「経営者は昇進・昇格する人材をどのように見分けているのか 社員の動機づけと顧客価値実現に成功する組織づくりのために」
中村壽伸著 日本生産性本部生産性労働情報センター刊 1500円+税
タイトルは、どこかハウツー本的でスルーしようと思ったのですが、目次を見て、その切り口の鋭さに魅かれて購入した一冊です。
タイトルを変えるともっと売れる本だと思います。
著者の中村さんは、人事コンサルタント。
日本経営システム研究所の社長をされています。
同書は、危機感から書かれたと著書は述べています。
日本のビジネスパースンのレベルが下がっている・・・。
労働生産性は世界で20位、時間当たりの労働生産性も世界で20位・・・。
たしかにそのとおりだと思います。
報告、連絡、相談ができない、計画性のない仕事の進め方、ビジネスマナーさえも???
スキルダウンは、まさに危ない領域に入っているように思います。
にもかかわらず、考えない、努力しない、勉強しない・・・。
そういう彼彼女に対して、おじさんはただ怒るだけではダメで何らかの手立てを打つことが必要です。
そういった意味では同書を、若手社員、中堅社員に読ませることは、それなりの効果があるように思います。
が、「私は、管理職になりたくないもん」という若手・中堅社員が増加する昨今。
著者は、管理職希望者の減少は人事制度の失敗としていますが、そのとおりだと思います。
責任もあり、つらい仕事ばかりでも、やりがいもあり処遇もいい、何よりかっこいい・・・そういった管理職のポジションを会社がいかに提示できるかということだと思います。
◆目次
第1章 経営者が期待する昇進・昇格適格要件と、社員の認識とはどうすれ違っているのか
第2章 経営者は昇進・昇格で何を実現したいのか
第3章 経営者は等級制度を活用してどのような人材を昇格させるのか
第4章 経営者はどのような人材を昇進させるのか
第5章 あとがきにかえて 昇進・昇格に相応しい人材として認められるにはどうすれば良いのか
同書では、昇格と昇進の違い、今までの人事制度の歴史や変遷、部長・課長・係長の違いといった日本の人事の概要を理解することにも役立ちます。
また、なかなか辛口の著者は一刀両断。ズバリと切り込みます。
「きちんとした日本語・敬語を話すこと そうでなければ昇格は途中でとまる」
「会社や顧客が求める人材に素早く成長するには、その場主義に徹すること」
「池ポチャが出来る人は評価が高い」
「チームメンバーとして成長せよ」
「新任管理者研修は、出遅れ研修」
「部下には3年先の稽古を積ませる」
「マネジメントとは決め事を徹底すること」・・・
なかなか厳しい突っ込みですが、日本の企業では当たり前だったこと。
その当たり前が当たり前に出来なくなったことが、グローバル競争での苦戦にもつながっているように思えます。
電車に乗っても、スマホや漫画で時間をつぶすニッポンのビジネスパースン。
プライベートは充実しているのに仕事に関しては、「考えない」「努力しない」「勉強しない」の3ナイ主義・・・これでは、ビジネスの世界では戦えません。
われわれ怒れる親父の代言をしていただける一冊です。
しかしながら、経営者、管理者自体のスキルやクオリティが下がっていることも大きな課題。
特に雇われ社長については深刻な状況にあります。
任期は3~5年の間、波風を立てずに切り抜ける・・・そういった風が蔓延しつつあります。
どこかの本やセミナーで聞いてきたリスクマネジメント、コンプライアンス、デュープロセス、セクハラパワハラ防止などをトップダウンで導入・・・社内は紙だらけ、手続きだらけ・・・ほとんど役所の体をなしています。
社員は分断されコミュニケーションはとれず、言われたことしかやらなくなる、叱られるので余計なこと(新しいこと、付加価値のあること)は一切しない・・・そんな状況に日本の会社は成り下がっています。
これでは競争力が下がっても当然です。
これもアングロサクソンの陰謀なんですかね(笑)。
次の一冊は、ぜひとも経営者への「喝」入れ本を出していただきたいと思っています。