午前中の最後は今日の大会長 阿部裕さん(明治学院大学・四谷ゆいクリニック)の大会基調講演でした。
ご自身のクリニックでの診療をもとに、「単に言葉が喋れるだけでなく、患者の文化社会的背景も理解している医療通訳者は必須。精神科の医療通訳者は、患者にとって安心というだけではなく、医療者にとっても安心で、信頼できる人であってほしい」と話されました。
午後は通訳者の資格化についてです。
①世界の司法通訳ーオランダの通訳人・翻訳人登録制度 渡辺修(甲南大学大学院)
2006年にオランダで調査した内容の報告。欧州人権規約に関するEUでの議論をもとに「法廷通訳人及び宣誓翻訳人のために登録制度を設ける」と始まった。
①刑事手続きについては裁判所・検察・警察はこのリストに登録された通訳人または宣誓翻訳人を使わなければならない。
②リスト搭載に必要な資格要件は「語学の習熟度、専門用語の知識、翻訳技術、文章化技術、聞き取り技術、客観性、信頼性、職業倫理」を含む
③管轄大臣が職業新門下としての信用性にかかわる事情を発見した時はリストから外すことができる。
④リスト搭載後2カ月以内に住居地を管轄する地方裁判所において宣誓手続きを行うこと。
⑤この法律に基づいて通訳人及び宣誓翻訳人は守秘義務を負う。
②司法通訳のクオリティ・コントロールをめぐる問題 水野真木子(金城学院大学)さん
裁判員は法廷で提示される証拠よりも、被告人や証人の印象に左右されやすい。通訳人が付いた場合、彼らが通訳人の言葉をそのままに被告人や証人の言葉として受け止めるであろうことは想像に難くない。今後、司法通訳の質の向上のためにはチェック機能のない現在の登録制度を大幅に見直す必要がある。オーストラリwの例をもとに話されました。
③文化の翻訳に資格は要らないー制度的通訳と文化人類学― 池田光穂(大阪大学)さん
公共サービスが必要とされる社会や時代において通訳者の標準化や倫理的規範の確立は不可欠。問題はいったい誰が、別のだれに対して、どのような権限を、どのようにして与えるか、そしてどのようにしてその制度を維持するのかについて基本的設計が必要だろう。文化人類学は得助けできるかもしれない。
④コミュニティ通訳者の育成の課題飯田奈美子(多言語コミュニティ通訳ネットワーク)さん
コミュニティ通訳とは 対人援助場面での通訳が多い
コミュニティ通訳者の現状と課題育成の課題
この中で事例検討会を行う意義について
ひとりで抱え込まない
問題点を把握できる
通訳者が援助の意味を理解できる
通訳者の役割を理解できる
通訳の役割などについて通訳ユーザーに知ってもらう
⑤特別発言として砂田武志さんが、「手話通訳の育成についての現状と課題」
と題して話されましたが、内容は手話には「日本手話」と「日本語対応手話」があり、日本手話を話すのがろう者である。手話通訳士は現在2000人を超えているが日本手話を理解できる通訳士は200人くらい(根拠は世田谷と国リハの卒業生が110人、あとコーダを入れて…)
日本手話の通訳を養成しているのは上の2校のみである といった内容で 残念でした。
砂田さんが連れてこられた日本手話の通訳のベテランが会場からの質問に答える砂田さんの発言を音声語に変えることができず、砂田氏が2度・3度と繰り返し答えておられるのは皮肉でした。(口出ししたくなっちゃいました)
私はろう者の手話を上のように二つに分け、対立させるような考えには立てません。砂田氏は「同時法的手話」と呼ばれていたものが「日本語対応手話」であるとおっしゃっていましたが、ろう教育の栃木における一方法であった同時法で使われたものが「日本語対応手話」だとすれば日本語対応手話」を現在使っているろう者はいないのではないでしょうか。また上位語である音声日本語の干渉をまったく受けていない手話もまた…。