水中から人間のおしゃべりのように、時に猫の鳴き声のように、そしてピーピーと笛を吹くような澄んだ音が聴こえてくる。イルカのエコーロケーションだ。
出っ張ったおでこの中にあるメロン器官で、彼らは0.3㎜の奥行空間分解能を持ち、大きさや材質だけでなく、形状まで把握する。
泳いでいる人間が子供なのか、女性なのか、ウェットスーツを着ているのかも判別するらしい。
イルカの群れのリーダーに気に入られると、群れは泳いでいるぼくらに興味を示し、近寄ってじゃれてくる。まるで、泳ぐっていうのはこうだよと教えでもするように。
イルカのリーダーに気に入られているのは島の男の子、イッチェン。彼が手を伸ばすとすれすれにかすめて泳ぎ去る。下から見てると、思わず、今触ったよね・・・とか思ってしまう。お兄さんのエリックが潜っていくと、下で泳いでた数匹も上がってきて群れは活性化。すごい速度でイッチェンの周りをぐるぐると泳ぐ。
イルカたちはローカルの男の子が好きなようだ。
別の機会に、日本人のゲストだけでドルフィンスイム。この時は若い女性が気に入られた模様。何度も彼女の周りをまわっていた。ぼくはといえば、子供を連れた母イルカの美しさに、ただ見惚れるだけだった。
正確に言えばホテルから空港への送迎は「Airport transfer」とでもいうのだろうか。
幾たびも利用してきたサービスだ。
考えてみれば約束した時間通りにドライバーが何の間違いも無くやってくるのは不思議だ。
当然のことといえば当然だが、ここは南の島。独特の島時間。
時間にルーズな人が多く、有り得ないけれど、そんな感じ。
旅行者はノンビリした雰囲気ってしびれてるけれど、生活だとまた違うはずだ。
ジープ島からモエン島へ戻った最終日。ホテルのフロントではウエルカムバックの歓迎。
フライトの関係で深夜のチェックアウトを伝えてのチェックイン。
1:30のピックアップに備えて、深夜12時ごろから乾かしていたダイビング機材のパッキング。
部屋に送迎のドライバーが呼びにくるはずもなく、1時にフロントへ。
深夜、ダイビングバッグをゴロゴロと転がしてフロントへ行く途中、セキュリティに呼び止められる。
・・・フロントは閉まってるとのこと。
そんなこともあるかと思い、すべて精算を終わらせておいたのが正解だった。
部屋のキーを返せばチェックアウト終了のはず。
そろそろ1:30。ピックアップの約束の時間だ。が、送迎の車がくる気配はナッシング~。
セキュリティに呼び出され、眠い目をこすりながらやってきたホテルスタッフ。
事情を飲み込んで彼の小型車で空港まで送ってくれることに。
南の島だからね。そんな思いのまま、流れに身を任せていたが、後で考えたらとんでもない非常事態。
だれも送ってくれず、タクシーなんてない島のことだから。しかも深夜のことだから、運が悪けりゃ飛行機に乗れない事態だ。
旅行保険には入ってたものの、Airport transferが来なくて飛行機にのれなかった場合は費用請求できるのだろうか。。
日本に帰れないという最大の危機から救ってくれた親切なローカルスタッフにつれられて空港へ。
着いたのはフライトの30分前。小さな空港なので出国手続きは短時間だ。
グアムへ出稼ぎ(?)に行く数人のローカルたちと、そしてそれを見送るローカルの娘たち。
いつもこの空港はそんな別れのドラマが繰り返される。
前の旅行では、若い男の子が体格の良い母親に見送られてたっけ。
都会へ子供を送り出す島の人々は、さびしいんだよね。
帰りたくないな・・・とぼやきながらも、グアムへ。。。
飛行機に無事に飛び乗ってから気がついた。
親切に空港まで送ってくれたローカルスタッフに、チップとして5ドルしかあげてなかった。
ぼくはなんという恥知らずなんだろう。後悔は先にたたない。
感謝してます。もう一度ジープ島へ行けたら彼に伝えたい。
キリショー・チャープ。
ジープ島の一日は、朝日とともに始まる。日本との時差は1時間。それゆえ、最初のうちは日本での体内時計に支配されるのだが、すぐにリセット。
旅行にはいつも使う100均の目覚まし時計も、次第にその文字盤を見ることは無くなる。
朝6時。日の出。元気なゲストにいつも先を越される。
洗面代わりに水着に着替えて海へ。
海からあがったら、お湯をもらってインスタントのモーニングコーヒー。
Mr.Brown(台湾製?)コーヒーが無くなったら、MOCCONA(オランダ?)の赤ラベル。
ネスカフェじゃない洗練された味。
キッチンには一応、ぼくの100均と同じような小さな目覚ましが置いてある。しかしリペルはゲストの様子を見て、だいたい7時ごろに朝ごはんのコール。
朝は、目玉焼き、肉野菜炒め、パンなど。
朝ごはんが終わったら、一周歩いて3分の島の中を散歩。
ゲストそれぞれ、デッキチェアーに寝転がって、それぞれ好きな方向の海をぼーっと見つめる。
現地の人たちが家の入り口に椅子を据えて座り、通りを日がな一日眺めている気持ちが理解できる。
要は何もする気が起きないのだ。
9時に修理中のコテージを作業する現地の人がボートで到着。大人のワンコたちがローカルを怖がってワンワン吼える。
その内に新しいゲストがボートで到着。日本人に対してワンコたちは大歓迎だ。
そしてダイビングボートのピックアップ。午前中のシュノーケル・ダイビングツアーの始まり。
昼に島に帰ってきて昼食。おにぎりなどその時その時のメニュー。
午後はイルカ。あるいはダイビング。
シャワーを浴びて夕日は18時ごろ。
薄暗くなって発電機が回りだすと夕食タイム。カレーライス、ハンバーグ、ローストチキン、肉野菜炒めのローテーション。
毎日それの繰り返し。自慢できそうなことはなんにもしないけど、それなりに充実した毎日。島時間。
2年前のジープ島。写真、ぜんぜん上達してねーぞ。
連休も終わり、日常が戻ってきた。
朝の出勤電車は始発に近い早朝の時間帯なのに、普段の日よりも人が多い。
みな憂鬱な月曜日に備えて早めの行動をしているのだろう。
全体的に早めの時間帯にシフトしてくるから、通勤のうっとうしさがさらに重なる。
ストレスに耐える日々がまた始まる。
日本の人々は基本的に仕事が好きなんだろう。
それにしても、東京の人の多さはどうなんだろう。集中することで経済が活性化するのだろうが、見捨てられた地方は浮かぶ瀬もない。
ひところ、政府が後押ししていた地方創生は、結局、絵に描いたもちだった。金をばらまいても、何の効果も得られないことが明白となった。
それでも、なんとかしなけりゃならない。
そうじゃないと、この先には、目もくらむような断崖絶壁が待ち受けている。
”逃げるのは恥だが役に立つ”。
逃げだしたた先で子供たちの笑い声が響いていれば、それも悪くない。
高齢者が日本の食料自給率を支えることもできよう。日本全体が南の島になればいい。
考えられる限りの方法で、この国の経済を最適化しなければ、地方都市の連鎖的な消滅を引き金に日本は消滅してしまう。
みなで知恵を出し合うしかない。