ウクライナの戦争、ガザ地区での無差別殺戮、イエメンでの紛争・・・。
世界の戦禍は絶えることがありません。
人類の性・・・実に悲しいことです。
現在、旧日本銀行広島支店で「1944年 ワルシャワ蜂起」展が開催されています。
テーマは、「ワルシャワ。灰の中から蘇る不死鳥」。
ワルシャワ蜂起博物館、ポーランド広報文化センター、広島市が主催しています。
戦後、左翼、右翼といった異なるイデオロギーや価値観の中で、よくこれだけ資料収集できたものだと感心した次第です。
ドイツとソ連という大国にはさまれたポーランドという国。
第二次世界大戦の中でヒトラーのナチスドイツ、スターリンのソ連によって蹂躙され、国土分割、徹底破壊という悲劇の舞台となります。
高校の教科書でも「ワルシャワ蜂起」が出てきますが、時間切れで授業が行われないことが多いようです。
今回、この展示を観て、大きな衝撃を受けました。
ワルシャワは、ポーランド共和国の首都。
産業、工業の基盤を持つワルシャワ・・・美しい建物が並び、「北のパリ」と呼ばれたそうです。
「革命」を作曲したフレデリック・ショパンもポーランド人。
高度な文化、芸術、産業、商業で130万人の人口を持つ大都市になりました。
反ユダヤ人、反スラブ民族を打ち出したナチスドイツ。
ヒトラー、ヒムラーは、ユダヤ人、ポーランド人の排斥を進めます。
アウシュビッツなどの強制収容所、都市まるごと徹底破壊する・・・人間は、ここまで残酷、残虐なことが出来るのか?
ユダヤ人は、600万人が殺戮されたと言われています。
首都ワルシャワでも130万人の人口が90万人に減り、1945年にはわずか千人になったそうです。
最後の展示室には、1945年のワルシャワの空撮のVTRが流されています。
これは、原子爆弾を投下された広島市と同じ残酷な光景が広がっています。
広島市は、たった一発の原爆で14万人の市民、軍人、アジア人、米国人が虐殺されました。
哲学者ハンナ・アーレントは「悪の凡庸さ」を指摘しましたが、人類の持つ理性や良識というものは一体どこに行ったのでしょうか?
今回の展示を観て、ヨーロッパの地政学が今でも続いていることに気づきました。
ロシアがウクライナに攻め入るのも、イスラエルがガザ地区でハマス廃絶を徹底するのも根っこは同じだということです。
「やらなければ、やられる」
過去の大量虐殺、ホロコーストの影に怯えながら生きて行く民族には、論理や倫理や理屈ではない肌感覚というかDNAが組み込まれているように思います。
ポーランドという、地政学的に極めて厳しい場所にある国。
他国の蹂躙を受けながらも、ワルシャワ市民、ポーランド国民は立ち上がりました。
それは愛国心もありますが、家族や自国民を守るための自衛戦争だったのだと思います。
もし、半島の国や大陸の国が、この国に攻め入った場合、自分はどうするのか?
考えてしまいました。
以前であれば、「逃げる」という選択肢しかない自分がそこにいました。
(そもそも「逃げる」場所などないのですが・・・)
今回の「ワルシャワ蜂起」展を観て、その考えは大きく変わったように思います。
焼け野原となったヒロシマも広島市民の力で復興することが出来ました。
ワルシャワの街も美しく蘇っています。
人類は基本バカで単純で感情的で残虐ですが、一縷の希望はあると思います。
この展示、旧日本銀行広島支店の3階で2月5日まで行われます。
入場料は無料。
買えば数千円はするであろうカタログも無料でいただけます。
ぜひ足をお運びください。