ジープ島に到着したとき、迎えてくれたのはいつもニコニコ顔のお母さん、リペル。そして恥ずかしがり屋のエリックとイッチェン、リペルの孫たちだった。
イッチェンは自称7才。素潜りが得意で、イルカスイムの時はイルカとともに自由に泳ぎ回る。日本の弱っちい同年代の小学生なんかよりもずっと頼もしい。
ジープ島のすべてが彼のおもちゃ。ゲッコー(トカゲ)の小さい奴を捕まえては、ゲストに見せに来たり、ヤドカリを殻から出しては遊んでいる。
一緒に島の周りのサンゴ礁(ハウスリープ)を素潜りしたとき、海底のナマコを見つけて彼に差し出したら逃げて行った。
彼にも苦手なものがあるんだ。とか思ってたら、ナマコが白い糸状のものを放出していた。キュビエ器官だ。刺激を受けると肛門からキュビエ器官を吐出し、襲った動物の体表にねばねばと張り付きその行動の邪魔をする。そこらじゅうに張り付き、ネバネバ。たしかに気持ち悪い。
・・・イッチェンはずっとおばあちゃんと島にいて、学校に行かないんだ。リペルに聞くと、勉強が嫌でたびたび教室から脱走するらしい。とか、ニコニコ顔で教えてくれるのだが、小学校は義務教育だ。彼の将来のためにも、島で自由にさせておくのは問題がある。
せめてぼくが滞在している間だけでもと、算数の足し算とか、簡単な日本語とか教えていたのだが、次の日には脱走。家族がいる夏島に帰って行った。
その代わりやってきたのが、高校生の孫娘。ニヤカーベ(美人)さんだ。
聞くとバケーション。学校は休みという。
なんだかよくわからないが、どうやら孫たちはリペルを手伝いに交代で島に来ているもよう。チュークの伝統的生活様式の変容はあったのだろうが、家族社会の生活はまだ残っている。彼らは一族で支えあって暮らしている。