たまたまのきっかけで、数十年ぶりに法学部で民法の講義を受けました。
心裡留保、虚偽表示、錯誤など民法総則の最初のセッションで出てくる意思表示。三
十数年前に法学部法律学科法職課程に入学し、リーガルマインドを叩きこまれる最初の難関であったことを記憶しています。
今では民法典もひらがな表記され、当時とは随分敷居が低くなったように思います。
法科大学院の教授も兼ねておられる先生の板書には、「甲」や「乙」ではなく「Aさん」「Bさん」という表記。
法律の世界も文語体から口語体へと移行しつつあるのでしょうか?
講義を受けながら、当時のビンボー学生だったころが走馬灯のようにアタマの中を駆け巡り、思わず苦笑してしまいました。
ノートの取り方も当時のまま、「権利」の「権」を「木」へんに「又」と略字を使ったり、当時の教授から散々いじめられた「意義・要件・効果」のフレームワークが下地にあったりと三十年ぶりの法科生を満喫することができました。
当時、将来何になるかも決めていなかったモラトリアム学生。
たまたま教授から紹介のあった弁理士を目指そうかな!?ということで、工業所有権法(特許法・実用新案法・意匠法・商標法・条約等)をかじり始めた頃でもありました。
ゼミの教授の指示で、とりあえず受験した行政書士試験には何故か合格。
当時、自治大臣の小沢一郎さんの名入りの合格証書を手にすることができました。
そういえば、青春の舞台となった神田神保町。
毎日のように通い悪友と語り合った喫茶店「さぼうる」。
夜は居酒屋に変身し、チューハイや裏メニューのおでんを食べていたあの頃。
壁に書いた落書きは今でも残っているのでしようか?
クダを巻きながら閉店間際になると、なぜか必ずバナナが出てきました。女
将からビンボー学生に対する健康管理上の愛情と「早く帰れ!」という意思表示だったのでしょう。
周辺には、「ラドリオ」「キャンドル」「ミロンガ」「エリカ」といった老舗の喫茶店がありました。
老夫婦が静かに経営されていたキャンドル・・・今はももうないと思います。
昼ごはんは、金欠時は学食。
学食のおばちゃんは、なぜかキャベツを大盛りにしてくれました。
お金があると、今でも営業を続けている「とんかついもや」「てんぷらいもや」「天丼いもや」や半チャンラーメンで有名な「さぶちゃん」、カレーの「まんてん」、スパゲティ喫茶の「フラミンゴ」、ギョーザの「おけい」、大衆食堂の山田屋、多くの文豪が常連だったアカデミックな雰囲気を醸し出すビアホール「らんちょん」・・・。
先日、30年ぶりにカレーの「まんてん」を訪れ、通常バージョンのカレーを頼んだところ超大盛りサイズのカレーと小カップに入ったアイスコーヒーが・・・。
懐かしさとともに、胃がもたれそうになりつつ店を出ました。
年をとったものです(笑)。
また、当時の記憶のセットになっているのが古本の匂い。
一冊50円の文庫本から希少本まで、さまざまな本に触れることができたことは財産になっています。
時間つぶしともに、本の醸し出すアカデミックな匂いは、知的好奇心を十分に満たしてくれました。
法律の書籍は割引のあった丸沼書店。
気になる新刊があると何時間でも立ち読みを続けた書泉グランデや三省堂は、今でも大好きで、大口の顧客(ライフタイムバリュー)でもあります。
三省堂裏の喫煙スペースがなくなったことは、古本屋探索者にとって大きな痛手です(余談)。
民法の講義をうけながら、いろいろなことがアタマをよぎった90分間。
少し法律の勉強もしてみようかなと思った時間でした。