まだ腰の調子も良くて、元気にコートを走り回れてたころの話。
ナイター設備があるテニスコートの奥に、壁うちのエリアがあった。
そのエリアには照明は無く、夜に壁うちする人はいない。
ある夏のことだった。平日のナイターコートを予約して早めにコートについたとき、奥の壁うちエリアから壁うちしてる音が聞こえた。
ナイターのかすかな明かりを利用して壁打ちしてるらしい。
しばらくコートで友人の到着をまっていたら、携帯に連絡がありドタキャン。
ナイターコートはキャンセルできなかったので、壁うちの人に声をかけてみたらOK。週末のテニスコートでは見かけない顔だった。その人とストロークしてみて、テニスキャリアの違いを思い知らされた。
無口な相手はトーナメント選手クラスだった。
ジュースサイドからセンターに打ち込んでくるフラットサーブは、ナイトゲームということもあってボールに目がついていかず、ノータッチエースを簡単に決められた。
ニコリともせずにアドバンテージサイドへ移動。アドバンテージサイドから打ってくるスピンサーブは、ぼくのバックサイドに大きく弾み、何とか返せるだけ。。
全然レベルが違いすぎた。ぼくは1ポイントも奪えずラブゲーム。そしてミス連発でゲームセット・アンド・マッチ。スコアイズ6-0。まあ当然の結果。
ほとんど動くことなく試合はあっけなく終わったので、もうワンセットしましょうとなった。
チェンジコートをして、ぼくのサーブ。相手との格が違いすぎれば当然力む。体全体をしならせてフラット・サーブ。間違いは得てして起こる。自分でもびっくりするような球筋で、ボールはセンターのライン上に。相手は一歩も動けなかった。ん?どうした??
テニスってこんなに調子の波があるんだっけ?相手の驚愕する顔が見える。
次々とショットを決め、なんでこんなに調子がいいんだろうと僕も思う。というか、自分がボールを打っているのじゃなく、誰かがボールを打ってる感じ。自分では打ったことのないショットが次々と決まる。。相手は焦ったのか自滅気味。アンフォースドエラーがやたらと増えた。
試合の結果は覚えていない。接戦だったような気もする。そんなことに思いもよらないほど、ぼくは試合に集中してたのだろうか。ただ、試合が終わって相手と握手をした時に、相手がびびって目をあわせようとしなかったことが記憶に鮮明に残ってる。
やはり、あの時、ぼくは自分じゃなかったような気がする。なにが自分に起こってたのか、はっきりと説明することはできない。しかし、テニスが一夜でうまくなったということはない。なにしろ、その週末は、いつものフレームショットの連発のぼくだったから。。
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昔、梅雨の時期に日本各地で流行病が蔓延。亡くなった大勢の死者の弔いのため、梅雨の時期に咲くアジサイを寺の境内に植えたのだそう。
青白くて不気味だとして「幽霊花」と呼ばれて疎まれた時期もあったらしい。