調査では世帯の手取り収入と世帯人数で計算する「等価可処分所得」が122万円未満を低所得層(1)、122~183万円未満を低所得層(2)、183万円以上を一般層と三つに区分け。低所得層(1)(23・3%)と低所得層(2)(23・9%)を合わせると約5割に上る。全国的に比較できるデータはないが、県は厳しい現状が示されたと捉えている。
今回の調査は2015年度の「沖縄子ども調査」、16年度の「高校生調査」に続くものだ。これで子どものライフステージに沿った調査が出そろったことになる。
小学校入学の準備では「学用品やランドセルの購入費用が不足しそう」と答えた人が低所得層(1)で4割を超えた。
過去1年間に子どもを病院や歯医者で受診させた方がよいと思ったが、受診させなかった割合は低所得層(1)の5歳児で約3割。理由は「家計が苦しかった」が約5割だった。保護者自身も4割以上が受診を抑制していた。理由はやはり「家計が苦しかった」が5割を超えた。
調査の自由記述で「お金がないからカゼひくなと言ってしまいます。本当は大丈夫?と言いたいのに」との保護者の言葉は切実だ。
1歳児と5歳児といえば人間形成の重要な時期である。乳幼児期にすでに負の連鎖に巻き込まれているのを深刻に受け止めなければならない。
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気になるのは「児童扶養手当」や「生活保護」「生活福祉資金貸付金」「母子父子寡婦福祉資金貸付金」などの福祉制度への理解が進んでいなかったことだ。
低所得層になるほど「利用の仕方がわからなかった」「制度やサービスについてまったく知らなかった」との回答が高かった。
行政はもっと低所得者へ情報が行き届くよう周知の工夫と徹底を図る必要がある。
かつて沖縄は「ユイマール」(助け合い)という言葉に象徴されるように、親族関係の濃密な結び付きとともに、「地域の力」が健在だった。
だが、核家族が急速に進み、地域社会とのつながりが希薄になっている。
子育ての悩みを相談したり頼ったりできる友人・知人が「あまりいない」「まったくいない」人は低所得層で20%前後いる。地域から孤立している姿が浮かぶ。
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若い親ほど生活が厳しいという実態が浮き彫りになった。所得が低くなるにつれて「10代」「20~24歳」での出産の割合が増えている。
母親でも、父親でも、初めて親になった年齢が低くなるにつれて、パートやアルバイトなど非正規で働く割合が高く、正規で働く人が減る傾向にある。
子どもの貧困対策では乳幼児期の支援の重要性が指摘されている。そのためには乳幼児を抱える親の就労支援が大切だ。行政には子育て世代の就労支援に力を入れてもらいたい。柔軟な勤務時間など企業の配慮も欠かせない。
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