Flushに乗って、ぼくは3回も落馬した。それも人生初めての落馬だった。
最初の落馬は、馬と一緒にラグーンにジャブジャブと入ってった時のこと。手綱だけのはだか馬に乗ってるから、膝で馬体をはさみ落ちないようにコントロール。だんだん深みに行くにつれ、Flushは「深いとこはイヤでんねん」と先に進むのを嫌がる。それをなだめつつ浅瀬を歩かせてたら、深みに足を取られ前のめりに。。
あっさりとぼくは海中へ振り落とされた。鬐甲(馬の肩あたり)に手をかけ、バタ足で体を持ち上げてなんとかよじ登りって復帰。Flushも速く砂浜へ帰ろうと必死だ。
他の馬たちが浜を目指して戻りかけたとき、もう一度、深みへ行かせようとしたらFlushが怒った。
「なにすんねん、ワレ」
ぼくの手綱の指示を無視して浅瀬へ。そこでぼくを乗せたまま体を横にして転がった。「もういやや」
Flushは海底の深みに足を滑らせたのがよっぽど怖かったのだろう。。馬が転がれば、上に乗ってるぼくは落ちざるを得ない。
2回も振り落とされてぼくもめげた。
もう騎乗する気もなくなって、手綱を引いてFlushと砂浜をトボトボ。先にあがったみんなが待つ場所へ。Flushは、怒気のこもった黒い目でぼくをながめていた。
・・・ぼくはFlushに、乗り手として信頼してもらうのに失敗したのだった。