人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

モーツアルトの姉ナンネルの物語

2011年04月17日 18時26分46秒 | 日記
17日(日)。渋谷東急文化村のル・シネマでルネ・フェレ監督「ナンネル・モーツアルト 哀しみの旅路」を観てきました。ナンネルとは作曲家ウォルフガング・アマデウス・モーツアルトの5歳年上の姉のことです。映画のチラシのうたい文句によれば「偉大なる天才作曲家モーツアルト。その陰には、運命に翻弄された姉ナンネルがいた。等しく才能に恵まれながらも、時代の波に押し流された女性ナンネル。その秘められた音楽への情熱と儚い恋の物語」ということになります。

モーツアルト姉弟の父レオポルトはザルツブルクの宮廷に仕える副楽長で、優れた教育者でもありました。彼はナンネルにもクラビーア(ピアノの前身)を教えました。「ナンネルの楽譜帳」という愛称で知られるチェンパロ曲集はナンネルのためにレオポルトが編んだ練習曲集です。彼が娘に音楽家としての期待を賭けていた証拠ともいえるでしょう。映画でもありましたが、姉弟コンビの連弾は貴族たちの喝采を浴びる実力をもっていたようです。彼女は作曲もしたのでしょう。しかし、弟ウォルフガングが生まれ、レオポルトがその音楽上の天才を見抜くや否や、関心の先は弟に移ってしまうのでした。

モーツアルト姉弟の生きた18世紀後半は、まだ女性が作曲家として世間に認めれられる土壌はありませんでした。ナンネルの作曲した曲が残っていないため、映画ではマリー・ジャンヌ・セレロという現代の女性作曲家が、”ナンネルに成り代わって”それらしいメロディーの曲を作って流しています。バロック的であり、また、モーツアルト的でもあり、不思議な感覚に陥ります。ナンネルが1曲でも曲を残していてくれたらなぁと、叶うはずのない希望を抱いてしまいます。

王太子がナンネルに「あなたの作曲した曲を演奏してほしい。バイオリン?クラブサン?」と尋ね、ナンネルが「クラブサン」と答えて演奏するシーンがあります。これはフランス人の監督による映画だからこういう台詞になったのです。ピアノの前身であるこの楽器をフランス語で「クラブサン」、英語で「ハープシコード」、ドイツ語で「チェンバロ」といいます。言語が違うだけで同じ楽器を表しています。

ウォルフガングは1791年に35歳11ヶ月の短い生涯を終えましたが、姉のナンネルは33歳で結婚して1829年に78歳の長寿を全うしました。彼女の死後、やがてロマン派の時代がやってきてシューマンの妻クララに代表されるような女性作曲家=ピアニストが活躍するようになります。ナンネルは生まれて来るのが早すぎたのでしょうか。そうと言えるかもしれません。でも、後の時代に生まれてきたとしても、弟が同じように5歳年下で生まれてきたとしたら、同じ結果になっていたかもしれません。弟の存在があまりにも大きすぎたのです。音楽史上で唯一の天才を挙げなさいと言われれば、何の躊躇もなく”ウォルフガング・アマデウス・モーツアルト”の名前を挙げます。


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