tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

経団連、富裕層への課税強化を提言

2024年12月10日 11時42分37秒 | 文化社会

経団連の十倉会長は、賃金問題についても積極的な発言をされ、このブログでも注目してきましたが、来年5月任期を終えるという事で、総纏めという事でしょうか「2040年を見据えた『公正・公平で持続可能な経済・社会』の実現に向けた提言」を経団連として発表しています。

日本に、改めて分厚い中間層を創り出すという視点で<Future Design 2040 「成長と分配の好循環」>と題して、税・社会保障の問題から環境・エネルギー問題、地域経済につては広域行政の問題などなど、広範に論じています。

その中でも特に注目したのは「全世代型社会保障」という視点で、基本的な考え方として、社会保障負担が重すぎる現状から考えて、社会保障負担を減らし、その分を税金でカバーするという、大きな観点があるようだという事です。

今の臨時国会で問題なっている103万円、106万円、130万円といった「壁」の問題も社会保障問題と大きく関係しています。

社会保障負担から税負担に負担の仕方を変えて行くという考え方は、今の日本の現状から考えれば、やはり検討すべき大事な問題だという感じがするわけです。

経団連の提言には消費税(=付加価値税)の視点も入っています。ヨーロッパ諸国の方式でいえば、社会保障の財源は付加価値税が中心という考え方が基本になるのかもしれません。

勿論、税・社会保険料の合計である「国民負担率」は、高齢化が進み、加えて少子化という、具体的な数字でいえば「合計特殊出生率」の低下という条件の下では、上がらざるを得ないのは当然で、ヨーロッパ諸国も特に少子化では長く苦労している国も多いわけです。 

勿論そのせいで、ヨーロッパ諸国では付加価値税が高いのですが、同時に、所得税の最高税率も高いのです。

例えばスウェーデンの個人所得税の最高税率は57%です。日本と比べてみれば良く解りますが日本は現在45%です。

こうした諸点にかんがみ、経団連は、所得税の累進税率の引き上げ、55%程度を提言しています。そして更にそれに加え、資産への税負担も示唆しています。

経団連は大企業中心の企業に支えられ、役員などは殆んど大企業の経営者であることを考えれば、思い切った提言かもしれません。

考えてみれば、長期の低成長経済の中で、日本も、このところ急速に格差社会化しているようです。経団連がこの点に注目しているとすれば、日本の財界にも新しい風という所でしょうか。

嘗て、高度成長時代には、日本の個人所得税の最高税率は80%程度だったと記憶しますが、そうして分厚い中間層を作って来ていた日本の過去を見れば、日本には本来格差社会はなじまないという考え方も受け入れられるのではないかと思うところです。

いずれにしても、経団連が、富裕層負担で社会保障負担軽減という考え方を打ち出したという事は、これからの日本社会に一石を投じるのではないでしょうか。

期待して、社会の反応を見たいと思う所です。


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