食料の1/3が捨てられている・・・。
ショッキングなファクトです。
ロバート・マルサスが人口論の中で指摘した食料は等差級数的に増えるのに対して、人口は等比級数的に増加する・・・そして破綻するということ。
この悲観論は、人類の英知、農業革命で回避することが出来ました。
しかし、世界的に見ると約7億人の人たちが飢えていると言われています。
日本国内でも、こども食堂や貧困により食べることが難しい人たちが確かに存在しています。
コンピニの売れ残り商品の廃棄、環境に良くない肉食の増加、賞味期限と消費期限の問題、大食い大会などなど、身の回りにも様々な食品問題があります。
食料危機 パンデミック、バッタ、食品ロス
井出留美著 PHP新書 950円+税
著者は、食品ロス問題ジャーナリスト。
博士(栄養学)、修士(農学)ホルダーで、海外青年協力隊やライオン勤務、日本ケロッグ勤務などの実務経験も豊富な方。
川口市でも知見を活かした食品問題の解決に向けての活動をされています。
そういえば、去年の10月、国連WFPがノーベル平和賞を受賞しました。
人類にとって、コロナによるパンデミックも大変ですが、食料問題は人間の生存の根幹にかかる大問題です。
目次
第1章 食料危機の現状
第2章 食料危機の原因
第3章 日本の食料危機の歴史
第4章 食料を確保するためには
第5章 私たちができる100のこと
食料危機の原因は、分配の不平等、搾取主義の食料システムとヒエラルキー、食品ロス、気候変動、バイオ燃料(バイオエタノール)、肉食の増加、バッタの害、ミツバチの減少、新型コロナウイルス感染症などにあると著者は指摘します。
そして、2050年には世界人口は100億人・・・このまま行けば、どう考えてもサステナブルに行くとは思えません。
このため、食料を確保するための方策として次を挙げています。
1 食品ロス削減
2 消費者啓発
3 昆虫食
4 培養肉の開発
5 食のシェア・・・フードバンク、フードドライブ、おてらおやつクラブ、カフェ・ソスペーゾ(次の客の分まで払う)
6 生ごみの資源化(リサイクル)
14億人の人民を抱える中国でも習近平主席が「光盤運動(皿を空にする)」を打ち出しています。
満漢全席に代表する中華料理の文化にも影響しそうですし、将来的には罰則もあるということでした。
国内では、長野県発祥の「30・10(さんまる・いちまる)運動」が脚光を浴びています。
30・10運動とは、宴会などで最初の30分と最後の10分間で食べること、飲むことに集中しましょうということのようです・・・これによって飲み残し食べ残しを削減していくということのようです・・・なるほど。
食料問題は、地球環境問題でもあるように思います。
SDGsのフレームの中でも、「食」を巡る課題は極めて重要です。
そして、最終章では、「私たちができる100のこと」を取り上げています。
100個の食料を巡る提言・・・圧巻です。
ひとり一人が、家庭で出来る事を箇条書きで100個。
ぜひ読んでいただきたい最終章です。
人類として、出来る事はやっていかなければならないと痛感した一冊です。