羽島郡)は、同旨の規定で損害賠償額を請負代金額の10分の2
に相当する額と定めており、組合においても異なるものではないことから、本件談
合によって組合が被った損害は、請負代金額の20パーセントに相当する額である。
また、契約約款第50条第3項でも、組合に同条第1項に定める以上の損害が生じ
た場合には、その超過分について賠償請求できる旨が定められていることから、組
合は中央電子光学に対し、請負代金額の10分の2である9355万5000円の
違約金請求権を有するとしている。

しかしながら、前述のとおり談合が行われたという何ら明白な根拠、確たる証拠
もないことから、現時点において損害の発生は認めがたい。
なお、工事請負契約約款によれば、損害賠償額の予約として第51条第1項では、
公正取引委員会の独占禁止法違反による排除措置命令及び課徴金納付命令が確定
したときなどには、損害賠償金として請負代金額の10分の1に相当する額と定め、
同条第3項では、生じた損害の額が同条第1項に規定する損害賠償金の額を超える
場合において、その超過分につき賠償を請求することを妨げるものではないと規定
しており、請求人が主張する契約約款の根拠条項には誤りが認められ、内容に矛盾
が生じている。仮に受注者である中央電子光学に談合の事実があったとすれば、契
約約款に基づき請負代金額の10分の1に相当する額を損害賠償請求することと
なり、請求人が主張するように、周辺自治体が同旨の規定で損害賠償額を請負代金
額の10分の2に相当する額と定めていることを根拠として、組合が被った損害は、
請負代金額の20パーセントに相当する額であるとすることは、契約内容を無視し
たものとなり、今後、契約約款を10分の2とする見直しは十分に検討する必要が
あると認めるが、今回の契約に関しては、約款に定める以上の請求を行うことは、
契約書を逸脱したものと考える。

また、請求人が主張する違約金請求権については、契約約款第50条第2項に規
定するものであり、公正取引委員会の独占禁止法違反による排除措置命令及び課徴
金納付命令が確定したときなどにより、契約が解除された場合において違約金が発
生するものであり、契約が解除されていない本件には適用されないものと判断する。
請求人は、中央電子光学は、沖電気工業と共に入札談合を行っていたので、独占
禁止法第3条違反として不法行為責任を負い、組合は中央電子工学に対して、請負
代金額の10分の2である9355万5000円の損害賠償請求権を有する。

また、沖電気工業は、排除措置命令及び課徴金納付命令の直接の名宛人であって、
まさしく談合の当事者として独占禁止法違反行為を行っていたものであり、中央電
子光学と同様、組合に対して不法行為責任を負い、組合は沖電気工業に対して93
55万5000円の損害賠償請求権を有するとしている。
このことについても、前述のとおり談合が行われたという何ら明白な根拠、確た
る証拠もないことから、現時点において損害の発生は認めがたい。

仮に、入札談合があったとすれば、8社による指名競争入札そのものが、公正取
引委員会の認定による「入札等において落札すべき価格は、(中略)代理店等に落
札させる場合には当該代理店等と相談して決定するなどし、納入予定メーカー以外
の者は、納入予定メーカーが定めた価格よりも高い価格で入札する又は入札に参加
しない」とされているところに合致し、この行為は民法第719条第1項「数人が
共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠
償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ること
ができないときも、同様とする。」規定に該当し、8社全てによる共同不法行為が
適用できると考察されるが、何ら明白な根拠、確たる証拠もないことから、現時点
において損害の発生は認めがたい。
- 8 -
また、請求人は、請求の要旨中「中央電子光学株式会社及び沖電気工業株式会社
から各自金9355万5000円を消防組合に返還させるための必要な措置をと
ることを勧告するよう求める。」としているが、共同不法行為による場合は、各自
が連帯してその損害を賠償する責任を負うものであり、到底認められるものではな
いと判断する。

3 中濃消防組合の対応について
管理市である関市の顧問弁護士にも相談し、また、他の消防本部とも情報交換を
行いつつ資料等を収集しているが、損害賠償請求に向けた確たる根拠、証拠は認め
られず、請求先の特定や損害額の確定等において十分精査する必要があり、慎重に
ならざるを得なかったことから現在に至っていると述べていることからも、必ずし
も損害賠償請求の行使を怠っているとは言い難い。

4 小括
以上のことから、現時点において、平成25年7月12日締結の消防救急デジタ
ル無線設備整備工事の請負契約に関し、中央電子光学及び沖電気工業の独占禁止法
違反による不法行為によって、中濃消防組合が損害を被ったとは認めがたい。
第4 結論
上記のとおり、本件住民監査請求における請求人の主張には理由が認められず、
これを棄却する。

第5 意見
本件請求における監査において、現時点では談合の存在に疑わしい行為は認めら
れるものの推測の域に過ぎず、何ら明白な根拠、証拠もないことから、棄却とした
ものであり、今後も本件の消滅時効の期間も考慮するとともに、損害賠償請求に対
する適切な対応を望むものである。
また、中濃消防組合契約規則に関しては、管理市である関市契約規則の例により
行われており、工事請負契約約款における損害賠償請求の予約条項の中で、談合そ
の他不正行為があった場合には、工事が完了した後においても受注者は、発注者に
対し損害賠償金として請負代金の10分の1に相当する額を払わなければならな
いことを定められているが、周辺自治体ではその額を10分の2に相当する額と定
め、より厳しい対応を取っていることに関して、今後は見直しも含め検討されるよ
う求める次第である。

(↓ リンク先で開くのでなく、ダウンロードされる設定のよう ↓)
★下呂市監査告示第5号 住民監査請求に係る監査結果(平成30年5月2日公表) [PDFファイル/281.82キロバイト]
地方自治法(昭和 22 年法律第 67 号)第 242 条第4項の規定により、住民監査請求に基づく監査の結果を決定したので、別紙のとおり公表します。
 平成 30 年5月2日 下呂市監査委員
・・・(以下、略)・・・第5 監査の結果
1 主文
本件請求を棄却する。
2 理由
・・・(以下、略)・・・
カ 公正取引委員会に対する行政文書開示請求
公正取引委員会が、平成 29 年2月2日に平成 29 年(措)第1号で行った排除
措置命令の内容にかかる疑義が生じたため、次の文書について行政文書開示請求
を行った。
‘(ア)平成 29 年(措)第1号排除措置命令書の理由 2合意及び実施方法(2)ウ
に記載のある「代理店等」に該当する事業所名が確認できる文書
(イ)平成 29 年(措)第1号排除措置命令書の理由 2合意及び実施方法(2)ウ
中「代理店等に落札させる場合には当該代理店等と相談するなどし」とした根
拠を確認できる文書
この行政文書開示請求について、公正取引委員会から4月 19 日付けで、全部
不開示とする旨の決定通知があった。

(3)判断
以上のような事実関係、消防本部の陳述、関係書類の調査等により、本件請求つ
いて次のとおり判断する。

ア 入札参加業者の不法行為により、市は損害を被ったかについて
①まず、平成 29 年2月2日に公正取引委員会が行い、確定した排除措置命令の
理由によれば、2合意及び実施方法の中で、「(1)富士通ゼネラル、日本電気及
び沖電気工業の3社は、遅くとも平成 21 年 12 月 21 日頃までに、特定消防救急
デジタル無線機器について、受注価格の低落防止等を図るため ア納入予定メー
カーを決定する イ納入予定メーカー以外の者は、納入予定メーカーが納入でき
るように協力する旨合意し、(略)」とされていることから、沖電気工業株式会社
等5社(うち2社は後から合意に参加)が行った当該不法行為の目的は、受注価
格の低落防止であることは明らかである。

②次に、同項目の中で「入札等において落札すべき価格は、納入予定メーカー
自らが落札者となる場合には自ら定め、代理店等に落札させる場合には当該代理
店等と相談して決定するなどし、納入予定メーカー以外の者は、納入予定メーカ
ーが定めた価格よりも高い価格で入札する又は入札に参加しないなどにより、納
入予定メーカーを決定し、納入予定メーカーが納入できるようにしていた。」と
され、1関連事実の中でも、「5社は、特定消防救急デジタル無線機器を自ら落
札して、当該機器を納入するほか、その代理店、工事業者等に落札させるなどし
て、当該代理店等を通じて消防救急デジタル無線機器を納入していた。」とされ
ている。本件工事は、事後審査型条件付き一般競争入札(請求人は指名競争入札
としており事実誤認と思われる。)で実施されたが、結果として応札者は、沖電
気工業株式会社岐阜支店と、同社中部支社の特約店である本件工事請負業者の2
社のみであることから、前記「関連事実」でいう「代理店、工事業者等」とは、
当該事案においては本件工事請負業者であると、相当の蓋然性をもって推測でき、
本件工事請負業者を受注予定者として5社の談合が行われたものと推認できる。
なお、本件工事の入札参加資格要件の一つとして、主たる機器を有していない
者が入札に参加する場合は、製造者の特約店契約を有することとされており、本
件工事請負業者(本社)は、消防救急デジタル無線システム等の沖電気工業株式
会社中部支社の特約店になっていることを証明書により確認した。
‘③そして、確定した沖電気工業株式会社に対する課徴金納付命令の違反行為の
理由において、談合により「(略)公共の利益に反して、特定消防救急デジタル
無線機器の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって、(略)
独占禁止法第3条の規定に違反するものであり、かつ、独占禁止法第7条の2第
1項第1号に規定する商品の対価に係るものである。」とされており、課徴金算
定の対象物件に、違反行為の実行期間中に入札が実施された本件工事が挙げられ、
その工事代金が算定の基礎となる売上額に算入されている。

以上の、公正取引委員会が行い、確定した排除措置命令及び課徴金納付命令の
理由を判断材料として、当該不法行為による影響は本件工事入札にも及んでおり、
当該不法行為と本件工事代金に因果関係が存在するものと推認できる。したがっ
て、当該不法行為に起因して、公正な競争原理により形成されたであろう想定落
札価格と、実際の契約価格との間に差が生じているものと推測でき、これにより
市が被った損害は発生しているものと判断する。

イ 契約に基づく違約金請求権を行使しないことは、不当に財産の管理を怠る事実
に該当するかについて
請求人は、本件工事請負業者(本社)は排除措置命令及び課徴金納付命令の直
接の名宛人となっていないが、当該不法行為に関与したとされる代理店に該当し、
本件工事には、本件工事請負業者と沖電気工業株式会社岐阜支店しか入札に参加
しておらず、この2社による談合によって本件工事の価格が形成されているから、
実質的には本件工事請負契約約款第 47 条の3第1項に該当するとして、市は、本
件工事請負業者(本社)に対し、請負代金額の 10 分の2である 6,867 万円の違約
金請求権を有するとしている。

本件工事請負仮契約(仮契約後、同一条件で本契約)約款第 47 条の3第1項で
は、受注者は、約款第 47 条の2第1項各号いずれかに該当するときは、発注者が
契約を解除するか否かを問わず、発注者に対して違約金として請負代金額の 10
分の1に相当する額を、また約款第 47 条の3第2項では、同条第1項に定める額
のほかに、違約金(違約罰)として請負代金額の 10 分の1に相当する額を発注者
に支払わなければならないと規定されている。そこで、違約金支払いの根拠とな
る約款第 47 条の2第1項各号をみると、第1号では「公正取引委員会が、受注者
に私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和 22 年法律第 54 号。以
下「独占禁止法」という。)の規定に違反する行為(略)があったとして独占禁止
法第 49 条第1項(平成 25 年法律第 100 号による改正前の条名)に規定する排除
措置命令を行い、同条第7項の規定により当該排除措置命令が確定したとき(略)。」
とし、同項第2号では、「公正取引委員会が、受注者に独占禁止法違反行為があっ
たとして、独占禁止法第 50 条第1項(平成 25 年法律第 100 号による改正前の条
名)に規定する課徴金の納付命令を行い、同条第5項の規定により当該納付命令
が確定したとき(略)。」と規定されている。

このように、契約約款では、違約金が適用されるのは、受注者が独占禁止法に
違反し、排除措置命令や課徴金の納付命令を受け、それが確定した場合などと、
違約金が課せられる対象者は受注者に限定されており、受注者つまり本件工事請
負業者(権利義務の主体となる契約当事者)は、排除措置命令及び課徴金の納付
命令の名宛人ではないこと、また、約款第 47 条の2第1項の他の各号に照らして
みても該当する号がないことから、本件工事請負契約における違約金は発生しな
いものと考え、違約金請求権を行使しないことについては、不当に財産の管理を
怠る事実には当たらないものと判断する。

ウ 不法行為による損害賠償請求権を行使しないことは、不当に財産の管理を怠る
事実に該当するかについて
独占禁止法第 25 条は、同法第3条、第6条又は第 19 条の規定に違反する行為
をした事業者等が、被害者に対し、損害賠償の責めに任ずることを規定している。
また、民法第 709 条は、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される
利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と規定し
ており、この場合、故意、過失の立証責任は債権者にあることが前提となってい
る。

アで既述したように、損害の発生については、公正取引委員会の認定により、
当該不法行為の目的は受注価格の低落防止であることが明らかにされていること
や、当該不法行為と本件工事代金の因果関係から、当該不法行為に起因して、公
正な競争原理により形成されたであろう想定落札価格と、実際の契約価格との間
に差が生じていることは推測できる。したがって、市は損害を被っているものと
考えられ、独占禁止法及び民法(709 条、719 条)の両面から、独占禁止法違反行
為をした沖電気工業株式会社等に対する損害賠償請求権の行使は可能と判断する。

しかしながら、損害額の算定等の立証責任は債権者にあり、前述の想定落札価
格は、当該不法行為がなかった場合の結果論であるため、損害額の算定や証明を
するにあたっての合理的な根拠を挙げることは、極めて困難であると認められる。
契約約款第 47 条の3第1項及び第2項の違約金の規定は、民法第 420 条第1項で
定められた損害賠償額の予定についての契約相手方との約定であり、言うまでも
なく実際の損害額ではない。また、約款第 47 条の3第3項で、同条第1項及び第
2項の規定は、「(略)発注者に生じた実際の損害額が同項に規定する違約金を合
計した額を超える場合において、発注者がその超過分につき賠償を請求すること
を妨げるものではない。」と、条文で「実際の損害額」と規定していることからも、
損害額は、一概に約款第 47 条の3第1項及び第2項の規定により合計で 20%と
は言い難く、他の算定方法を用いることを検討する余地があると考えられるもの
の、同時に容易でないことが予想される。

また、請求人は、本件工事請負業者が、公正取引委員会の排除措置命令書の理
由の中で述べられているところの、独占禁止法違反行為をした5社が、入札等に
おいて落札すべき価格を決定する際に相談したとされる「代理店等」に該当し、
入札談合を行っていたので、本件工事請負業者も独占禁止法第3条違反として不
法行為責任を負うと主張している。しかしながら、当該「代理店等」について、
公正取引委員会へ具体的な行政文書の開示を求めたところ、全部不開示との結果
であったことから、本件工事請負業者は、アで既述したように、「代理店、工事業
者等」であると相当の蓋然性をもって推測できるものの、明確に断定することは
できないため、請求人の主張には理由がないものと判断する。

エ 結論
以上のとおり、本件住民監査請求において、請求人が、市が有すると主張する債
権のうち、沖電気工業株式会社に対する損害賠償請求権の存在については請求人の
主張に理由があるものと判断する。しかしながら、市長から提出された弁明書に記
載のとおり、市は、関係者への損害賠償請求をしないという不作為状態を容認する
ものではないとして、すでに損害立証の作業を行っていると認められることから、
現時点において、市が損害賠償請求権を行使していないことが不当に財産の管理を
怠っているとは言えない。また、その余の部分については既述のとおり理由がない
ものと判断し、本請求は棄却する。


オ 市に対する意見
損害額の算定が極めて困難な事例については、民事訴訟法第 248 条に基づく裁判
所における損害額認定についての判例の蓄積が進んでいるところであるが、損害立
証責任をしっかりと果たすため、その作業を適正確実かつ速やかに進めるよう求め
る。
平成 30 年5月2日   下呂市監査委員



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