tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

物言う株主、経営者革命、日本的経営

2022年03月02日 16時22分11秒 | 経営

経済関係のマスコミでは、時折「物言う株主」という言葉が出てきます。最近は東芝が舞台になって、物言う株主が役員人事などについて意見を述べ、会社と対立しているようで、ネットや新聞にも出ています。

「物言う株主」とは、もともと「物言わぬ株主」という言葉があって、日本では、株主というのは、経営に対していろいろ言わないというのが普通だったところに、マネー資本主義の発展・盛行とともに、欧米から会社の株式を買い集めたうえで、会社の経営に口を出すいわゆるファンドが進出してきて生まれた言葉です。

今では日本でも欧米流のファンドが生まれ、外国に籍を置いたりして「物言う株主」を専門にやるところも出て来ているようです。

企業の経営というのは、歴史的に見ますと、初期段階では、カネを持っている人が出資して企業をつくり、自分が経営者になって、経営をやり、利益をあげて資本を増やす手段として始まったのでしょう。

そうしたオーナー経営者というのが会社の本来の形だったのでしょうが、もっと多くの資本を集めて早く会社を大きくしたいという事で、大勢の人に株式を持ってもらって、広く大きな資本を調達する方式が一般化し「大衆株主」の株式会社が生まれました。

大衆株主は、配当がたくさん来て、株価が上がればいいので、儲かりそうな株を買い儲からなければ売るという事で、経営に口を出すより、良い経営者の会社の株を買えばいいわけです。

経営は専門家である〔経営者〕にまかせていればいいと考え、経営には口を出さないのが(特に日本では)通例でした。

結局株式会社というのはそういうことになると洞察したのが、アメリカのJ.バーナムという学者で、『経営者革命』という本を書いて、「資本家経営者」の時代から、企業では次第に「資本家」と「経営者」は分離し、企業は、経営者という専門職によって経営されるようになるのだという指摘をして大変有名になりました。

しかしここ20~30年でしょうか、マネー資本主義が発展してきて、企業の経営などは面倒だからカネでカネを稼ぐというビジネス(マネーゲーム)が大流行になりました。

そうして生まれたのが「ファンド」でしょう。単純に言えば、儲かりそうな会社の株を買って、儲けたら売って、また別の儲かりそうな会社の株を買う、100株、1000株の売買ならデイトレでしょうが、もっと大きな資金で、大株主になり、大儲けを狙うというのがその神髄です。

法律的には、株式会社は株主のもので、大株主の意見は株主総会では最も重要です。そうした立場で、この会社はこうすればもっと儲かる、だからこうすべきだ、と主張する「物言う株主」の登場という事になるのです。

専門経営者としてその会社の経営を長年やってきた社長(経営トップ)と株の値上がりで儲けようという大株主の意見が食い違うと、『物言う株主』登場という事でマスコミの記事になります。

会社が順風満帆なら問題ないのでしょが、会社の経営が些か巧くないような時は、経営者がファンドの攻撃を受けやすくなり、有名企業だとマスコミがにぎわいます。

日本的経営では、企業は基本的に人間集団という意識が強いですから、その人間集団の中から選抜された経営者に同調(同情)する人が多いようです。

また日本的経営では、おカネにも出自があって、「額に汗したカネ」(モノづくりで稼いだカネなど)が本当のカネで、株の売買で儲けたカネなどは「あぶく銭」「浮利」などと蔑む意識があるので、「物言う株主」は仇役のように見られがちです。

どちらの意見が良い結果を生むかは「ケース・バイ・ケース」でしょう。