tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

円安119円台へ、円評価に変化か?

2022年03月19日 17時10分33秒 | 文化社会
円レートが118円台になってビックリしていましたら、今日は119円台です。
2013年、14年の二回の黒田バズーカで120円までの円安を実現したのですが、その後も「万年経常黒字」を背景に「有事のドル」に代る「安全通貨の円」で105円から110円辺りの上下でした。

こうした円への評価、安全通貨という認識が、黒田日銀の円安メリットの一貫した認識に繋がり、異次元金融緩和の長期継続となっていたのでしょう。

しかし、このところの状況を見て、何か基調的な変化があるのではないかといった見方もあるようで、このまま120円を切り上げると円の暴落につながる恐れすらあるといった意見まであるようです。

そこで気が付くのが、昨年12月、今年1月と経常収支が赤字になっていることです。
このブログでは、「万年赤字のアメリカ」と「万年黒字の日本」と対照的に書いてきましたが、実は今年の1月は大幅赤字なのです。

  経常収支  貿易収支  サービス収支  第一次所得収支
12月  -3708    -3187    -3213      3988
1月  -11887   -23422    -7379      12880
     (単位:億円) 
赤字の原因は、貿易収支とサービス収支の赤字にあることは明らかですが、サービス収支は、一時来日観光客の増加で赤字が減りました(物品購入は輸出勘定)。しかし今は消滅、最大原因の貿易収支は、実は以前は黒字稼ぎの旗手だったのですが次第に輸出入トントンといった状態になり、コロナ問題が起きてからは、ワクチンの輸入などが赤字化の要因になり、そしてそれに追い打ちをかけたのが今回の原油の値上がりという事のようです。

従来は貿易収支、サービス収支がある程度赤字になっても、第一次所得収支(海外投資からの利子・配当など)の大幅黒字が赤字を吸収して余りありで万年黒字というのが常態でしたが、コロナの長期化、更に原油など資源の値上がりで第一次所得収支では吸収しきれなくなったというのが率直なところでしょう。

さて、問題はこの現状をどう判断するかです。
長期的にみれば、アメリカに見るように、第一次所得収支やサービス収支が今でも巨大な黒字を出していても、「ものづくり」のほとんどは海外移転で、貿易収支がより巨大な赤字を計上、結局経常収支は万年赤字というのが、経済発展の行方だなどと言われます。

アメリカは一方で巨大が資源国でもありますから、未だいいのかもしれません。日本は無資源国ですから、国内の付加価値生産だけがGDPを生み出すことで生きる国なのでしょう。

その意味では、円安は、日本には最大の恩恵を与えてくれているのです。
黒田総裁の円安重視の姿勢は、まさにそれを意識してのことでしょう。

ただし、もう一方ではそれを生かして貿易黒字を稼げば、対アメリカをはじめ国際摩擦を招き、その結果円高を招き、深刻な不況に苦しむ可能性(平成不況)が出てきます。

という事で、今後の日本経済について、その弱体化を案じ円安進行を心配する立場と、強い経済力を回復しつつ、円高を恐れる立場とが、それぞれ日本経済の将来を心配しているのでしょう。

さて、日本の選択すべき道は何処にあるのでしょうか。