バイデン大統領は、任期内で可能なことは、きっちりしておこうと努力されているようですが、国際情勢は、トランプ氏の登場を前に、何となくざわつく様相です。国内は政治改革と経済政策が、少数与党という条件の中でどんな議論になるのでしょうか。
そんな中で、日本経済の今後に最も影響があると思われる来春闘についての動きが報道されています。
去る26日、石破総理は、来春闘に向けての政労使会議を開いて、労使の意向を聞きつつ、最低賃金1500円に向けての要請もしたようです。
27日には金属労協が来春闘の賃上げ目標として、今春闘の1万円を上回る1万2千円の要求基準を発表しています。
政府のバラマキや補助金が役に立たないと、このブログでは指摘していますが、政府が自分の役割の限界を理解した上で、来春闘の賃上げに関心を持つのは結構ですが、気になるのは、政府が自分の意見を伝えるためにやっているように思われる点です。
もともと賃上げは労使が自主的に決めるもので、政府は関係ないのです。その代わり、政府は財政・金融政策という手段を持っていて、必要があればそれを使うのです。
今度のアメリカ、ヨーロッパのインフレも、石油や木材などの資源価格の上昇に刺激されて賃金が急上昇し、賃金インフレを加えて消費者物価上昇が8-10%に達し、それを政策金利を引き上げて収めようとしたが、金利引き上げは景気抑制と通貨高を伴うので、FRBもECBも対応策に苦慮した(している)というのが実態です。
日本の春闘ではそうした賃金上昇はありませんから物価は上がらず円安が進み、主要輸出企業が大儲けという事で今春闘の満額回答続出という異常状態でした。
欧米と事情が違い過ぎる日本の労使の行動に、日銀は金利引き上げの時期を待ちながら10年以上も苦慮し続けるというのも、日本特有の問題です。
賃上げが高すぎる欧米、低すぎる日本という、労使関係の文化の違いが齎す問題にそれぞれが苦労しているという構図でしょう。
所で、来春闘に向けては,連合が、中小企業に特に配慮して、中小の賃上げ目標は1ポイントプラスの6%と設定しました。政府は公労使が決める(政府は入っていない)はずの最低賃金の目標に、早期に2029年までに1500円にするという目標を提示して上記懇談会に「そのための環境整備」をすると労使に伝えたようです。
政労使が一堂に会したことは大変結構ですが、写真を見ますと政府が労使代表を前において、懇請しているのか、指示しているのかは解りませんが、政労使3者が対等の立場で、意見を交換するというものではないようです。
その翌日の27日、日本で最も開明的な労働組合組織として知られる金属労協が来春闘の要求基準1万2千円を発表しました。単産の要求は、今春闘を超えそうです。
こうした種々の動きから感じられるのは、要求基準は上がりそう。中小は連合が応援する、政府は法律で強制する最低賃金の大幅引き上げを望む、などなどで、平均賃金水準の一層の引き上げと、賃金格差の是正を労使が望み、政府はその環境整備をするという動きです。これが進めば大変結構なことですから、大いに応援したいと思いますが、最も難しいのは格差是正ではないかという気がします。