欧米で「商いのバイブル」と言われている一冊の本があります。
お客さまがまた来たくなるブーメランの法則 スーパークインの顧客の声を聞くしくみ
ファーガル・クイン著 太田美和子訳 かんき出版
スーパークインは、英国のお隣アイルランドにあるスーパーマーケット。
1960年に開業。
売場面積200㎡、従業員8名で始めたスモールビジネス。
今では、30店舗、5000名以上の従業員を抱える首都ダブリンの地域一番店になっています。
イトーヨーカ堂名誉会長の伊藤雅俊さんとも交流がありました。
このスーパークインの特徴は、お客さま接点を徹底的に突き詰めたところにあります。
「顧客志向」の走りといってもいいと思います。
モニター、アンケート、ご意見メモ、サービスカウンター、苦情対応、市場調査・・・。
とにかく顧客のウォンツやニーズを探索して、対応策をスピーディに展開していくことが基本動作になっています。
あたりまえのことをあたりまえに、バカになってやる、ちゃんとやる・・・。
日本でも、頭文字をとって「A」「B」「C」と言われています。
アタマでは分かっていても、なかなか実行できないのが、人です。
目次
1 顧客志向・・・確実に儲かるビジネス手法
2 リピートビジネス・・・利益がついてくる商売の王道
3 顧客感覚・・・自己都合を捨てて客になりきる感性
4 顧客理解・・・お客さまの声を聞く仕組みづくり
5 顧客聴取・・・トップの変化察知で即市場対応
6 苦情収集・・・必ず生産性に結び付く問題解決提案
7 モニター会議・・・顧客志向の決意表明と活動推進
8 苦情歓迎・・・利益創出と商品、サービスの質向上
9 「人」感覚・・・多数を呼び込む心のこもった接遇
10 顧客接近・・・競争優位を生む顧客からのアプローチ
11 非日常主義・・・顧客に足を運ばせる場の楽しさと驚き
12 非数値志向・・・長期と短期で異なる費用対効果
クイン社長のリーダーシップは強烈。
本社は持たない、お店で仕事、売場に立つ、お客さまに話しかける・・・。
顧客視点を徹底しています。
渥美俊一さんが提唱したチェーンオペレーション理論とは真逆なマネジメントを行っています。
定番のレジ横にお菓子を置いていたのを、子連れのお母さんの声で撤去したり、こどもが遊べる遊具を備えた巡回バスを造ったり、最後には各店舗の売り場スペースを削りこどもの遊び場を造りました。
レジ横でお菓子をねだるこどもたち、それをあやめるお母さん、子ども連れで売場を回る大変さを解決しました。
面白かったのが、非日常主義。
顧客に足を運ばせる場の楽しさと驚きを、お店で創出しようというものです。
POPの誤字脱字を見つけたお客さんにワイン贈呈、お店でハロウィンパーティ・・・。
「ロマンチックな夕べ」イベントも好評だったようです。
来店した男性には数字のついた青いバッジ、女性にはピンクのバッジを配布し、同じ番号の相手を見つけたらワインを贈呈するという催しです。
男女が知り合うのは、ディスコやバーではなく、買物場面で親密になるという経験則に基づくとのことです(笑)。
少子化の進む日本でも使えそうです。
お見合いパーティや婚活アプリより効きそうですね。
それにしても、最近の小売店は画一的で面白味がないですね。
ただ商品を並べている無機質な倉庫のようです。
チェーンオペレーションの単なる横展開、冒険しないバイヤー、商品のコモディティ化、同じコンサルタントの指導による同質化・・・ワクワク感、ドキドキ感のある売場がありません。
小売業の最先端を走る米国では、「体験経済」が注目されているようです。
「感動」や「驚き」があるエンタメ的な売場、買い場が欲しいですよね。