「ドラッカー、読んだ?」電車の中で二人の女子高生で出てきた言葉。
おじさんとしては、複雑な気持ちです。
昔、職場の上司から言われた「ドラッカー、読んだ?」とオーバーラップしてきます。
数十年前に一所懸命学んだ目標管理、事業部制、イノベーションなどなど・・・。マネジメントというコンセプトを発明したドラッカー博士の書物を読みあさりました。
しかも、当時は日本語訳版は難解というか抽象的。
かなり苦労した思い出があります。
マネジメントの大御所、ドラッカー博士をここまで認知させた「もしドラ」の存在感は、本当にスゴイと思います。
2009年12月に岩崎夏海氏が書いた「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」/ダイヤモンド社刊は、1年半たった今もベストセラーとしてランキング入りしています。200万部にせまる勢いとのことです。
もしドラがベストセラーとなった理由を考えてみました。
1.高校野球とドラッカーという異質な組み合わせが創出する新規性
2.表紙の斬新なデザインによるアイキャッチ
3.ドラッカーをはじめとする経営書を専門とするダイヤモンド社からの刊行
4.抄訳マネジメント等のドラッカー著とのバンドルセールス
5.昔、ドラッカーを挫折したおじさん層の購読
6.高校野球やスポーツ関係のマネジャー、監督、コーチ、選手、キャプテン等にネットや口コミで浸透したこと
7.親父が購入、息子や娘が読み、さらに配偶者が読むという幅広い読者の獲得
8.日本人の持つまじめな性格と流行に追いつこうという学習態度
出版不況と言われている中、上述のような要件が具備されれば売れるのか?
あるいは千円以上の書籍は売れづらいといわれている中、1680円という価格はどうなのか?
といった疑問符が浮かびます。
書店に行くとドラッカーコーナーが設けられ、二匹目のドジョウを目指した類書が続々と登場。
コトラーやポーターのもしドラ版まで出版されているようです。
表紙には、少女マンガ風、もえ系風の美少女が登場、内容は、マネジメントやマーケティングの理論をベースにした小説風の展開。
いやはや大変な時代となってきました。
さらにニーチェやウィトゲンシュタインなどの哲学本も売れ始めているとのこと。
岩波からはサルトルの文庫も。
また、難解なサンデルやロールズの公共哲学のジャンルもベストセラーランキングに入っています。
エンターテイメントに針が振れたものに対して大衆が飽き、リベラルアーツに振り戻している過程なのではないか?と考えているところです。
1960年代~70年代の学生運動の時代に広く読まれたというマルクスやサルトル。
若者のファッションとして、コミュニケーションの手段として、あるいは流行として教養や文化が介在することは、個人的には好ましいことだと考えています。
パンとサーカスの時代から、リベラルアーツの時代に戻っていくプロセスなのかもしれません。