軽井沢と言えば、堀辰雄。
風立ちぬ、いざ生きめやも・・・。
初めて読んだのが、中学生の頃でした。
サナトリウム、リルケ、バルコン、ヴィラ、ニイチェアン・・・
ちょっとハイカラでセンチメンタルなストーリーは、多感な中学生に大きな影響を与えました・・・。
風立ちぬ、いざ生きめやも。
Le vent se leve・・・
フランスの詩人ポール・ヴァレリー「海辺の墓地」の一節です。
ヴァレリーは、マラルメに師事した象徴派の詩人であり思想家・・・。
その堀辰雄がこよなく愛した軽井沢、信濃追分・・・。
その地に堀辰雄文学記念館があります。
堀辰雄終焉の家を中心に、書庫や展示室などで構成されています。
30歳の時に婚約した矢野綾子・・・翌年に死去。
そこから代表作「風立ちぬ」が書かれます・・・。
34歳の時に、加藤多恵と結婚・・・軽井沢に新居を移します。
堀辰雄直筆の文学碑
春の大和に往って
馬酔木の花ざかり
を見ようとして途中
木曽路をまはって来たら
思ひがけず雪がふっていた
昭和18年4月13日 堀辰雄
信濃追分、軽井沢・・・東京生まれの堀辰雄が愛した土地でした。
東京帝大時代には、室尾犀星、芥川龍之介に師事・・・室尾犀星に誘われて、19歳の時に、はじめて軽井沢の地を訪れます。
堀辰雄が最も影響を受けたのが、天才詩人萩原朔太郎。
「青猫」「月に吠える」などに強烈なインパクトを受けたようです。
(「青猫」は、小職が最も大切にしている本の一つです・・・)
個人的に思うのが、堀辰雄は天才肌ではなく、自然叙述的な表現を丁寧に、丹念に、努力を積み重ねていく作家・・・朔太郎のアプローチとは、対極的なポジショニング。
それゆえ、堀辰雄に惹かれるのかもしれません。
堀辰雄の代表作は、「ルウベンスの偽画」、「聖家族」「美しい村」「風立ちぬ」「菜穂子」「大和路・信濃路」などがあります。
どの作品も、少しセンチメンタルで私小説的・・・。
あまり小説は読まないのですが、堀辰雄の作品はたまにページをめくります。
代表作の「風立ちぬ」。
聖子ちゃんの「風立ちぬ・・・」や宮崎アニメの「風立ちぬ」など、堀辰雄をモチーフにした曲や映画があり、堀辰雄本人もびっくりしていると思います(笑)。
ここにも「夢の箱」。
野外図書館がありました。
小ぶりながらも秀逸なネーミング・・・昇進橋。
堀辰雄は、晩年・・・といっても49歳で亡くなるのですが・・・
人生の晩年には、日本の古典に回帰していきます・・・万葉集、伊勢物語、更科日記・・・
経営コンサルタントが、晩年、神かがったスピリチュアルや宗教に走るように・・・
名経営者が、晩年、東洋史や西洋史に走るように・・・
日本人作家は、晩年、古典に引き込まれていく人が多いように思います。
堀辰雄の書庫・・・小ぶりながら素敵な教養空間です。
「美しい村」の冒頭より
6月10日 K・・・村にて
ご無沙汰をいたしました。
今月の初めから僕は当地に滞在しております。
前から僕は、こんな初夏に、一度、この高原の村に来てみたいものだと言っていましたが、
やっと、今夏、その宿望がかなったわけです。
堀辰雄ファンの聖地・・・堀辰雄文学記念館。
旅と文学・・・やっぱり調和します・・・。